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記事2002年7月13日 号 (10面) 
文理融合の教育・研究へ
埼玉工業大学
人間社会学部を新設
情報教育の充実を図る


 学校法人智香寺学園・埼玉工業大学(松川文豪理事長、秋山守学長、埼玉県大里郡岡部町)は今年四月、「人間社会学部」と「工学部情報工学科」を開設した。「人間社会学部」は同大学初の文系学部で新築の学部棟も完成し、五月二十九日に披露式典が盛大に行われた。本紙では同大学を訪ね、新学部開設の狙いやカリキュラムの特徴、全学的な情報教育の充実について関係者に話を聞いた。  

  「人間社会学部」には「心理学科」「情報社会学科」の二学科が設置されている。永野三郎・人間社会学部長によると、「日本は技術で物の豊かさを得た。今後も科学技術の重要性は変わらないが、心の豊かさも求めていかなければらない」というのが“文理融合”の根底にある目標だ。そして永野学部長は、両学科に共通する教育課題として、今後の社会人に必要な素養である(1)情報化への対応(2)国際化への対応(3)豊かな心・人間性の三点を挙げる。新学部のカリキュラムにも、この三点が反映された。  情報化への対応では、両学科とも「メディアリテラシー」など三科目を一年次必修とした。国際化への対応では、英会話の到達度に応じた少人数指導を行う。豊かな心・人間性については、仏教理念に基づく建学の精神に沿い、宗教・倫理を含め幅広い教養を身につけさせる。卒業要件の百二十四単位のうち「人間理解」「国際社会理解」「科学技術理解」など五十単位以上の教養科目の修得を義務付け、リベラルアーツを重視した。  「情報社会学科」は(1)英語(2)人文科学(3)社会科学(4)情報という四つの学問分野からなり、このうち英語と情報については教養科目の上にそれぞれの専門科目を用意。人文科学には哲学、倫理学、宗教学、心理学を含み、社会科学ではビジネスに役立つ法学、経済学、経営学を学ぶ。いずれも一・二年次は幅広く、三・四年次は専門を絞り、深く学べる。

全員に軽量薄型ノートパソコン提供  

 「情報社会学科」では四年間を通じて少人数のゼミが必修。一・二年次は四分野のゼミをひと通り経験し、自分に向く分野を知る。そして三・四年次には同じゼミで二年間、専門分野を深く学ぶ。「初級システムアドミニストレーター、基本情報技術者などの国家資格は従来、理系の資格とされた。しかし文系学生も知識や情報を加工し、付加価値の高い情報を創出し発信していく役割を担うことができるので、そのような人材を育てていきたい」(永野学部長)。  「心理学科」では人の心の働きを科学的にとらえる方法を追究する。(1)基礎心理学(2)臨床心理学の二分野の科目をバランスよく配置し、基礎から専門へと進む。永野学部長によれば“人間にとってやさしいロボット”“使いやすいインターフェース”など工学と人間科学の境界領域を、二学部共同で研究することも考えられるという。さらに、臨床心理士の受験資格取得に必要な大学院心理学研究科の開設も展望している。  施設・機器については特に情報教育の充実が図られた。新入学生には全員に軽量薄型のノートパソコンを提供。新築の人間社会学部棟には全館に情報コンセントが設けられ、パソコン利用環境が整っている。大教室には大画面スクリーンや高輝度プロジェクター、三つのPC/LL教室にはそれぞれパソコン六十台、フルカラーレーザープリンターなどを整備。演習室にもDVD入力対応のプラズマディスプレイや電動スクリーンなどがあり、デジタル教材を作れるコンテンツ作成室も設けられた。  情報教育を支えるサービス体制も学内で独自に構築、新学部開設を機に事務部門にも「教育研究協力部情報技術課」を新設した。設備や人材育成の面では株式会社東和エンジニアリング(大竹親幸社長、東京都千代田区)の協力を得て、情報技術課職員が設備の維持や、教員、学生双方からの情報機器に関する問い合わせ、相談に応じている。  宮川芳伸・情報技術課長は「パソコンの操作方法や故障の問い合わせへの対応だけでなく、それをきっかけに学生生活全般の相談にも乗っていけるよう、学外技術者の派遣に頼らず職員が直接担当することになった」と話す。  キャンパスのある埼玉県北部は、都内への通学圏。しかし埼玉工業大学人間社会学部の開設で地元での進学先が増えた。スクールバスの運行で埼玉県西部や群馬県南部からの通学にも適しており、受験者増に期待がかかっている。文系学部設置で女子学生が増えた点も特徴。男子の多い工業大学のイメージも変わっていきそうだ。
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