こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2002年6月3日号二ュース >> VIEW

記事2002年6月3日 号 (8面) 
ユニーク教育 (107) ―― 松蔭中学校・高等学校
愛と自由を教育の精神に
自ら考え判断して行動する力を
共に生きるテーマに総合学習


 松蔭中学校・高等学校(川崎紘平校長、兵庫県神戸市灘区)は平成十四年度から新カリキュラムをスタートさせた。新カリキュラムは「徹底した少人数制クラス」「六年間完全中高一貫教育」「総合学習と課外授業」の三つを大きな柱としている。新しい学習指導要領に対応したもので、ゆとりを持ちながら、生徒の長所を伸ばしていくために、新カリキュラムはさまざまな工夫が施されている。
 同校は明治二十五年、神戸・北野に誕生したキリスト教主義の学校で、宗教団体の英国聖公会によって松蔭女学校として設立された。同校に一貫して流れる教育の精神はキリスト教に基づく「愛と自由」の精神だ。
 「自由」という言葉には生徒の自主的な判断と、自立した姿勢を願う気持ちが込められている。生徒は今ここで何ができるのか、何をするべきなのかを自分で考え、自分で判断し、自分で行動する力を養い、豊かな個性を伸ばしていこうという狙いがある。
 この「自分で考え、自分で判断し、自分で行動する力を養おう」という精神は、同校が取り組んでいる総合学習にも表れている。
 中学の総合学習の共通テーマは“共に生きる”。このテーマの下に「地域を考える」(一年)、「いのちを考える」(二年)、「平和を考える」(三年)など、深く学ぶ。高校では総合学習の時間を生かして、社会と自分の将来について考え、「進路について」(一年)、「修学旅行について」(二年)、「自由研究」(三年)などの課題について学習する。
 例えば中学一年生の総合学習「地域を考える」では、「はじめて制服に袖を通し神戸の町に通ってくる松蔭生に、この地域の魅力を再発見してもらおう」と考えた。そこで、「最終的になんらかの第三者にとって有効なサービスを提供することまでも視野に入れた」総合学習の構想を中心に立てた。
 総合学習は毎週、木曜日の六時限目に行われている。五月には自分のテーマを探し、グループ分けを行いテーマを設定し、六月になると各グループでミーティングを行い、どこで何をどのように調べるかを決める。そして、十月をめどにガイドブックを作りあげる。
 事例としては考えられたテーマの一つは「松蔭版『王子動物園ガイドブック』を作ろう」だった。このガイドブックを作るために、(1)いろいろな動物のいろいろな特色(2)動物の飼育・管理(3)パンダ(4)動物園で働く人・動物園に来る人(5)売店・遊園地などの施設・設備(6)交通手段(車・電車)(7)駐車場、動物園の周囲の動物、商店街、周囲への影響の各事項について、生徒たちはこまめに調べる。一つの事項について何十にも及ぶ事柄を実際に現場に出掛けていって調査・観察し、また図書館の資料やコンピュータのインターネットを利用したりして、調べ尽くす作業が続いている。
 そのほか、「地域について考える」の下では、「兵庫の匠キャラバン隊・体験学習」「松蔭版『灘百選』を作ろう」が考えられている。
 同校は今年、創立百十周年を迎える。積み重ねてきた歴史の重みを認識する一方で、カリキュラムの再構築をはじめとするさまざまな試みで、“古くて新しい松蔭”への第一歩を踏み出している。


記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞