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記事2002年6月23日 号 (3面) 
中央教育審議会の審議動向
教育基本法見直しへ意見集約
【大学院部会】

高度専門職業人を養成
基本的性格、専攻分野討議

 中央教育審議会大学分科会の大学院部会は六月十四日、東京・霞が関の文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)で第十一回部会を開き、大学院における高度専門職業人養成について、中間報告で積み残された事項への対応の方向性を討議した。中間報告で設置が提言された、専門職大学院(仮称)の名称については、必ずしもこの名称にこだわらず、既存の専門大学院も包括した新しい形態の大学院としての名称を検討することとなった。
 専門職大学院の基本的な性格や専攻分野をめぐってはさまざまな意見が出た。「高度専門職業人とは何か、その線引きが難しい。プロフェッショナルスクールをつくるのなら大賛成。国家資格と関係する分野から始めていけばよい」「特別な実務分野、対象となるクライアントがはっきりしている、国家資格と関係する、国際的な共通の基準があるこのうちのいずれか二つが問われるのが高度職業人養成の分野ではないか」など。「高度専門職業人養成がいかなる領域を指すのか、説明不足。専門職大学院は当面は国家資格など職業資格と関連した分野に限定すべきである」とする、日本私立大学団体連合会がまとめた中間報告に対する意見も紹介された。現在、設置が構想されている高度専門職業人養成に特化した大学院の分野としては、行政(公共政策)、知的財産、経営、法律、技術経営の各分野が挙げられているが、これに医療、外国語も加えるべきだとの意見が出て、この二つについても例示に加える方向となった。
 修了要件については中間報告では「各専攻分野ごとに必要となる授業科目の履修単位の修得のみを必須とし、研究指導および論文・研究成果の審査は必須の修了要件とはしない」とされているが、研究指導等を修了要件として加えることもできるようにすべきであるとする意見が出た。
 第三者評価で適格認定されなかった大学院、特にその修了が国家試験の受験資格とつながる専門職大学院に対する対応については、法科大学院に関する議論に引きずられず、よく検討すべきだとの意見が出た。

【基本問題部会】

教員の評価、共学規定など
学校教育以外の論点討議

 中央教育審議会の基本問題部会は六月十四日、東京・南青山のホテルフロラシオン青山で第十回部会を開き、教育基本法について学校教育以外の論点について討議した。教育基本法の見直しの方向性についてはこれまでの議論で▽現行法で規定されている普通的な理念は残しながら新しい教育基本法はどう在るべきかという視点から見直す▽現行憲法の枠内で見直すべき点を見直すなどの点でコンセンサスができており、前回部会では教育基本法の学校教育関係の論点に関しても委員の意見集約が図られた。そのため、前回の意見概要とこの日の討議結果と合わせた資料を次回総会に提出することとなった。
 文科省からは教育基本法(学校教育以外)に関して十一の検討の視点を掲げる資料が提示された。
 このうち「教員の使命、責務を明確にすべきではないか」との視点をめぐっては「優秀な教員を高く評価する仕組みが必要だ」「教員が大学院で学んだ後、現場復帰できる長期研修制度を保証する必要がある」などの意見が出た。また、教員の位置づけについて現行法第六条二項で「全体の奉仕者」と定められている点について、その概念に疑義を呈する意見や教員の責務については現行規定を時代に合った形に手直しすればいいとする指摘が出た。
 「男女共学の規定を現時点で見直す必要があるかどうか」という視点については意見が分かれた。男女共同参画の視点から重視すべきだと主張する意見がある一方で、男女共学や別学など多様な教育の姿を奨励すればよく、あえてそこまで規定する必要はないと否定する意見が出た。
 「宗教教育について宗教的な情操をはぐくむという観点からどう考えるか」という視点についても議論が集中した。「宗教に名を借りたカルトに対する抵抗力を身につけさせるためにも宗教教育は重要だ」「宗教によっては普遍性があるとはいえない部分を有している。宗教と関係なくパブリックマインドを育てるべきだ」といった意見が出た。
 このほか「現行の規定に加えて盛り込む事項」との視点に立って、ジャーナストの委員から「教育は多様化しており、どういう表現にするかは別にして私学教育の重要性は強調した方がいい。日本の教育は公立偏重に過ぎる」との指摘があった。

【法科大学院部会】

教員の資質の確保検討
法科大学院の課程と博士課程の接続も

 中央教育審議会大学分科会の法科大学院部会は六月十日、東京・霞が関の文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)で第十五回部会を開き、法科大学院の設置基準等について答申に向けた検討を行った。この日は主として教員の質の確保、法科大学院の課程と博士(後期)課程との接続などをめぐって話し合った。法科大学院の教員について中間報告では「理論的教育と実務的教育との架橋を図るものであるから、狭義の法曹や専攻分野における実務の経験を有する教員(「実務家教員」)の参加が不可欠」だとされた。文科省から部会に配布された資料では、法科大学院の教員の養成について、(1)法科大学院修了後、博士課程(後期)を修了した者(2)法科大学院修了後、一定の実務経験を経た者(3)(1)と(2)の併合型の三つのパターンが考えられると提示。委員からは「実務家教員」の定義について「実務経験とはどこまでを含むのか。基準が明らかになると大学側も対応しやすい」「実務家といっても大学の専任教員となって十年も経つと現場感覚のダイナミズムが失われ、学問的基礎の欠如が目立つようになる。教育と実務とを最善の形で融合するために、兼職をどのように認めるか」といった指摘が出た。
 法科大学院の課程修了者が法学研究科の博士課程に進むことになった場合の接続の在り方については、博士(後期)課程の入学資格を与え、(1)三年間(優秀な研究業績を上げた者は一年間)の在学を修了要件とする(2)二年間(同)の在学を修了要件とするの二つの案が示されたが、どちらが適切であるか再度検討することとなった。
 また、中間報告「法科大学院の設置基準等について」に関するパブリックコメントの結果の概要が明らかにされ、日本私立大学団体連合会の意見などが紹介された。私大団体連は「法科大学院を専門職大学院の一つとして位置づけることは国際共通性の点から見ても妥当である」とし、その標準修業年限・修了要件については新司法試験の形式が論文形式の重視などに変わったとしてもその水準が現行程度であるとすれば、中間報告にも記載されているように法学系以外の他の分野を学んだ者を受け入れていくことは、三年の標準修業年限をもってしてもほとんど不可能ではないかと指摘。さらに、今後の法曹は豊かな教養、語学力、法律以外の分野における高度な専門性を有する人材を必要とすることから、標準修業年限・修了要件はこの趣旨に合致したものでなければならない、としている。
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