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全私学新聞

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記事2002年7月13日 号 (4面) 
近代私学発祥の地、神奈川県私学の魅力
“見て、聞いて、感じて、納得”私学展を7月20日

堀井基章氏


清水秀樹氏

 「見て、聞いて、感じて、納得!!」神奈川の全私学(中・高)百四十校が横浜みなとみらいに集合する。  神奈川県私立中学高等学校協会(堀井基章理事長=堀井学園理事長)は七月二十日(海の日)、横浜市西区の「横浜みなとみらい・パシフィコ横浜」の展示ホールで「2002神奈川全私学(中・高)展」(後援=神奈川県、神奈川県教育委員会、および神奈川県私学父母連合会)を開催する。  今回で三回目となる全私学(中・高)展は「二十一世紀をリードする伝統と創意」と題して、神奈川県のすべての中学・高校百四十校が一堂に会し、神奈川私学の魅力をアピールする。入場者数は年々増加し、昨年六月に実施された全私学展には県内外から一万五千人の児童・生徒・保護者らが詰め掛け、私学の人気の高さがうかがわれた。  当日は八十一のブースに分かれて各校が特色を生かした展示を設け、常時二―三人の担当教職員や現役の生徒が学校案内などをもとに授業内容(カリキュラム)、校風、クラブ活動、学校行事、および入学試験などについて丁寧に説明を行い、保護者らの質問に応じる。  高校においては平成十五年度から文部科学省の学習指導要領が改訂されるが、それに対する各私学の独自性ある対応の仕方が注目される。中学においてもカリキュラムや人間教育など、公立とどう違うのかも見所だ。  神奈川全私学展は過去二回と同様、今回も各校に在籍している現役の生徒も催しの運営に参加し、会場内での受け付け、来場者の誘導や放送案内を担当する。ステージでは十六校が吹奏楽演奏、ダンス、新体操などを行い、日ごろの練習の成果を披露する。また、会場では神奈川県の全私立中学・高校が紹介されている「神奈川県全私学中・高学校案内」が無料で配布される。




国民教育原点に 情熱と教育愛で特色発揮
神奈川県私立中学高等学校協会理事長 堀井学園理事長堀井基章

 皆さまには、本日はようこそ「2002神奈川全私学(中・高)展」においでくださいまして、心から歓迎申し上げます。  今回で三回目となります「神奈川全私学(中・高)展」は、おかげさまをもちまして、大好評を得ております。  神奈川は近代私学の発祥の地といわれております。近代学校教育制度が明治初頭に始まり、国家主導の教育制度が確立されたのに対し、私学は一貫して庶民教育、国民教育を原点とし、各校独自の教育理念を実現したいという情熱と教育愛を持って、特色ある教育を展開してまいりました。  そして、私学はお互いに切磋琢磨し、人間教育重視の個性尊重の教育を積み上げ、豊かな人間性をはぐくみ、県民の期待に応えるように努力してまいりました。平成九年に神奈川県県民部が「神奈川の高校についての意識調査」を行いました。これによりますと、県立高校と私立高校とを比較した場合、進学、就職、授業内容、生徒指導などすべての点で、私学が優れていることが明らかになりました。このことは、私学が個性を重視・尊重し、知育・徳育・体育のバランスの取れた教育を行っていることに対して、県民が評価した証左といえましょう。  本日おこしいただいた皆さまには、ぜひこの私学展を有効に活用して神奈川私学の伝統と魅力を感じとっていただいて、進学の一助にしていただければ幸いです。




知と人格教育を重視
きめ細かい指導で個性伸ばす

神奈川県私立中学高等学校協会研究部生徒指導研究委員長
向上高等学校・自修館中等教育学校長清水秀樹

 本来、教育は私立学校に発祥しています。そして、私学教育の独創的な歩みは過去に例がないほど、「教育の自由」を背景に「建学の考え」を明確にして、今や公教育の主流になっています。独自の教育に対する理念と信念は不変であり、その教育方針は時代時代を的確に読み、社会としっかり向き合っています。  また、何といっても時代のニーズに応えながら明日を生きる子どもの教育に努力を重ねてきた歴史と、ユニークな校風をもっているのが特徴的であります。  現在のような社会環境や世界の情勢から鑑みて、限りなく知的な能力を身につけ、高度な生活実感を備えることが、若者の人生のために大事なことであると信じて疑いません。特に私学の生徒指導面は“一人ひとりを生かし”、その個性を大事にする「きめ細かな生徒指導体制」を取っています。そしてまた、この複雑で変化の激しい時代を、新たな価値観をもって生きる子どもの教育に対して真剣に取り組んでいます。  一つの例ですが、平成十一年から取り組んできている、ハイテク犯罪防止に県警のハイテク対策センターと中高協会の研究部に属する生徒指導研究委員会が協力して、ハイテク社会に生きる子どもを犯罪から守り、加害者にもならないモラルを育成するために実施した研修会は全国初の試みでした。  また、若者の行動を視察するために横浜駅を中心に繁華街を、犯罪防止活動に従事している日本ガーディアン・エンジェルスとともに街頭補導を実施しています。  「学校完全週五日制問題」も私学はそれぞれの取り組み方をして、単に学校を休みにしたりせず、新カリキュラムに位置付けられた総合学習的教育活動に特徴を出しています。従来の部活動はもとより、進学指導体制の充実を図り、有効に土曜日を使い、ある学校は自由研究に充てて自主性を育もうとしています。  私学に学ぶ多くの生徒たちの中には短期・長期留学をし、ホーム・ステイ等交換留学などを通して、異文化を肌で感じながら国際理解・世界平和教育を受けています。そして、何がどう国際化なのかを学び、限りなくしっかりと日本人を自覚することが国際化への一歩であることを学んでいます。これに海外へ修学旅行や語学研修旅行を実施している学校を加えると、相当な私立学校の相当多くの生徒たちが国際感覚を備えているという調査もあります。  私学ではボランティア活動が盛んで、これを通じて他人に対する思いやりの気持ちを育て、心の教育を重視していることも社会から評価されています。  大事なことは、この時代の教育は教育のコンセプトをしっかりと打ち出し、新世紀のほとんどを生きる若者に何を教育の結果として求めているのかを明確にすべきではないかと考えます。私学の生徒指導は子どもを育てる夢をもっています。  日本という自国を説き、そして礼儀作法をもった日本人を教えます。古くは「生活指導」といった時代から、私学教育の柱の一つである「人間教育」をするということが私立学校の特徴であります。




国際化、多様化に躍進
公私立高校に対する県民の意識調査 神奈川県県民部

創造性を培い、知徳体兼備の教育 
進学、生徒指導すべて「私学が良い」
学費負担軽減が強く望まれる

 近代私学の発祥の地、神奈川県の私学は明治、大正、昭和の戦前にそれぞれ十八、十一、二十二校が創立され、県立六十五校に対して、私学はすでに七十二校が存在し、次代を担う子供たちの教育に積極的に当たっており、公教育の大きな一翼を果たしていた。  平成十三年度学校基本調査速報によれば、同県の高校二百六十一校には二十二万五百六人の生徒が学んでいる。このうち七十六校の私立高校に七万五千六百五十一人の生徒が学んでおり、同県の高校生の三八・六%を私立高校生が占めている。また私立中学六十二校には二万六千二百八十六人の生徒が通っている。  “安い”という公立高校の学費は土地、建物、設備などの支出を除く「消費的支出」(このほとんどが人件費)だけでも、公立の生徒一人当たりについて、百九万二千円の各公費支出(税金)によって支えられている(文部科学省平成十一年度調査による全国平均)。  一方で、同県の平成十四年度私学への公費支出(税金)による経常費補助の生徒一人当たりの単価は高校が二十七万三千百七十一円、中学校が二十二万二千三百二十九円で両者とも全国で最低のランクとなっている。ちなみに十二年度経常費補助の生徒一人当たり単価の全国平均は、高校が三十万千八百二十一円、中学が二十五万七千二百六十九円となっている。  公費支出が、税金(私学に学ぶ生徒の保護者が負担している税金も含まれる)で賄われている点も考えると、納税者である保護者、県民も教育費負担と受益の公私間格差に不平等感を抱くはずだ。教育費負担の公私間格差が縮まらず、私学に学ぶ生徒の保護者への学費軽減が増額されないままでいけば、私学に行きたくても行けないという状況が続くことになる。  神奈川県県民部県民課が平成九年七月に「神奈川の高校についての意識調査―県立高校を中心として―」を発表した。  このうち、県立高校と私立高校との比較の点では、進学、就職、授業内容、生徒指導、学校の特色・個性、学校行事・部活動、施設・設備、学校の雰囲気、教員の九項目すべての点で「私立の方が良い」という結果が出た。  「県立高校と私立高校の良さの比較」では、「私立の方が良い」と答えた中で最も多かったのは、「施設や設備に関して」で六五・一%にのぼった。続いて「学校の特色や個性に関して」(五八・三%)、「大学などへの進学に関して」(四二・九%)となっている。  一方、「県立の方が良い」と答えた中では、最も多かったのは「就職に関して」(一三・六%)だが、これは「私立の方が良い」と答えた中で最も低い割合を示した「就職に関して」(一四・五%)より低い割合だった。「県立の方が良い」と答えた中では、ほかに「学校の雰囲気に関して」(一一・九%)、「学校行事・部活動に関して」(七・七%)となった。  「県立高校または私立高校を選んだ理由」については、私立高校を選んだ理由では「学校の特色や個性に魅力を感じるから」が五六・九%で最も多く、「きめ細かな生徒指導を行っているから」(三一・二%)、「学習指導が充実しているから」(二九・二%)と続いている。  県立高校を選んだ理由で一番多かったのは「学費が安いから」(八七・八%)だった。  保護者の経済状態に今ほど左右されずに、公立でも私立でも、本人の努力と希望によって学校を選択し選抜をへて行きたい学校に自由に行ける環境整備が一日でも早く望まれる。




県民のねがいは私学に
神奈川県下の公私立学校生徒の生活調査
私学の生徒指導充実が明確に 非行・不登校など少ない

建学の精神のもとに豊かな人間性
青少年の問題行動に焦点
関係者を招き活発に研修

 神奈川県の資料(平成十二年度)によると、公立と私立の中学・高校をいじめ・暴力・不登校の発生件数、発生学校数の点から比べると、いずれにおいても私立の方が少ないことが証明され、私学の生徒指導の充実ぶりが明らかになった。

 神奈川県私立中学高等学校協会は従来、研究部の活動には力を注いでいる。研究部は教頭研修会、十の教科専門委員会、および五つの特別研究委員会からなっている。  そのうち、特別研究委員会の一つである「生徒指導研究委員会」では、青少年の問題行動の根源はどこにあるのかに焦点を当て、例年、横浜家庭裁判所、神奈川県警察本部、神奈川県私学宗教課など関係諸機関と連携を取りながら、横浜駅周辺繁華街での街頭補導(日本ガーディアン・エンジェルスなどが協力)をはじめさまざまな活動を実施している。  十二年度は「ハイテク社会における生徒指導・教育相談―インターネットの活用と留意点―」「被害者・加害者にならないための情報リテラシー」をテーマに、メディア社会(コンピュータ社会)における影の部分にスポットを当て、情報と自己責任という問題について考えた。  また、少年の凶悪事件が多発する中、「人間教育の根底がどこにあるのか」を問うべき時代であり、教師と生徒、親と子という関係を見直し、「共育(共に育む)」を考える必要があるとの認識の下に、韓国・ソウルへの教育視察を行った。  十三年度は、神奈川県警察本部生活安全部少年課の少年相談員と大学教授を招き、それぞれ「最近の少年相談室から」「時代を読む生徒指導」をテーマに研修を積んだ。

【公私立高校の中途退学状況】

 中途退学とは「高校において、学校教育法施行規則第六十二条(校長による休学、退学の許可)により、校長の許可を受けて退学すること」。  全日制公立高校では三千百八十八人が退学し、十二年度当初の在籍生徒数に対する中途退学者数の割合(=退学率)は二・二一%。定時制は千百八十七人が中途退学し、退学率は二〇・八三%だった。これに対して、全日制私立高校では中途退学者は千四百五十五人、退学率は一・八八%となっている。

【公私立高校の長期欠席状況】

 長期欠席とは「高校において、出席すべき日数のうち、五十日以上にわたり欠席または休学すること」をいう。  全日制公立高校では二千九百二十七人が長期欠席し、十二年度当初の在籍生徒数に対する長期欠席者の割合は二・〇三%。公立定時制高校では、千四百二十八人が長期欠席し、その割合は二五・〇六%だった。いずれも前年度比で人数、割合においても増加しているが、定時制では五十七人増加、四・一五%アップした。一方、全日制私立高校の長期欠席者は六百二十六人、十二年度当初の在籍生徒数に対する長期欠席者数の割合は〇・八一%となった。前年度と比べると九・五%減。

【公私立中学の不登校状況】

 不登校とは「中学校において、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会要因・背景により、登校しない、あるいはしたくてもできない状況で(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)、三十日以上欠席すること」をいう。  公立中学校では不登校生徒は六千七百七十六人で、十二年度の在籍生徒数に対する不登校生徒数の割合は三・二四%だったのに対して、私立中学校では百七十五人が不登校生徒で、在籍生徒数に対する不登校生徒数の割合はわずか〇・六六%だった。 楽しいスポーツ大会

【公私立中学のいじめの発生状況】

 いじめとは「自分より弱いものに対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの」をいう。  公立高校では、いじめ発生件数が百六十二件、発生学校数が七十五校となった。公立高校全体に対する発生学校数の割合は四〇・五%となり、前年度と比べると四・一ポイントの減。  私立高校では発生件数九十件、発生学校数二十二校。私立高校全体に対する発生学校数の割合は二七・五%で、前年度比で七・五ポイントの大幅な減少となった。  暴力行為とは「自校の児童・生徒が起こした暴力行為を指し、対教師暴力、生徒間暴力(何らかの人間関係がある児童・生徒同士の暴力行為に限る)、対人暴力(対教師暴力、生徒間暴力を除く)、学校の施設・設備等の器物損壊を含む」ことをいう。

【公私立学校の暴力行為の発生状況】

 公立高校では暴力行為は学校内外含めて七百九十九件に及んだ。発生学校数では学校内が百四十六校、学校外が六十校。これを公立高校全体に対する発生学校の割合で見ると、それぞれ七八・九%、三二・四%になった。  私立高校では学校内外含めて暴力行為は百五十五件、また発生学校数では学校内が三十校、学校外が十四校で、私立高校全体に対する発生学校数の割合はそれぞれ三七・五%、一七・五%となっている。生徒指導の成果が実っている。
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