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記事2002年6月13日 号 (2面) 
新時代の教育基本法等で積極討議
中央教育審議会の審議動向
【第20回総会】

基本法の柱立て提案へ
必要な予算措置を概算要求に

 中央教育審議会(鳥居泰彦会長=日本私立学校振興・共済事業団理事長)は、五月二十八日、東京・千代田の都道府県会館で第二十回総会を開き、新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について討議した。初めに中教審事務局(=文部科学省)から、昨年十一月の文部科学大臣の諮問の際やこれまで委員から指摘された教育基本法に関する検討の視点、また今年五月に行われた同審議会基本問題部会における教育基本法に関する議論の概要が報告された。
 続いて委員からの意見発表では、「学校は何をするところか、現行法はわずかに規定するのみ。学校の役割を考えないといけない」「学習者の基本的権利の尊重と同時に、親、社会、教師の責任を考えないといけない」「新しい公共を作る視点が必要だ。日本が社会運営のソフトをないがしろにしてきた」などの意見が出された。
 また「二〇五〇年に教育の仕組みはどうなっているのか。人口の三分の一は高齢者だ。教育基本法の中に改正の危機感がにじみ出ていなければいけない」「できるだけ(教育に)自由度が与えられないか。今後どうなるかだけではなく、我々はどういう社会にしていくかということも大事」といった意見も聞かれた。
 こうした意見に対して鳥居会長は、六月五日と十四日の基本問題部会で再度、教育基本法について審議し、六月二十一日の総会に「柱立て」を提案する意向を明らかにした。文部科学省の小野元之事務次官は、中教審が中間まとめを策定したところで、それを参考に必要な予算措置を来年度概算要求に盛り込む意向を明らかにした。
 このほか総会では、先に急逝した横山英一委員(教職員共済生活協同組合顧問)の後任に就任した渡久山長輝・財団法人全国退職教職員生きがい支援協会理事長が初めて出席した。任命は五月二十七日付。

【将来構想部会】

設置認可新たな分野の学位
機関別第三者評価で論議

 大学設置認可の望ましい在り方について審議している中央教育審議会大学分科会の将来構想部会は五月三十一日、東京・麻布の三田共用会議所で第十一回部会を開いた。同分科会は四月十八日に中間報告「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」をまとめ、部会として五月二十三日には日本私立大学団体連合会、日本私立短期大学協会などからヒアリングも行った。
 この日の部会ではこれらを踏まえ、中間報告において積み残された事項への対応の方向性、ヒアリング等で示された新たな論点への対応の方向性の二つの資料が文部科学省から提示され、これらを基に論議が行われた。
 設置認可関係では新たな分野の学位が論議の対象となった。中間報告では「今後の学部等の設置に当たっては、改編前後で授与する学位の異同によって認可か届け出かが分かれることとなるため、どのような場合が『新たな分野の学位』に該当するかについて更に整理し、明確化する必要がある」とされていたが、これへの対応としては「学位の分野は大くくりでとらえること」とし、「大学設置・学校法人審議会等の意見を聴きながら、答申以後に検討を詰める」との方向性が示された。委員からは「大くくりとは、どのような範囲でとらえるのか」との疑問点が出されたほか「学問分野の決め方などをあらかじめ決定することがそもそも無理である」「新しい学際的領域は既存のアカデミズムをはみ出す。思わぬ新しい分野が出てくる」「学位を設置認可の対象とするのは非常に大きな改革であることを自覚すべきだ」といった指摘が出された。
 また、機関別第三者評価については「各大学は認証評価機関による評価を受けることとする」という方向性が示された。この文言をめぐっては「義務化しない方が大学は主体的に取り組む」という意見のほか、「『こととする』というのは義務づけではないということか」との疑問が出された。文科省はこの点について「強いて言えば義務づけだが、強制的手段を伴っているものではない。当然の大学の責務として受け止め、お考えいただくべきではないか」との見解を明らかにした。さらに私大関係の委員は、先の私大団体連のヒアリングの内容に関連して「外国評価機関の参加も含めて自発的に第三者評価を受けることには反対ではないが、国が設置した評価機関による評価を義務づけ、国が大学の質の保証をすることはあってはならない」と、改めて私大の立場を説明した。


【基本問題部会】

基本法全体像ではほぼ合意
個別問題の集約には時間必要

 中央教育審議会は六月五日、東京・青山のホテルで第九回基本問題部会(鳥居泰彦部会長=日本私立学校振興・共済事業団理事長)を開き、教育基本法の見直しについて学校教育を中心に討議した。教育基本法の全体像に関してはほぼコンセンサスが得られたが、個別の問題では意見の集約には、なお時間がかかりそうだ。六月二十一日の次回総会では教育基本法の柱立てが提示される予定。
 この日の部会では初めに中教審事務局(=文部科学省)から「学校教育に関する検討の視点と委員の意見の概要」と「教育基本法に関する委員の意見の概要」をまとめた資料が提示・説明された。
 このうち教育基本法の全体像に関しては、これまでに指摘された意見の中から、「新しい時代の教育を現時点において考えた場合、現在の教育基本法に欠けている面を補い、付加価値をつけてよりよいものにしていく方向で検討すべきだ」「現行法で規定されている普遍的な理念は残しながらも、新しい教育基本法はどうあるべきか検討していくべきであり、一部改正か、全部改正かということは、法技術的な問題」「教育基本法の中でも、憲法にかかわる部分は今回の議論の対象とすべきではなく、社会の変化に伴う教育の在り方について議論すべきである」「現行の憲法の枠内でも、見直す点は多くある」「基本計画は、教育に対する投資をしっかり行うためにも基本法にきちんと位置づける必要がある」といった点ではおおむね部会全体のコンセンサスが得られた。
 しかし個別の事項に関する合意形成にはなお時間が必要だ。例えば六歳からの小学校入学(入学始期の一年前倒し)を求める意見が出される一方で、「一律に実施するのであれば、十分な議論が必要。弾力性を認める方がよい。また保育行政とのかかわりをどうするのか」「義務教育はおおむね何歳から何歳までとし、就学始期はもう書かない方がよい」、また義務教育に関して「小学校と中学校の就学期間の刻みは教育基本法ではなく、学校教育法のレベルの話だ」「編入学の自由をもっと認めたらどうか」といった意見が聞かれた。
 このほか、職業教育、家庭教育、生涯学習、高等教育の位置づけ、学習者の位置づけなどをめぐる意見が聞かれた。
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