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記事2002年6月3日 号 (8面) 
教育費負担軽減に役立つ奨学金
私学でも学校独自の奨学金
家計急変時の支援充実 うまく活用し最悪事態回避も
国や自治体等
 長引く経済不況や相次ぐ企業倒産は教育の世界にも暗い影を落としている。伝統や校風、ユニークな授業や進学実績、スポーツ指導に対する熱心さなどを考え私立学校に進学したいが、公立の数倍の教育費負担を考えたら二の足を踏んでしまう、あるいは保護者の失業で中途で私立学校を退学せざるを得ないという生徒が増えているのだ。そうした状況の中で力強い存在といえるのが「奨学金」だ。奨学金にもさまざまな種類がある。奨学金の現況などを調べてみた。(編集部)

 「奨学金」といっても種類は実に多い。学校法人や、学校法人が母体となって設立した育英奨学財団、都道府県をはじめとする地方自治体が、県民や市民などを対象に設けているもの、特殊法人である国民生活金融公庫が行っている「国の教育ローン」、新聞社などが行っている「奨学生」制度(新聞配達で奨学金が受けられる等)、企業が社会貢献の一環として設けているもの、ロータリークラブなどが運営しているもの、国の特殊法人である日本育英会が行っているもの、さらには定時制の高校生を対象に設けられている国の修学奨励補助金、各学校の育英奨学事業を支援する都道府県の補助事業、都道府県の支援事業を支援する国の補助金など実にさまざまだ。ここ数年、失業率も高い水準で推移しているため突然のリストラ等、緊急時の行政の支援策も整備されてきた。そうしたケースに適用される民間企業の保険やそうした生徒への支援で生じた学校側の損失を補填する保険なども登場。何が利用できるのか、在学する学校、在住する自治体等に確認することが大事だ。利用の仕方では最悪の事態も回避できる。
 平成十四年度の政府予算案編成でリーダーシップを発揮した政府の「経済財政諮問会議」は、意欲のある人に対する奨学制度を拡充する方針だ。日本育英会だけをみても、平成十四年度は十三年度と比べて約五万人増の約八十万人の学生・生徒に四百三十四億円増の五千百六十六億円の奨学金が貸与される予定。家計急変の場合では高校から大学院等までの段階で約一万人に奨学金(無利子)が用意される予定。

85%で独自の制度 優秀な技能、成績、就学困難者ら支援
私立高校

 一方、私立学校でもさまざまな育英奨学事業を実施している。
 日本私立中学高等学校連合会(堀越克明会長=堀越高校長)が昨年明らかにした実態調査結果によると、平成十二年五月一日現在、学校独自の奨学金・特待生制度を設けている私立高校は、全国千三百十二校中、千百十七校(八五・一%)にも及び、私立中学でも実施率は六二・五%を数える状況だ。
 私立高校の場合、奨学金・特待制度で最も多い対象者は「一定の技能が優れている」生徒で全体の六一・七%を占めている。
 次いでは成績優秀者を対象としたものが多く、さらにその次は「経済上の理由で就学困難」とのケースとなっていた。
 大学進学の場合も、学校によって各種の奨学制度が用意されている。
 例えば慶應義塾大学では「独立自尊の精神に基づいた奨学融資制度」が設けられている。この利子給付奨学金制度付学費ローンは、家族の所得や保証に関係なく希望すれば金融機関から融資を受けられる制度で、大学が保証する形となる。
 そのほか各大学や高校等にはさまざまな奨学金が用意されている。おおむね大別すると、各学校が勉学やスポーツなどの面で優秀な人材を他校に先駆けて受け入れたいとの思いが特待生奨学金などの形に表れており、また保護者の失業や死亡などで経済的に困窮した生徒や学生を救いたいとの気持ちが家計急変の場合の奨学金に表れている。
 経済情勢の先行きはなお不透明で、教育費の国公私間格差是正はすぐには解決されない課題だ。こうした状況の中で、奨学金の有効活用は重要な課題といえるし、学校側にとっても学校の姿勢をPRする一つの有効な手段といえそうだ。
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