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記事2002年9月3日 1857号 (9面) 
シックハウス症候群
文部科学省に協力者会議が発足し、検討へ
化学物質に反応し、頭痛、吐き気
新改築、備品納入後に発生 文部科学省

 建材などに含まれる微量化学物質に過敏に反応して頭痛、吐き気などの症状が表れる「シックハウス症候群」が教育現場でも問題視されており、特に新・改築校舎や、学校備品の新規導入後などに発生する例がある。
 文部科学省スポーツ青少年局は八月二日、学識経験者や建設、医療分野の専門家を含む委員十五人による「シックハウス症候群に関する調査研究協力者会議」の初会合を開き、(1)原因物質を含む建材や学校備品の把握(2)シックハウス症候群の発生状況・症状の両面から検討することを申し合わせた。座長には石川哲也・神戸大学発達科学部人間発達科学科教授を互選。検討の結果は、今年度の新規事業で進められる、学校のシックハウス症候群の実態調査研究の課題や方法などに反映させていく。
 同局では「診断基準が明確でないなど、何をシックハウス症候群と呼ぶかの厳密な定義付けがなされておらず、学校での発生状況も明らかではない。実態の把握は急務と考えている」(学校健康教育課)と話している。

学校環境衛生基準を改訂
4物質を検査の対象に

 学校保健法に基づいて学校が行う室内空気の定期検査については、対象・方法などを定めた「学校環境衛生基準」があり、文部科学省では今年二月五日に一部改訂、追って五月二十一日には同改訂の留意事項を、都道府県教育委員会、私学主管課などに通知した。
 従来は「ホルムアルデヒド及び揮発性有機化合物」が定期検査の対象だったが、シックハウス症候群の原因と疑われる化学物質について厚生労働省が室内空気中の濃度などを調査し、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンの四物質について室内環境基準として指針値を確定・公表した。
 その結果を受けて文部科学省が学校での実験を行い、「学校環境衛生基準」の検査対象として前記四物質を追加し、厚生労働省の指針値を目安に定期検査(学年ごとに一回)の実施を指導したもの。
 厚生労働省では九種類の化学物質を引き続き調べており、それを受けて文部科学省が学校で実験し、さらに検査対象に追加する可能性がある。
 「学校環境衛生基準」に基づく検査は、違反への罰則こそないものの、通知内容が行政指導であることから、四物質の室内濃度が指針値以下であることを実証することは、実質的に義務付けられている。
 今後、検査対象物質が続々追加された場合には、検査の負担が大きくなる心配がある。一方では、児童・生徒・学生の健康に留意する以上、検査は厳格に実施していく必要があるだろう。
 こうした動きをとらえて、建材や塗料の中には前記四物質を使わない新製品も発売されている。



住宅・建材業界でも対策に
室内空気対策研で検討

 シックハウス症候群については、住宅・建材業界がひと足先に対策を進めてきた。平成八年に当時の建設省、通産省、厚生省、林野庁による「健康住宅研究会」(今泉勝吉委員長=工学院大学名誉教授)が発足。十年に住宅生産者向け「設計・施工ガイドライン」、消費者向け「ユーザーズマニュアル」をまとめた。これらは現在も活用されている。
 その成果を引き継ぎ、財団法人建築環境省エネルギー機構、財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター(ともに東京都千代田区)の二団体を事務局とする「室内空気対策研究会」(今泉委員長)が、平成十二年度から三カ年計画でシックハウス原因物質の測定技術や汚染メカニズム、改修技術などを調査・検討しているところだ。

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