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記事2002年7月3日 号 (6面) 
私学教育花開かせた私立学校振興助成法
昭和五十年に制定された私立学校振興助成法が今年の七月三日で満二十七年を迎えた。この私立学校振興助成法の目的は、その第一条にあるとおり、(1)私立学校の教育条件の維持・向上(2)私立学校に在学する児童、生徒、学生、幼児に係る修学上の経済的負担の軽減(3)私立学校の経営の健全性を高めるというもの。

高校等の現状

たび重なる減額措置 今年で満27年迎える
特色教育等に大きな成果 なお残る 国公私立公費支出格差

 私立高校等の場合でいうと、同法に基づく私学助成は、初年度の昭和五十年には総額八十億円、生徒一人当たりの補助単価にすると、小・中学・高校生で五千円、幼稚園児で二千円とわずかだった。それが七年後の昭和五十七年度には八百五億円に達し、第一のピークを迎えた。その後、行政改革などのあおりを受けて昭和五十九年度には最大一〇%の減額措置を受け、八百億円を超していた補助額が七百十六億円にまで下がってしまう。  その後は再び私学関係者や文教関係議員らの努力により毎年毎年、二%前後の補助額の上積みが行われ、平成五年度には第二のピークとなる八百四十七億円となる。  しかし平成六年度には今度は与野党の逆転(政権交代)のあおりを受けて前年度比二五%減という厳しい減額措置を受け、八百四十七億円が一気に六百三十五億円にまで低下してしまう。再び振り出しに戻された私学関係者はその後、粘り強い努力の結果、平成十四年度には過去最高の九百七十七億五千万円を獲得した。  こうした厳しい道のりを経験しながらも、私学振興助成法に基づく私学助成は、全国の私立学校で様々な特色ある教育を花開かせる原動力となり、また私立中高一貫教育人気を生み出し、さらに保護者の教育費負担軽減に一定の成果を果たした。しかし私立高校の場合、公私立学校間で父母の負担する教育費には約六倍もの開きがあり、私学教育にとって大きな“足かせ”となっている。最近では長引く不況などが、こうした“足かせ”とともに私学人気を減速させており、その一方で採算性を度外視した公立学校の巨額を投じた校舎改築や特色づくりなどが積極的に行われている。公費投入額が大きく違うという条件の中で私立学校の苦しい“闘い”が続いている。

私大等の現状

3000億円超え最高額補助率は法以前水準
国私大の納付金格差縮小特別補助の比率上昇続く

  一方、大学等に関しては、高校等が昭和四十五年度から地方交付税措置によって各都道府県の私学助成に対する財政措置が設けられていたのと時を同じくして、昭和四十五年度から補助措置がスタートした。初年度の額は百三十二億円だった。その後、昭和五十年に私立学校振興助成法が制定され、同年度には補助額が一千七億円と初めて一千億円台に到達、その後は高校等と同様、何度かの減額措置を受けたものの、高等教育の約八割を占め、我が国の発展には欠かせない存在ということなどから、最近では補助額も順調に伸び、平成十四年度には三千百九十七億五千万円に達した。もちろん過去最高額ではあるが、私立学校振興助成法が目標とする経常経費の二分の一助成にはなお遠く、補助率は一〇%程度という状況だ。過去三〇%近くまで補助率が上昇したこともあったが、今では、私立学校振興助成法が制定される以前の補助率水準にとどまっており、この法律が制定された趣旨を再確認して、一層の充実が求められている。私立の大学、短大、高専を合わせて約千校への経常費補助額三千億円強は、東京大学一校の予算額とほぼ同額と言われている。国公立大学の独立行政法人(国立大学法人)化が今後、私学助成にどんな影響を与えるのか分からないが、世界のトップクラスの大学づくりでは国公私立を通じた支援が打ち出されており、国立大学偏重は少し緩和されることに期待が集まっている。  私立大学等経常費補助金には、学生数や教員数などを基礎に配分される一般補助と社会的要請の強い特色ある教育研究の実施状況に応じて配分される特別補助があり、最近では一般補助は据え置き・減額、特別補助が増額といった傾向で、この傾向には今後ますます拍車がかかりそうだ。  学納金に関しては、私学振興助成法制定時のような大幅な引き上げはなくなり、しかも国立大学が受益者負担の原則から、学費の引き上げを行ってきたため、高校のように約六倍もの格差はなく、二倍弱といった状況だ。昭和五十一年度はその格差が三・一倍だったことを考えると、私学助成は学生らの負担軽減に大きく貢献した。
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