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記事2002年4月3日 号 (3面) 
平成14年度首都圏の高校入試でみる特徴
不景気から低学費の公立志向
男女共学へ切り換え 推薦入学、オープン入試導入
私立高校
 平成十四年度の首都圏の高校受験者数は、昨年五月一日現在の学校基本調査による東京、千葉、埼玉、神奈川の一都三県での公立中学三年在籍者数から試算すると二七万三八六〇人で、前年度より一万一四四七人(四・〇一%)の減少となる。平成十二年度から毎年一万人を超える減少が続いている厳しい少子化現象の中で、不景気から学費の安い公立高校を志向する傾向も依然、変わっていない。

 私立高校側ではさまざまな対策を講じているが、その方法として、森上教育研究所の小川哲美編集人は(1)男子校や女子校から男女共学校への切り換え(2)推薦入学の導入と東京、千葉、埼玉での併願推薦導入の増加(3)神奈川ではオープン入試の拡大の三項目を挙げる。
 (1)男子校や女子校から共学に移行した私立高校は一昨年の七校、昨年の八校に続いて、今春も六校と共学移行ラッシュの状態。人気によって変動幅の大きい一般入試の応募状況を、共学化する前の昨年と移行後の今春で比べてみる(↓印の前が昨年、後が今春の人数)。
 東京都では三校。工学院大学附属は中学・高校が同時に男子校から共学へ移行した。高校の普通一次定員四〇は不変。志願者五一↓二五六(男二一六、女四〇)。普通二次定員七八は不変。志願者三六七↓六四三(男五〇九、女一三四)。東京立正は女子校から共学校へ。普通一次は定員七〇・志願者一〇二↓定員六〇・志願者三二一(男一二七、女一九四)。普通二次は定員一〇・志願者四三↓定員三〇・志願者一六八(男一〇六、女六二)。早稲田大学系属早稲田実業は商業科を停止、普通科を男女共学とし定員は昨年の一一〇から今春は男約八〇、女約七〇とした。普通科の志願者一三二七↓男一二六三、女六〇五。
 神奈川県では二校が共学化した。日本大学は男子校から共学校へ。中学からの内部進学が増えたため一般入試の枠は八〇↓七〇へ縮小。志願者は一〇四↓二七三(男二〇八、女六五)。横浜創英短期大学女子は女子校から共学化して校名を横浜創英に変更。商業科の募集を停止、普通科を文理コースと一般コースに改編し、一般コースは普通課程と総合課程に分けた。改編前と後で一般入試の定員合計は二五〇で不変だが、志願者は四三四↓一八三一。千葉県では女子校の我孫子二階堂が共学校へ移行するとともに募集を女子二四〇人から男女二六〇人へ変更したほか、さまざまな入試改革を行った。志願者は一〇九一↓一五二五。

隣接県に併願推薦が続出
神奈川はオープン入試に人気

 千葉県では市川がスポーツ推薦単願一〇人の枠で一〇人受験し、全員が合格。埼玉県では武蔵野が二〇人枠で二六人応募し全員合格。埼玉県内で推薦制を実施しないのは慶應義塾志木だけとなった。
 昨年までにすでに推薦制を実施していた高校でも新たに埼玉県など隣接県を対象とする併願推薦を取り入れるところが続出した結果、東京都内で併願推薦実施校は約六〇校となった。もともと併願推薦を認めていた埼玉県では新しく国際学院と獨協埼玉の二校が併願推薦に加わり全部で三八校となった。千葉県では我孫子二階堂、国府台女子学院(英語科)、芝浦工業大学柏、中央学院、東葉の五校が併願推薦を新たに実施した。
 (3)神奈川県では内申書に縛られないオープン入試の人気が高まっており、今春は鎌倉女子大学、横浜国際女学院翠陵、横浜山手女子の三校で新たに導入、全県では一八校で実施した。
 神奈川県の入試は推薦、一般にかかわらずほとんどの高校で内申点による打診基準を設けており、受験生は十二月十五日から始まる入試相談の打診で、ほぼ合格の可能性を確実にして受験するのが通常の状態となっている。
 しかし、この方法だと内申点は二学期の期末試験までの成績で決まるため、それ以降急激に力を付けてきた受験生にとっては不利な制度となる。そこで学力試験の成績だけで合否を決めることにし、これがオープン入試制度と呼ばれて注目を集めるようになった。今春は三校増えたため一八校でオープン入試が実施された。
 新規導入校の場合、鎌倉女子大学は募集枠一〇人で試験は国・英と個人面接で実施、これに対して六人志願し二人合格、横浜国際女学院翠陵は幕集五人枠で試験は国・数・英と個人面接を実施、これに対して一一人志願し一人合格、横浜山手女子は九人枠で試験は国・数・英と個人面接を実施、これに対して一人応募したが不合格だった。枠は少数だし、合格するのは難しいが、自由に受けられるため人気が高まっている。

難関高校でも推薦入試
男子2倍、女子3・36倍

 全般的な受験者の減少の中で、共学化した高校はいずれも志願者数をかなり大きく伸ばしているのが目立つ。
 (2)推薦入試を新たに導入する私立高校は難関度上位校に多い。人気がある私立難関高校でも推薦入試を始めたのは、不景気に後押しされた公立高志向によって学力のある生徒を奪われたくないために、早めに推薦で確保しておこうという狙いである。
 東京では七校。青山学院は男女各二五ずつの定員に対して志願者は男子五〇(二倍)、女子九五(三・三六倍)。推薦入試では、十二月十五日からの高校と中学の間で行われる入試相談で受験生の数が調整されるため競争率が一・〇倍になる学校が多い。しかし、青山学院では出願基準として五段階評価で男子は九科目三十六、女子は三十九とし、この基準を超えたら推薦入試の受験資格だけは与えるが、合格は約束しない。しかも女子の場合は男子よりもハードルが高くしてあるにもかかわらず競争倍率が高いのは女子に人気のあることをはっきり示している。成績上位の女子が大勢集まってくる中で、合否を決するのは適性検査(学力検査)が大きな役割を果たしている。
 中央大学杉並も同様に推薦基準を満たした場合には受験資格だけ与えて合格の保証はしない方式を七〇人枠で導入、男は四二人受験して二八人合格、女は九三人受験して六一人合格。約一・五倍の実質競争率となった。それ以外の推薦制新規導入校はいずれも実質競争率一・〇倍だった。東京では数年前から併願推薦を認めるようになった。郁文館は一般入試の募集を一五〇人から一〇〇人に減らして推薦を導入したが、推薦入試の枠五〇人のうち単願推薦三〇人、都外併願推薦二〇人に分けた。
 東京私立中学高等学校協会の申し合わせでは推薦入試は本来の趣旨からいって単願に限るとしていたが、埼玉が公立高校との兼ね合いからB推薦制度で併願を認めたところ、埼玉の受験生は、合格すると東京での受験をやめてしまう例が出始めたため、数年前から隣接県(主に埼玉県)の受験生に限り併願を認めたものである。併願の場合は単願よりも内申成績の基準が高くされた。また適性検査(国・数・英)も実施された。その結果、単願推薦は一四人、併願推薦は二九人が受験していずれも全員合格した。
 郁文館国際は単願で募集し二人が受験▽共立女子は一般入試の募集を一〇〇人から五〇人に減らして推薦(三〇人枠)を導入し三〇人が受験▽芝浦工業大学はスポーツ推薦を導入して九人受験▽星美学園は一人受験▽東星学園は三人受験した。いずれも全員合格し実質競争率一・〇倍だった。

【私立高一般入試状況】

196校が2万5千16人募集
中間倍率2・77倍と前年並み

 首都圏私立高校の一般入試応募状況は、現在のところ一月末から二月一日にかけて行われた中間集計に頼るしかない。それによれば東京都内では昨年は一九九校で二万五五一四人募集したが、中高一貫完全移行で高校では補充しないなどのため減少し、今春は募集校数一九六校が二万五〇一六人枠の募集を行った。これに対する中間倍率の応募は二・七七倍(昨年二・七八倍)とわずかに減っており、最終倍率は昨年は三・七九倍だった。
 千葉県は五四校の募集人員八七五八人(昨年比一二八人減)に対して中間集計では志願者数は四万六五一二人(六八九三人減)、志願倍率は五・三一倍(〇・七ポイント減)となっている。
 神奈川県では公募五七校のうちの集計五六校で公募人数一万〇〇二八人に対して中間集計では志願者三万六三六一人、志願倍率三・六三倍となっている。昨年の中間倍率は四・一五倍、最終倍率は二・九〇倍だった。
 埼玉県は集計四二校の募集人員が内部進学を含むものや含まないものがあるため比較の対象から除外された。
 結局、全体としては私立高校はやや減少傾向が昨年同様続いている

【公立高校入試の今年の動き】

都立高受験倍率1・26倍
進学重点校倍率が上昇

 首都圏の公立高校入試の全体状況は次の通り。

 【東京】都立高校の一般入試では一八八校の募集人員三万二九五四人に対して受験者は四万一六六五人で受験倍率は一・二六倍と昨年並みだった。進学重点指導校になった日比谷、西、戸山、八王子の四校はいずれも昨年より倍率を伸ばした。日比谷と西で注目されていた自校作成の試験問題は相当難しく、特に数学が思考力を要する出題だった。
 
【千葉】県内の全日制の公立高校はすべての学校・学科(一四九校・二五九学科)で推薦入試を実施し、一万四〇五二人募集に対して二万〇九八〇人(一・四九倍)が受験、一万四〇三五人が合格した。一般入試は二万三五〇三人募集に二万九一七五人(一・二四倍)が受験し、二万三五八四人が合格した。推薦も一般入試も全体の倍率は昨年に比べて下がった。
 低下の原因は県内の私立高校が併願可能な推薦を含む推薦入試枠を総定員の三八・三%から四一・四%に広げたため、早めに合格を決めてしまいたいという傾向が強まって、公立に出願しなかったケースが増えたものと見られているが、福祉系や看護系の学科は大幅に上昇し高倍率となった。

 【埼玉】公立高校の推薦入試は予定者一万三五七八人に対して志願者三万四二四五人、内定者一万六三三一人で、実質競争率二・一倍となり、昨年より〇・〇四ポイント低下したものの、全般に昨年に引き続き応募者の三七%しか合格しない厳しい入試となった。応募者減少の一因に県内私立高校への単願推薦志願者の増加などが挙げられている。
 推薦入学を差し引いた一般入試は募集予定数二万七四七三人に対して三万三六七一人(昨年三万五二一〇人)が受験したが、昨年同様、上位・中堅校に応募者が集中、学力重視の指定を受けた一一校のうち一〇校は倍率が上昇した。
 出願取消者数が二けたに達したのは浦和、川越、浦和一女、熊谷。取消者の多くは早稲田、慶應など私立・国立高校の繰り上げ合格発表の影響とみられている。

 【神奈川】公立高校の募集人員は四万二一七六人。推薦は七四六五人の募集に七四七三人が合格、一般入試は三万四七三三人の募集に対して四万一二四六人が受験し三万四七六八人が合格した。一般倍率は一・一八六倍で昨年より〇・〇三二ポイント上昇した。公立中学卒業生の公立高校志願率は七〇・七%、公立高校合格率は六一・三%だった。
 推薦入試は平成十三年度から普通科一般コースの一部に導入され、十四年度には公立高校一五〇校の半数以上の七八校で実施された。再来年にはすべての高校で推薦入学が行われる予定。

【私立短大と公立高校の連携】

県立高校18校と連携
短大の授業公開、相互に単位認定
湘北短大

 神奈川県厚木市の湘北短期大学(山田敏之学長)は新年度から県立高校十八校と連携して、短大の授業公開や高校生向け特別授業、高校の夏期休暇期間中におけるパソコン集中特別授業の実施などを行う、と発表した。相互に単位認定も行う。高・大連携の試みは各地で始まっているが、一大学と高校一―三校という例がほとんどで、一挙に十八校と連携するのは初めてという。
 三月十二日には、厚木市内のホテルに湘北短大の山田学長と今回の連携プログラムに参加する高校の校長らが集まり、教育交流に関する協定書の調印式を行った。「湘北カレッジ・パス・プログラム(略称SCoPP)」と名付けたこの連携プログラムでは、毎週水曜日、木曜日の三時限の短大の授業を高校生に公開するほか、土曜日に全十二回の高校生向け特別授業を行う。高校の夏期休暇中にはパソコン集中特別授業を開講。また、短大の電子情報、生活科学、幼児教育、商経の四学科の専任教員が協定締結高校に出向いて授業する「出張授業」も行う。土曜日に行う特別授業にはテレビドラマから現代社会を探る「メディアを読み解く」や世界最小のマイコンを使って電子工作を実習する「ワンチップマイコンを用いた電子工作」、インターネットを基礎から解説する「インターネットのしくみ」など、高校生の興味を引くような授業科目がずらりと並んでいる。これらの受講料は無料で、受講した高校生が湘北短大に入学した場合は、高校時代に取得した単位を短大の単位として認定する。高校でも短大で受講した単位を卒業単位として認定できる仕組みになっている。受講する高校生には短大から受講証が発行され、図書館、体育施設、学生食堂などの利用も認める。
 また、高校生が湘北短大の授業を受講するだけでなく、教職員同士も積極的な交流を図り、IT教育、国際交流、企業見学や企業実習の指導、生活・進路指導などの情報交換を積極的に行っていく。インフォテックセンターや国際交流センターなど、湘北短大諸部門との連携も進める。
 湘北短大では、この連携プログラムを行うことによって▽高校生が進路を考えるのに役立つ▽短大の授業内容や教授法も時代にマッチしたものとなる▽双方の教育が活性化するなどの効果を見込めるとしている。
 連携の参加高校は愛川、相原、足柄、厚木北、厚木商業、厚木西、厚木南、綾瀬、有馬、伊志田、伊勢原、海老名、小田原城東、座間、茅ヶ崎、中央農業、秦野南が丘、ひばりが丘の各校。
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