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記事2002年6月3日 号 (3面) 
変革促す提案次々と
中央教育審議会の審議動向
3専門大学院からヒアリング
大学院での高度専門職業人養成
中央教育審議会大学分科会の大学院部会は五月二十八日、東京・霞が関の文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)で第十回部会を開き、中央大学大学院国際会計研究科、一橋大学大学院国際企業戦略研究科、九州大学大学院医学系専門部の三つの専門大学院からヒアリングを行った。

【大学院部会】

 中教審は四月十八日に開いた総会で中間報告「大学院における高度専門職業人養成について」を公表。高度で専門的な職業能力を有する人材の養成という役割を一層促進していくため、現行の専門大学院を包摂し、さらに発展させた新しい形態の大学院「専門職大学院」の創設を提言した。この日の部会では、既に専門大学院としての教育を展開している三つの大学院の研究科長らがそれぞれこの中間報告に対する意見を述べた。
 中大大学院国際会計研究科は今年四月から会計・ファイナンスに特化した大学院を開設し、多くの社会人を受け入れたが、社会人学生間の専門知識の格差に直面している、と実情を報告。日本企業が現場で理論的背景をなおざりにし、極端な経験主義に陥っていることがその不振の原因でもあると指摘した。また、いま求められている専門職業人教育とは、法科大学院のように資格取得以前の段階で終わるのではなく、むしろ資格取得後、現実の業務に当たっている資格者に対する再教育の方だと強調した。
 一橋大大学院国際企業戦略研究科はビジネススクールとしての立場から、研究指導教員を必置としない、研究指導を必須としない、という中間報告の構想には反対を表明。世界の第一線に伍した水準の高い教育研究を展開できなくなることを理由に挙げた。
 九大大学院医学系研究部医療経営・管理学専攻は公衆衛生大学院として、医系・非医系の幅広い分野の背景を持つ、社会人を含めた学生が入学しているとし、専門職大学院では専攻分野の特性に応じ、多様な教育の形態が可能となるよう配慮を求めた。

【基本問題部会】

教育基本法を討議
現行法を改正、5日にも提示

 中央教育審議会の基本問題部会(部会長=鳥居泰彦・日本私立学校振興・共済事業団理事長)は、五月二十三日、東京・市ヶ谷の私学会館で第八回会合を開き、教育基本法の見直しについて討議した。特に今回は学校教育、義務教育を中心に討議したが、委員からは「(教育基本法に関しては)根っこから見直すべきだ」といった意見が出される一方、現行法をベースに新たに付加すべき事項を検討すべきだとの意見も出され、憲法とリンクする現行法を廃案とし新法を制定することによる政治的混乱を懸念する意見も聞かれた。
 このほか現行法とは別に現行法に付加すべき点は新法をつくり、盛り込めばいいとの意見も聞かれた。法案の内容は今後、煮詰めることになるが、文部科学省は、新法の制定ではなく現行法の改正を構想しているようだ。
 今後は、五月二十八日の第二十回総会で教育基本法の審議を行い、そのうえで六月五日の次回基本問題部会に新しい教育基本法の柱立てが提示される予定。柱立てに関しては、鳥居会長、木村孟副会長、文部科学省(中教審事務局)等で協議し、固める方針で、六月十四日の第十回基本問題部会でもその柱立てについて討議する予定。
 教育基本法に関する内容面での意見としては、「国際社会という視点、公共心をはぐくむ、教育に自ら参画するということが必要」「現行法では学習者の視点、権利が強調されているが、今後は教える側にきちんと自覚させることが大事。また型を教える、暗記させることも大事」「新しい教育基本法は理念法で、十二、三条にとどめるべきだ」「生徒はルールを守るべきだと書くべきだ」などの意見が聞かれた。

【スポーツ・青少年分科会】

全国キャンペーン展開 子どもの体力向上策
中間報告案を審議

 中央教育審議会のスポーツ・青少年分科会は五月十六日、東京・霞が関の東海大学校友会館で第十六回会合を開き、中間報告案「子どもの体力向上のための総合的な方策」について審議を行った。中間報告案では子どもの体力を向上させるために「外遊びとスポーツのすすめ体を動かそう全国キャンペーン(仮称)」の展開などさまざまな方策が盛り込まれているが、委員からは「キャンペーンを行うだけでは不十分」だとする意見などが出された。
 中間報告案では、子どもの体力低下の原因として、子どもが積極的に体を動かさなくなったこと、子どもを取り巻く環境の変化、子どもの生活習慣の乱れなどが挙げられた。体力向上策の一つとして「体を動かそう全国キャンペーン」の実施が打ち出されているが、名称をもっと分かりやすいものに変えるべきだとする意見や、キャンペーンだけでなく、スポーツの特性、素晴らしさをアピールできる事業を行うべきだとの指摘があった。
 また、中間報告案では地域において子どもが体を動かすための環境整備を行うべきだとして、「スポーツたまり場」などによる機会、場、仲間の確保が必要だとしており、具体的事例として、住民が主体となって運営する子どもの冒険遊び場(東京都世田谷区)、個人でサッカーに参加できる広場(千代田区小川広場)を紹介している。委員からはこうした先進的な取り組みを全国から募集し、事例集をつくるべきだとの提案も出た。
 このほか、家で引きこもりがちな子どもに対し、スポーツや外遊びをさせるための誘導策が必要だとする意見、まずスポーツを観戦する習慣をつけ、スポーツへの接点を広げることが重要だとする意見などが出された。
 会合ではこのほか、平成十四年度における社会教育関係団体に対する補助についても審議。ボーイスカウト日本連盟に七千七百三十五万円、世界青少年交流協会に三千八百十万円などの補助を行うことを了承した。
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