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記事2002年4月3日 号 (2面) 
急ピッチで進む改革論議
中央教育審議会の審議動向
【大学院部会】

専門職大学院骨子案まとめる
高度で専門的な職業能力養成

 大学院における高度専門職業人養成について討議している中央教育審議会大学分科会の大学院部会は三月十八日、東京・霞が関の文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)で第八回部会を開き「専門職大学院(仮称)」の創設を提言する骨子案をほぼ固めた。骨子案では現行の大学院制度を見直し、職業分野で国際的・社会的にも通用する高度で専門的な職業能力を持った人材を養成するための新たな仕組みを整備することが必要であるとして「専門職学位課程(仮称)」の創設を打ち出している。同課程を置く「専門職大学院(同)」はこうした人材の養成に特化した実践的な教育を行う大学院として位置づけられている。
 現行の専門大学院は「専門職大学院」に移行する。既存の大学院でも高度専門職業人養成と研究機能を分化させたものとして位置づけるなら、高度専門職業人養成に特化した課程については「専門職大学院」の設置を認める。
 「専門職大学院」の分野は(1)国家資格などの職業資格と関連した専攻分野(2)特定の専門的な職業に求められる高度な職業能力を持つ人材の養成が社会的に必要とされている専攻分野。修業年限は一律に定めない。教育方法については研究者養成を行わないことから、授業のみを必須とし、事例研究、討論、現地調査、実習その他の方法による実践的な教育を行う。修了要件も各専攻分野ごとに必要となる授業科目の履修単位の修得のみを必須とする。
 教員組織は、研究指導を必須としないことから、高度の教育上の指導能力があると認められる人を専任教員として必要数置き、研究指導教員も必置とはしない。一方、実践的な教育を行うため、実務家教員は専任教員中に相当数置くことを義務づける。
 このように「専門職大学院」は修業年限、教育方法、修了要件、教員組織などが通常の大学院の課程とは大きく異なっており、また、専攻分野によって必要とされる基準が異なることが想定されることから、大学院設置基準とは別の専門職大学院(仮称)設置基準を新設する。
 「専門職大学院」修了者には、社会的・国際的通用性を勘案し、従来の大学院とは異なった名称の専門職学位を設ける。
 また、専門職大学院の各専攻分野ごとに認証評価機関による継続的な第三者評価(適格認定)を受けることを義務づける。

【基本問題部会】

基本計画の柱立て
確かな学力向上、人間性育成施策例も検討

 中央教育審議会の基本問題部会(鳥居泰彦部会長=慶應義塾学事顧問)は三月十三日、東京・港区内のホテルで第三回会合を開催、教育振興基本計画の「柱立て」の在り方と、文部科学省がすでに提示している「柱立て」(素案)のうち、確かな学力の向上と豊かな人間性の育成に関する政策目標やそれを実現するための施策を検討した。
 この日の審議では教育振興基本計画の柱立てに関して、「総花的にならないよう、大胆に優先順位をつけるべきで、例えば五年間で学校再建に取り組む、年間三十時間くらいを使い、伝統文化に触れる機会をつくるとかしたらいい」「あれもこれもでは無理がある。柱立ての大きなくくりは、確かな学力の向上、豊かな人間性の育成のほか家庭教育、生涯学習をどうするかだ」「最優先課題を絞り込むべきだ」などの意見が出されたが、柱立ての外枠はまだ固まっていない。次回(三月二十九日)は、この日の意見に沿って会長、中教審事務局(文部科学省)等が修正した柱立て案が提示される予定。
 第三回会合では、初めに文部科学省から会議資料の説明が行われたが、この中ではすでに提示している「柱立て」(素案)の中の「確かな学力の向上」と「豊かな人間性の育成」に関して、政策目標として考えられる事項例と、政策目標実現のために取り組む施策例が提案された。
 現時点ではたたき台素案といった段階のものだが、確かな学力の政策目標例では、「中学校卒業時に学習指導要領の目標の標準的な学習到達レベル以上を達成できるようにする(このため具体的な数値目標を設定する)」「トップレベルの学力を持つ子どもの割合や、将来国際社会において活躍、貢献するリーダーとなりうる子どもを増やす」「ゆっくり学ぶ子どもに対する指導を手厚くする」などを挙げている。
 また具体的な施策に関しては、教員配置の改善、学校図書館資料の計画的整備、学校段階や学校内外を越えた学習を可能とする環境の整備などが例示された。
 一方、豊かな人間性に関しては、政策目標例として高校卒業時までにボランティアなど社会奉仕体験活動を一定期間経験し、社会貢献の精神を身につけること等を、施策例では我が国の伝統や文化に関する教育の推進や学校における教育相談体制の充実などを挙げている。政策目標や具体的な施策に関しては、外国語(英語)教育の在り方などが議論されたが、人間性に関する突っ込んだ議論や六・三・三制の見直し、教育の複線化、九年という義務教育期間の在り方等についての審議の必要性を指摘する意見、現実を見据えた実現可能な数値目標の設定等を求める意見など聞かれた。

【法大学院部会】

奨学金、教育ローンなど
学生の支援制度の在り方討議

 中央教育審議会大学分科会の法科大学院部会は三月十五日、東京・霞が関の文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)で第十二回部会を開き、奨学金、教育ローンなど法科大学院の学生の支援制度の在り方を討議した。委員からは新しい奨学金制度の仕組みをつくる必要があるとの意見や、法科大学院にだけ税金を使って奨学金制度を設けるには世論の合意が必要だとする意見などが出た。
 文科省は国による育英奨学事業が平成十四年度予算案では、総額五千百六十六億円、貸与人員七十九万八千人であることや、主な大学の育英奨学事業の状況、民間団体における育英奨学事業実施状況などについて説明した。こうした育英奨学事業とは別に法科大学院生のために特別の奨学金制度を設けることの是非について委員からさまざまな意見が出た。「資力が十分でない人が法科大学院に進めるよう、いままでの仕組みではなく、新しい奨学金制度を民間でつくる必要がある」「現行の教育ローンの在り方を抜本的に変えないと法科大学院には資力のある学生しか進学できなくなくなってしまう。政府保証のローンを導入し、枠を設けず学生に無条件で貸す制度をつくるべきだ」「制度的支えがないと在学生は学資が出せず、非常にゆがんだ制度になってしまう。何らかの画期的制度を設けるべきだ」などと新たな奨学金制度の創設を望む意見が複数の委員から出た。
 一方で「世論の合意がないと、法科大学院のためにだけ税金を使って奨学金制度をつくるのはどうか」との指摘もあった。これに対しては「社会にとってたいへん重要なプロフェッショナル教育だということで説明できるのではないか」「エリート養成の人材教育は金が掛かって当たり前だと割り切るべきだ」といった意見が出た。
 また、前回部会でも説明のあった、複数の私立大学が連合して大学院(法科大学院)を設置する方法について、改めて事務局(文科省)から説明があった。文科省の提示した案によると、想定されるケースは四つ。(1)A大学がB・C大学との連携によってA法科大学院を設置(2)A法人とB法人がA・B(=C)法人を設立、大学院大学としてA・B(=C)法科大学院を設置(3)A、B法人(大学)はA・B(=C)法科大学院(大学院大学)を共同で設置する(4)A、B両大学(法人)に置かれる大学院研究科を新たに制度化し、両法人はA・B法科大学院研究科を共有するというもの。
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