こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2002年4月23日号二ュース >> VIEW

記事2002年4月23日 号 (3面) 
中央教育審議会の審議動向
専門職大学院など次々新制度
四月に入り活発に開かれた大学分科会関係の部会、基本問題部会等の審議の概要を報告する。(編集部)

【大学分科会】

3つの中間報告案審議
18日の総会提出決める

 中央教育審議会の大学分科会は四月十五日、東京・霞が関の経済産業省別館で第八回会合を開き、「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」「大学院における高度専門職業人養成について」「法科大学院の設置基準等について」の三つの中間報告案について審議を行った。いずれについてもこの日の会合での委員の意見も踏まえ、字句の修正を行い、十八日の総会に諮ることとなった。
 このうち「大学院における高度専門職業人養成について」では、高度専門職業人養成に特化した新たな大学院として「専門職大学院(仮称)」の創設が提言されたが、これに関連して、現在ある六つの専門大学院との関係について、複数の委員から文部科学省に質問があった。文科省は法科大学院も包括し、教育方法や修了要件などの点でより高度専門職業人養成にふさわしい大学院制度として「専門職大学院」の創設を提言したと説明。さらに、現行の専門大学院は「専門職大学院」制度の中に位置付けるとし、移行措置などについては配慮したいとした。新たな「専門職大学院」の創設に関しては設置認可の対象になると位置付けた。
 「法科大学院の設置基準等について」には、新たな法曹養成制度の中核としての法科大学院の課程、標準修業年限・修了要件、教員組織、教育内容・方法などが盛り込まれている。法科大学院の必要性について、わが国がグローバル化社会に対応して、国際渉外等の業務を行う法曹の必要性が高まっていることも文言として書き入れるべきだとの指摘が鳥居泰彦会長からあった。
 「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」は、▽設置認可の対象を大学の質の確保のために事前審査が必要不可欠なものに限定する▽第三者評価(適格認定)制度を導入することなどを内容としているが、これについては委員から特に目立った意見は出なかった。

【将来構想部会】

新方式への移行時期明示せず
短大の“学位”表現で意見
中間報告案

 中央教育審議会大学分科会の将来構想部会は四月十日、東京・麻布の三田共用会議所で第九回部会を開き、中間報告案「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」の審議を行った。中間報告案で示された改革の方向性は、国の事前規制である設置認可を弾力化し、大学が社会の変化に対応した教育研究活動を展開できるようにするとともに、大学設置後の状況を第三者が継続的にチェックできる新たなシステムを構築する、というもの。若干の修正のうえ十五日の分科会に諮ることとなった。
 原案では国の設置認可の対象について、大学、大学院の基本組織である学部、研究科の新設・改廃について行うことを原則としつつも、改編前後で授与する学位課程に変更があるか否かを勘案して弾力的に取り扱うとされているが、「学位課程」という表現が一般には受け入れ難いとして、改めることとなった。
 また、短期大学については「学位授与機関ではなく、学位課程が存在しない」とされ、学科は短大の基本組織として認可対象とするものの、審査手続きや内容の大幅な簡素化を図るか、原則として届け出とするかは引き続きの検討となった。この原案について複数の短大関係の委員から「準学士は学位として国際的に通用している。将来的に学位と認めないような断定的な書き方はどうか」との指摘が出され、表現を検討し直すこととなった。中間報告案で示された、新たな設置認可と質の保証システムについて、実施する時期を予想できるのであれば、文中に書き込んではどうかとの指摘が委員からあったが、文部科学省は「時期を明示するのは難しい」と回答した。

【大学院部会】

「報告案」をほぼ決定
大学院のグランドデザインでは不満の声

 中央教育審議会大学分科会の大学院部会は四月九日、東京・霞が関の文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)で第九回部会を開いた。職業分野で国際的・社会的にも通用する高度で専門的な職業能力を養成するための新たな大学院制度を創設することが必要だとして、「専門職大学院(仮称)」の創設を盛り込んだ中間報告案をほぼ了承。次回の大学分科会に諮ることとなった。
 原案では「専門職大学院」について、「高度で専門的な職業能力を有する人材の養成に特化した実践的な教育を行うもの」として位置付けられていたが、大学院の目的として研究をはずすことはできないとの意見が出て、「実践的な教育およびそのための研究」と表現を改めることとなった。また、原案では大学院の目的として「基礎研究を中心とした学術研究の推進およびそれを通じた研究者の養成」とされていたが、「基礎研究と限定する必要があるのか」との意見が出て、この部分の表現は削除されることとなった。
 「専門職大学院」の修業年限については「各専攻分野における教育内容等にふさわしい弾力的な修業年限が定められるような制度とする」とし、明確な修業年限を例示していない点について、委員から文科省に質問があった。文科省は「いろいろな分野ごとにこれから修業年限を設置していく方が合理的ではないか」と回答、理解を求めた。
 このほか委員からは「日本の大学院についてのグランドデザインがない。専門職大学院に対し、研究者養成型大学院をどう位置付けるのか」「通常の大学院博士課程は研究者養成と明確に位置付けた方がいいのではないか」などの意見が出た。

【法科大学院部会】

細部の表現などめぐり意見
中間報告案をほぼ了承

 法科大学院の設置基準等について審議してきた、中央教育審議会大学分科会の法科大学院部会は四月十二日、東京・霞が関の経済産業省別館で第十四回部会を開き、中間報告案のとりまとめに向けた審議を行った。細部の表現などをめぐって委員から意見はあったもののおおむねこれを了承。表現の変更については部会長一任のうえ、十五日の大学分科会に諮られることとなった。
 前回(第十三回)部会で示された中間報告案から今回、変更があったのは、入学前の既修得単位の認定について新たに記述が加わった点。入学前の他の大学院における既修得単位の認定や他の大学院との単位互換については、現行制度上、大学院修士課程においては、修了に必要な三十単位のうち、十単位を超えない範囲で認めることができるとされている。法科大学院においてもこれと同様の取り扱いをすることが可能だとされたものの、法科大学院制度の趣旨を踏まえ、さらに検討する必要があるとされた。また、教員資格について、実務家教員以外の教員については実務に接する機会を設けるなどの工夫を行うことが適切であるとされた。複数の大学が連合して設置する大学院(連合大学院)についても、▽複数の大学のうち一校を基幹校として残りの大学が内部組織に参画する▽複数の大学の共同出資により新たな学校法人を設立し、共同で法科大学院を設置するという二つのパターンを基本として今後、検討するとされた。これらの修正点についてはいずれも特に異論は出なかった。
 このほか、文中で不統一だった「第三者評価」と「第三者評価」(適格認定)」の表記については、後者で統一が図られることとなった。

【基本問題部会】

高等教育の政策目標など討議
18歳人口減への対応で厳しい意見

 中央教育審議会の基本問題部会(部会長=鳥居泰彦・日本私立学校振興・共済事業団理事長)は四月九日、都内の会館で第五回会合を開き、高等教育分野で「教育振興基本計画」に盛り込むべき政策目標や具体的施策等について討議した。
 討議は文部科学省が提案した政策目標例、施策例を基に進められたが、理科系の学問に比べ社会的ニーズが見えにくい文科系学問の位置づけ・支援策や、今後十八歳人口の急減が予想される中で高等教育の量的在り方をめぐって多くの意見が聞かれた。
 大学学部の年齢層(十八から二十一歳)は平成十二年の約六百三十万人から、その五十年後には約三百三十万人へとほぼ半減する。それだけに委員からは「(大学の)上手な安楽死を考えなくてはいけない」など厳しい意見も聞かれた。
 初めて文部科学省から提示された政策目標例は、(1)高等教育機関の個性化・多様化の推進(2)競争的で創造的な環境の創出と国際的競争力のある教育研究活動の展開(3)高等教育機関の社会的貢献の推進の三点。
 これら政策目標を実現するために取り組むべき施策例としては、厳格な成績評価の導入など大学・大学院院卒業時の学生の質の確保、短期大学、高等専門学校、専門学校を含めた高等教育機関の特色ある発展など進学率・進学者数の将来展望を踏まえた高等教育機関の在り方、国公私立を通じた世界最高水準の大学育成、社会人の再教育の強化(社会人のキャリアアップのための大学院・大学教育・短期大学教育・専門学校教育の充実=社会人キャリアアップ百万人計画)、産業界への技術移転と大学発ベンチャー企業の加速(大学発特許取得件数を十年間で十五倍にする)など。
 こうした提案に対して委員からは、「私学の財政問題は重要。欧米の有名大学が私学なのは、ファンドがあるから。税制改正が必要。大学に寄付すると何倍かの相続税が免除というのもいい」「大学の倒産に対する対策は重要な政策。それを入れないでいいのか」「国の高等教育政策は金だけではない。金が集まりやすい仕組みを考えてほしい」「抑制型で対応するか、自然消滅に任せるか、どうするかだ」「基本は自己責任だが、五年、十年経営を持続できるようなことが担保されると良い」「設置認可の更新制は考えないのか。基準を満たせなくなった場合、その学校には止めていただくのがいい」「十八歳人口の減少問題をどうするのか深刻な問題だ。うかつに議論できない。上手な安楽死を考えないといけない」などの意見が出された。
 また文科系学問に関しては、「社会のニーズに合わない領域の学問をどうするのか。どこかにおいておく必要はないのか」「文系の位置づけ方がもっと鮮明にならないか。これを突破しないと二十一世紀に批判的・創造的人材は育たない」等の意見が聞かれた。
 次回会合は四月十九日だが、早急に教育振興基本計画の柱立てを固める方針で、各委員にも柱立てに関する私案の提出が要請された。鳥居会長は、教育振興基本計画の骨組みができた段階で一度、審議を教育基本法に移し、それが後、再び教育振興基本計画に戻り、肉付け作業を行うといった段取りも考えられることを明らかにした。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞