こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2002年4月23日号二ュース >> VIEW

記事2002年4月23日 号 (5面) 
東京私立短大の全体像―志願者、進学就職を中心に
短期大学には多くの魅力が
東京都私立短期大学協会が刊行
四大より高い短大女子就職率
大学編入は10年で倍増に

 東京都私立短期大学協会(佐藤弘毅会長=目白大学短期大学部理事長・学長)はこのほど「平成十三年度短大データブック」を刊行した。会員校六十四校にアンケートし、そのうち六十三校が回答した資料をまとめたもので「東京私立短大の全体像を見る」という副題付き。「短大は入学しやすい分だけ魅力に欠けるのではないか」と、最近、女子の四年制大学志向が高まる中で、「本当はとてもいろいろな魅力があるのですよ」とアピールする狙いになっている。

 まず入学者選抜のやり方だが、これは女子高校生が感じるような入学しやすさを裏付けている。十三年は受験者数四万八百四十人(推薦一万四千四百五人、一般入試二万六千四百三十五人)に対して合格者数は合計二万七千百九十人(推薦一万二千六百六人、一般入試一万四千五百八十四人)で、競争率は一・五倍。このうち入学者は二万五十二人(推薦一万二千二百三十九人、一般入試七千八百十三人)であり、入学定員二万二百八十四人をほぼ充足している。
 これを学科系統別にみると、別表のようになる。
 選抜方式別の入学率をみると、推薦志願者の八五%が入学しており、一般入試受験者の二七%に比べ、圧倒的に高い入学率である。
 推薦入学制度を行っている学科を推薦の方式別に分けると、公募制百十四、指定校制九十四、付属高校からの内部進学八十五、自己推薦三十四、スポーツ推薦十三、AO入試三十七、その他十八となっている。推薦者の人数制限は「しない」九十五学科、「する」五十四学科。推薦要件となる評定平均値はAなし、B二十九学科、C1(三・四〜三・一)三十七学科、C2(三・〇〜二・七)六十二学科。
 かつては推薦入学資格は「現役」に限られていたが、今回の調査では「高校新卒」を要件とするのは六十九学科だけ。「校長推薦」百十一学科、「人物優秀」三十二学科、「ある分野に優れた能力」二十八学科、「特定教科・科目が優秀」二十一学科、「その他」二十七学科と現役へのこだわりは減ってきている。
 募集人員に対する推薦入学者の割合は最頻値が「六〇〜六九%」二十三学科、次いで「四〇〜四九%」十八学科、「三〇〜三九%」十七学科といった順に多く、「八〇〜八九%」「九〇〜一〇〇%」もそれぞれ十二学科ずつあった。
 AO入試については「実施している」という回答は二十六校四十八学科だったが、「卒業年度不問」はこのうち十九学科で、六〜七月ごろから開始して二〜三月ごろまで四〜七回実施している。一般入試の実施回数は「二回」五十五学科、「一回」四十二学科、「三回」二十五学科といったところにヤマがある。
 一般入試、推薦入学、AO入試といった試験方式の区分けは崩れてきているような感じであり、短大は入学しやすいという受験生の印象は当たっているといえよう。平成十四年の入試結果がまとまるのは五月だが、十三年よりさらに入りやすくなっていると推定されている。
 「しかし入りやすいから魅力がないと思うのは大きな勘違い。“目玉商品”はいっぱいある」と東短協では話す。

短大から多様な進路へ
まじめな学習態度が定着

 文部省学校基本調査の学卒就職率を四年制大学と短大の男女で比較(平成四年から十一年)すると、短大女子は平成九年から四年制大学男子を抜いてトップを続けている(東短協発行リーフレット「いま短大がいいってホント!? ホントです」より)。よく学卒者の就職状況の数字が年末に比較された時「短大はよくない」などと報道されることがあるが、短大に多い幼児教育系の就職は年が明けて年度末近くにならないと、保育所や幼稚園などでの退職者補充予定数がはっきりしないため、大半は就職未定者の中に算入されてしまい、その時点での就職内定率を下げていることが原因である。短大の教育学系受験生はそういう事情をよく知っているから受験競争率が高くなっている。
 短大卒業後の進路として就職とは別に最近特に広がってきているのが、四年制大学への編入学や短大専攻科への進学である。大学への編入学は十年前に比べて倍増している。三年次編入した短大卒業生が一年次からの在学生を抑えて卒業式で総代として答辞を読んだという例もよく聞かれる。短大は二年間の学園生活の中で人文、家政、教育を問わず、第一段階の高等教育修了の資格に到達させるため、かなりハードなカリキュラムを組んでおり、その授業についていく訓練がまじめな学習態度となって定着するからだといえる。
 高校卒業時にまだはっきりとした目的意識もなく、なんとなく四年制大学へ入学した学生がその後、学部学科とのミスマッチを嘆き、退学したりする例も聞かれる。このため、まず短大に入り、二年間の学習の中で本当に自分の好きな学問の対象領域を見極めて編入したり、就職するなど、さまざまな進路に進むことを勧める議論が最近盛んであり、「短大ファーストステージ」論という言葉もすっかり定着した観がある。教育面の実績を買われて著名な四年制大学との間で編入学の協定を結んでいる短大も多い。




記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞