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記事2002年6月23日 号 (4面) 
短期高等教育機関の役割更に重要
教育研究の充実など柱に事業計画 日短協が春季総会
長期履修学生制度の創設
設置認可弾力化、第三者評価導入 文科省大学課・合田課長説明
 日本私立短期大学協会(川並弘昭会長=聖徳大学短期大学部理事長・学長)は四月二十二日、東京・飯田橋のホテルグランドパレスで「平成十四年度春季定期総会」を開催、全役員の改選を行い、川並会長を再任した。また、私立短大の教育研究条件の充実向上、経営の安定強化などを目的とする十四年度事業計画も決めた。

 中教審は二月二十一日に「大学等における社会人の受入れ方策について」を答申したが、この中で大きく三点のことがいわれている。一つは長期履修学生、いわゆるパートタイム学生制度の導入だ。この制度は履修の形態は科目等履修生と同じものだが、科目等履修生との違いは長期にわたって単位を積み重ね、最終的に卒業することを目的としている学生のための制度であるということだ。今後の生涯教育需要あるいは生活環境を考えると、このように明確に制度の中に位置づけられると、参加のしやすさの効果があるのではないか。四月十八日、中教審の総会で三つの中間報告がとりまとめられた。「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」は、設置認可の在り方の見直し、第三者評価(適格認定制度)の導入、法令違反状態の大学に対する是正措置の導入を柱としている。基本的な考え方は国による設置認可をいま以上に一層弾力化すると同時に第三者による継続的評価体制を整備していこうというものだ。国際的通用性との関連でわが国の大学の質の確保、保証のシステムをどうしていくかは大きな課題だ。短大の在り方はいろいろな提案がなされているが、短大を四年制大学にすれば問題が解決するわけではない。いまや四年制大学そのものが厳しい風にさらされている。名称を変えても問題は解決しない。根本的な問題に正面から取り組む必要がある。国際的に見ても高等教育システムの中で四年制大学と大学院だけのシステムはない。必ず短期のプログラムを持ち、それが社会の中で重要な役割を果たしている。新しい短期高等教育の存在意義を明確にしながら発展してほしい。




国民から大きな期待
長期履修学生制度など創設
日本私立短期大学協会会長 川並 弘昭氏

 「短大冬の時代」だとか言われ、規模の小さな短大が多く、定員割れが目立つが、総定員の九割以上の学生が集まっていることは、まだまだ短大がこの国になくてはならない高等教育機関だということだ。
 本日の総会には、たくさんのご来賓にお集まりいただき、短大への大きな期待を持っていただいている。尾身幸次会長をはじめ応援していただいている短期大学振興議員連盟の先生方にも「短大頑張れ」とおっしゃっていただいているおかげで、新しい地域総合科学科や生涯学習社会に対応した長期履修学生制度の創設など、いくつかの短大の問題を解決させていただいた。まだまだこれからも問題があると思うが、それらについてもご協議いただき進んでまいりたい。




設置認可見直し、準学士を学位など要望
自民党文部科学部会専任部会長・
短期大学振興議員連盟幹事長 田野瀬 良太郎氏

短大振興議連は平成十二年十二月、非常に厳しい状況にある短大の振興に立法府の立場からお役に立たせていただければという思いで、六十一人の自民党の国会議員で発足した。以来、日短協の役員の先生方と歩んできた。いままでのところ、社会人の受け入れ体制の確立、短大卒業者の学位授与に関する改善、地域総合科学科の設置などが実現した。中教審の大学分科会には六人の短大関係の先生方にお入りいただき、短大の実情を話していただいている。短大への補助金の増額要求でも活動し、一定の成果を上げてきた。さらに短大を取り巻く環境改善のために数点問題が浮上してきた。これを総会にお諮りし、議連の名で文部科学省に要望したい。一番目は設置認可の見直しについて、既設短大の教員組織を基に収容定員の増加を伴うことなく同種の分野へ学科改組する場合、同一設置者内の大学・短大全体の定員増を伴わないで収容定員増をする場合は届け出としてもらいたいという要望。二番目は準学士の称号を学位として位置づけられたいという要望。三番目は留学生に対する奨学金の在り方で、四年制大学における留学生に対する奨学金の支給の比率と短大におけるそれとを比べると短大の方が低い。これを同率にされたい。四番目は短大卒業予定者の就職内定状況の公表を四月に入ってからの調査のものだけにしてもらいたい。五番目は大学課の中に短期大学振興室をぜひ設けてもらいたい。六番目は地方の大学に配慮しての規制緩和をしてほしい。たいへん厳しい状況だが、ピンチがチャンスだ。議連としても頑張って短大の環境がよくなるよう頑張っていきたい(六項目からなる議連の要望書は総会の了承を得て、岸田副大臣に手渡された)。




短大の改革に向け取り組みを支援へ
文部科学副大臣 岸田 文雄氏
 短大は昭和二十五年に制度化され、わが国の高等教育に重要な役割を果たしてきた。その中でも短大の九割を占める私立短大の関係者は社会の変化、ニーズに対応し、たいへんな努力を積み重ねてこられた。わが国の高等教育は近年において著しい量的拡大を遂げ、大学・短大への進学率は過去最高を記録している。一方で国際化、情報化の急速な進展、十八歳人口の激減といった変化、さらに社会全体の生涯学習ニーズの高まりなど高等教育を取り巻く状況は大きく変化している。特に短大は女子の四年制大学進学率の上昇、十八歳人口の急減という著しく厳しい状況にあり、量的拡大より質的拡充が求められている。文部科学省では本年二月、中央教育審議会から「大学等における社会人受入れの推進方策について」「新しい時代における教養教育の在り方について」などの答申を出した。こうした答申を踏まえ、各高等教育機関が個性的で特色ある教育研究を展開し得るように、短期大学設置基準などの改正を通じて種々の施策を実施することとしている。さらに短大の今後の在り方等についても中教審大学分科会等で検討を進めることとしており、引き続き短大の改革に向けて取り組みを支援していきたいと考えている。また、厳しい財政状況を踏まえながらもわが国の私学振興のため、私学助成予算の拡充についても努力していかなければならないと認識している。今後とも日短協が国民の大きな期待に応え、特色ある短大づくりに積極的に取り組まれることを心から期待する。




日本の高等教育の基礎に
科学技術政策・沖縄及び北方対策担当大臣・
短期大学振興議員連盟会長尾身 幸次氏
 短大の在り方について政治の面からお手伝いする役割を仰せつかっている。少子化の中で大学教育の在り方はどのようにあるべきか、さかんに議論されている。そういう中でいま国立大学は独立行政法人になるということで、ここ一年間その在り方等について議論が行われ、方向づけがなされようとしている。そうなると、より文部科学省から独立した国立大学の姿が浮かび上がってくる。その時に国立大学と私立大学との関係はどういうふうに整理していくのか、私立大学の中でも短大の位置づけはどうなるのか、二十一世紀の日本の教育の在り方の問題として必ず浮かび上がってくる課題であると考えている。そういう中で、短大振興議連としては諸外国においても短大が地域のすそ野の広い教育に果たしてきた役割がきわめて大きいという実情にかんがみ、大学改革の中にしっかりと位置づけ、これからも素晴らしい人材を短大から輩出する役割を果たしていただかなければならない。そのための政策の提言、要望を皆さまのご意見をうかがいながら進めていきたいと考えている。これから一年あまり短大の在り方にとって大事な時期になると考えている。短大に日本の高等教育の基礎の役割を果たしていただく体制をつくるために、これからも努力してもらいたい。これからの短大の在り方を提言し、つくり上げていく運動を行っていただけるようお願いする。全力で皆さまの要望を実現し、本当の意味で日本各地でバランスの取れた高等教育になるよう、努力してまいる。




会長を再選副会長決定
 任期満了に伴う全役員の改選では川並会長が再選された。川並会長は「中教審がらみで難しい時期にあるが、短大を日本の大きな高等教育の柱の一つとして位置づけなければいけない」などと抱負を述べた。副会長は次の通り。

 副会長=
▽和野内崇弘・札幌国際大学短期大学部理事長・学長
▽宍戸朗大・尚絅女学院短期大学長
▽平方昇一・明和学園短期大学理事長・学長
▽佐藤弘毅・目白大学短期大学部理事長・学長
▽越原一郎・名古屋女子大学短期大学部理事長・学長
▽伊藤唯真・京都文教短期大学長
▽谷本貞人・関西外国語大学短期大学部理事長・学長
▽三浦和夫・高松短期大学長
▽西村駿一・別府大学短期大学部理事長


多様な機能を拡充
短大教育活性化など事業計画
 私立短大は生涯学習社会の要請に対応して、さらに多様な機能を持つことが求められていることを踏まえ、さらにその振興に全力を注ぐとし、十四年度事業計画を決定した。常設委員会活動のうち主なものは次の通り。
 基本問題委員会=▽規制改革の推進に関する第一次答申における課題の研究▽留学生の受け入れに関する研究。広報委員会=インターネット上に協会のホームページを設定、情報発信を図る。財務研究委員会=税制に関する調査研究。学生生活指導委員会=留学生に対する生活指導に関する研究。教務研究委員会=短期大学教育の活性化に関する研究(コミュニティー教育、長期履修生、保育者養成、有職者並びに求職者に関する研究)。就職問題委員会=就職活動の早期化・長期化に伴う授業等への影響に関する諸問題の研究。
 特別委員会としては「協会の在り方検討特別委員会」「専攻科特別委員会」が引き続き活動。「短期大学振興対策特別委員会」は中教審、短大振興議連への対応に努める。私立短大教職員を対象とした各種研修会は別表の通り開催する。このほか私学一般問題として、国庫助成金の増額、学校法人関係税制における減免税措置の拡大などにも取り組む。

川並 弘昭氏


田野瀬 良太郎氏


岸田 文雄氏


尾身 幸次氏



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