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記事2002年6月23日 号 (5面) 
時代の要請に応え私学の特性を発揮した10年経験者研修
文科省に支援求め見解
(財)日本歯学教育研究所
 (財)日本私学教育研究所が私学での10年経験者研修実施に向け、文部科学省に支援を要請するに当たりまとめた同研究所の見解全文は次の通り。(編集部)




資質向上と力量形成
教育のライフステージに応じ研修

1.はじめに

 中央教育審議会(鳥居泰彦会長)は、平成十四年十二月二十一日「今後の教員免許制度の在り方について」の答申を、遠山敦子文部科学大臣に提出された。その中で注目すべき点は、免許更新制度には現時点で否定的見解を示す一方で、教職経験十年の教員に対する効果的・実際的な新たな研修の実施の提言である。
 文部科学省は、この提言等を踏まえ、「教育職員免許法」の一部改正法律案と「教育公務員特例法」の一部改正法律案を現国会に提出され、早期の実現を目指している。
 今回の提言及び改正法律案では、対象は公立学校の教員に限定されているが、当研究所は、「私立学校においても教員のライフステージに応じ適時適切な研修の実施が期待される」との中央教育審議会答申の意図、改正法律案の趣旨を、真摯に積極的に受け止め、私学教員の資質向上と力量形成のために、より一層の貢献をすべきであるとの決意をした次第である。

私学の特色を鮮明に
多くの実績に加え新たに10年 経験者研修

2.当研究所が10年経験者研修を実施する背景

 (1)私学の独自性と公共性
 私立学校は、それぞれが「建学の精神」を掲げて独自・個別の教育理念の実現を目指している。従って、教員の研修も各学校毎に特色をもって実施されるのが原則である。しかし、私立学校も公教育を担う機関として独善的な営みは許されない。
 また、社会の急速な進歩に従い、教員に求められる知識・能力の変容は著しく、私学としての共通性に着目した研修も不可欠である。
 こうした観点に立ち、国民の要請に応え、よりよい教育実践を行うためには、不断の教員研修が最も重要と認識し、当研究所は研修会の企画・実施に全力を注いできた。現在、年一度、全国の私学教員が一堂に会して研究交流を深め、私学としての共通認識と連帯感を高める「全国私学教育研究集会」をはじめ、「私学経営」「私学の教育課程」「人間教育・生き方教育」「教育メディア・教育情報」や教科教育の研修会に、毎年三千名に近い参加者を集めている。平成三年度からは、文部省(当時)と相談・協議を重ね、力添えを頂いて、私立学校初任者研修を実施してきている。
 私学の特色を鮮明にさせると共に、既に多くの経験と実績を有する当研究所が十年経験者研修を担うことは、極めて適切妥当であり、かつ有効であると考える。
 (2)教員のライフステージに応じた研修の体系化
 研修は、教員のライフステージに応じて必要適切な内容で実施されると共に、それらが有機的に結びつき、体系化されることが必要である。前述の通り、教員のスタート期の初任者研修から始め、一般教員向けの多様な研修、理事長・校長等を主たる対象とする経営者や教学責任者向けの研修までを実施している当研究所としては、新たに十年経験者研修を加えることにより、研修メニューをより豊富なものとし、研修の活性化を図ることが期待できる。

心の教育、人間教育など
私学固有の領域を中心に

3.10年経験者研修の具体化

 文部科学省においては、「教科指導、生徒指導、学級指導」の実践的な資質・力量を高めることを骨格とした研修プログラムを、追って示される予定と伺っている。当研究所は、その内容を踏まえ、生徒や保護者とのかかわり方、建学の精神の具現化と学習、「心の教育、人間教育」など私学固有の領域を中心にして研修計画を立案する予定である。
 これらの研修の円滑な実施のためには、全国の私立学校経営者の意識高揚と協力とが不可欠となる。
 そのため、日本私立中学高等学校連合会の常任理事会に当研究所の意向・方針を示し、既に諒承を得た。
 今後、具体化を図る過程でより緊密なかかわりをもち、初任者研修同様に日本私立小学校連合会とも連携を深める所存である。
 内容に関しては、目下、全国の教育委員会や私学団体の一部が既に実施してきた経験者研修の資料を収集し、分析に当たる処である。

4.おわりに

 「教育は人から」といわれる。国民の多様なニーズに応え、より質の高い教育の提供のためには、教員研修に十分意を用いなければならないとの認識をもって、私学は厳しい環境にあるものの、自己努力として前向きに取り組む決意である。
 文部科学省におかれては、研修プログラムの整備のために、適切なご指導・ご助力と、財政的支援など適切な措置を講ぜられることを願って已まない。
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