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記事2002年5月3日 号 (5面) 
企業トップインタビュー 教育はこれでよいのか
日本科学未来館 館長 毛利 衛氏
日本の繁栄は若い世代の力で
建学の精神に魅力を 私学の本領を発揮し全力投球

毛利 衛氏

 東京・臨海副都心にある日本科学未来館が二〇〇一年、七月オープンした。同館は最先端の科学技術と、それに携わる科学者、技術者、および一般の人々が出会う場として、最新の科学技術に関する情報発信拠点となっている。毛利衛館長は「日本の将来の繁栄はいまの若い世代にかかっていますが、学校はそういう考えで、長い目で見て子供たちを教育しているのかどうか、これが教育の基本だ」と問題を投げ掛ける。
 現在、日本は少子化が進み、私学経営を取り巻く環境は確かに厳しいのが現状だ。しかし、「私学は少子化ということをビジネスとしてだけで考えていないか」が、毛利館長の問題提起だ。
 公立はどの学校も同じ教育を行っているが、私学にはそれぞれ建学の精神があり、それぞれが独自の教育を行っている。私学にとって根本的な問題は「教育の哲学が欠けているのではないか、それを突き詰めて考えているのか、それを訴えていかなければならない」ということだ。
 私学の哲学は「私学はどれだけ魅力的な建学の精神を持っているかということ」にかかっていると言う。
 「建学の精神を魅力あるものにし、それを訴えることによって、私学の理解者を増やしていくべきではないか」と強調する。
 毛利館長によれば、いまは個人と全体との役割が希薄になっており、個人を全体に合わせている結果、「個人が受験勉強偏重という社会に合わせている。本質的には個人の意識をどのように変えていくかが重要だ」と指摘、そのためにも建学の精神の役割を強調する。
 私学の経営者は少なくとも二十年ぐらいの単位の流れの中で、建学の精神がそれにふさわしいかどうかを認識する時期にきていると訴える。
 「私学の創立者は建学の精神と経営を一体に考えていたはずです。魅力ある建学の精神を訴えることで、経営を成り立たせていたのです。経営にも反映するような建学の精神でなければならないと思います。新しい時代に向けての建学の精神を持った私学が増えてほしいと思います。そうすれば、教育内容の点でもビジネスの点でも成功すると思います。これが私学の進むべき方向だと思うのです」と、建学の精神はビジネスの精神に通じることを強調する。
 「いまの教育は十八歳で訓練の時期は終わりと考えている。このままでいくと、日本は駄目になります。将来、いまの子供が社会で活躍するためという視点で考えることが理事長も校長も必要です。そして、私学は何のためにあるのかを常に考え、本来あるべき姿をきちっと打ち出し、真正面から全力投球するようにすべきです」と言い切る。
 毛利館長は一九九二年と二〇〇〇年にスペースシャトルに搭乗、宇宙という大きな視点から地球を見た。生死を賭けたぎりぎりのところでさまざまな困難に挑んできた。搭乗員お互いが考えていること、言っていること、行っていることが矛盾していたら命が危険にさらされるという体験をした。いま、科学技術を身近な文化の一つとして、社会に定着させるという目標に挑戦している。
 同館では「地球環境とフロンティア」「情報科学技術と社会」などをテーマとした展示が行われているほか、企画展、各種セミナー・シンポジウムが開催されている。
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