こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2002年4月23日号二ュース >> VIEW

記事2002年4月23日 号 (5面) 
センター試験定着した平成14年私大入試
都心の有名校へ回帰
センター試験利用者の伸び大

 私立大学の平成十四年入試は大都市の有名校への回帰が進んだ。大学入試センター試験の利用はすでに私立大学入試でも定着し、私大受験生もセンター試験はほぼ一〇〇%受ける状況となった。一般入試の学力試験は五校も併願すると疲れるが、センター試験受験者が私大のセンター試験枠で受験する場合は出願さえしておけば合否通知がくるのを待てばよい。私大センター試験枠は定員の一割程度に抑えているため、かなり難しいが「合格すればもうけもの」という出願が次第に増え、その対象に大都市の有名校が選ばれるというわけである。特にセンター試験の日程が今春は十九日、二十日と遅かったため、自己採点に一週間かけて出願校を選ぶころには私大の出願締め切りが追っており「とにかく出願しておこう」ということになるのが例年の風潮である。
 代々木ゼミナールが二月二十二日現在でまとめた平成十四年の私大出願状況(集計校数二百五十大学)によると、募集定員に対して一二・二倍の競争率となり、受験者数の昨年比指数は一〇五・五%である。これを試験方式で分けると、通常の一般入試一〇二・七%、センター試験利用入試一一七・八%となり、センター試験利用者が総受験者数の二割を超えるほどになった。センター試験利用入試には駒澤、成城など今春の新規導入校の分も含まれているので、それを除外して継続分だけでみても一〇三・三%で一般入試より伸びが大きい。昨年の実受験者数は現役浪人含めて八八・一万人だったが、今年は八八・九万人と五%増が予想され、しばらく続いた私立大学出願者の減少傾向はここ二年続けてひと休みといったところである。
 この数値を地域別に分類すると、関東、中部、近畿といった大都市圏で昨年より増えているのに、北海道・東北、中四国といった地方では逆に減少している。また大都市圏の中でも例えば関東では千葉県といった周辺部が減少した。
 個別大学の出願状況をみると、ここ何年か下がり続けていた有名大学に人気が戻っている。それが前述したような大都市への回帰現象となって現れているわけだが、有名大学側もただ手をこまねいて待っていたわけではなく、人気の復活を促すような目玉づくりに取り組んできた結果といえる。各大学が二十一世紀のグランドデザイン構想づくりに取り組んできたのがここにきて実施時期に入った。ちょうどバブルがはじけて地価が下がり、金利も安くなったため、都心におけるキャンパス再開発が盛んになり、いまハコモノがどんどんつくられている。工場等制限法は一年以内に緩和され、大学校地面積や不動産自己所有率の規制が緩くなると予想される情勢である。昭和三十〜四十年代に一時流行した都心から周辺部への分散は失敗に終わり、逆に都心回帰して都市型大学としての勝負をかけようという意気込みがここにきてくっきりしてきた。青山学院は厚木から淵野辺へ新日鉄の研究所跡地を買い取り移転し、駅から近い新キャンパスへ。明治は駿河台再開発、法政はボアソナードタワー建設、芝浦工業は田町から豊洲への移転拡大、東洋は白山再開発、日本は理工学部一号館の建て替え高層化、明治学院は白金キャンパス再開発、立教、早稲田も建て替え、日本女子は百年館建築、星薬科は新館建設、立正は経済・経営と新設の心理の三学部については一、二年生で熊谷キャンパスへ行かなくても大崎キャンパスで四年間過ごせるようにした。東京電機も工学部が増えたのは千葉ニュータウンと神田のキャンパスを今年から選択できるようにしたことが響いているとみられる。東京の有名校はほとんど軒並み増えている。例外はあるが、これは昨年増え過ぎた反動によるものとみられる。

法・政治系の人気上昇

 出願者数が増えているのは、関西では関関同立龍甲産近、名古屋では南山、愛知、九州では福岡、西南学院と有名校が多い。
 一方、募集停止もこれまでは工学部を廃止して理工学部などへ改組するためだったが、最近は一部学部・学科だけにせよ、廃止するだけで改組の新学部・学科を伴わないという例も千葉や九州など周辺部で現れるようになった。そういう厳しい一面が今年の私立大学入試では見られる。
 学部・学科系統別の人気度を見よう。出願総数では簡単に受けられ真剣味が足りないセンター試験利用入試も含まれて膨らんでいるので、大学側は安心しがちだが、センター試験利用入試を除外した一般入試だけの学部学科系統別出願状況をみると、のんびり構えてはいられないという現状がかなりはっきり浮き彫りになってくる。
 法・政治系の人気が上がっている。実務向きの法科大学院(ロースクール)が平成十六年からスタートし、それが大学のステータスにつながるという見方もあることから、私立大学でも数の多かった法学部の定員を絞って法科大学院を設置する動きがあり、いま法学部に入っておけば卒業時にはロースクール入学が間に合うことになると、受験生から先物を買われた感じである。「政治・行政」も難化が予想される「法学」からの流入と不況時の公務員志向で増えた。

 IT関連で人気のあった「情報」は、工学系でハード重視の「電気電子情報」が減って、学際・総合系で文理融合型、ソフト重視の「情報」に流れたとみられている。ひところ流行した経済系の「経営情報」、社会学系の「社会福祉」、学際・総合系の「国際関係」などは減っている。当時新設の小規模大学で盛んにつくられたのが、やや過剰感をもたらしたのと、受験生の間に老舗の有名ブランド志向が台頭してきたことによるものとみられている。
 人文科学系では女子に人気の「心理学」は相変わらず倍率は高いが、募集定員を増やした上に受験者が昨年比九三%に減ったことも影響して倍率は一七・六倍↓一三・三倍へと落ちたのが目立つ。「人間・コミュニケーション」は好調だが、これはまだ全国的に定員数が少ないため。「教育学」は国立大学では「トップ30」にみられる研究志向の高まりによって冷遇される風潮の中で、三十人学級編成の政策が教員就職の機会を少し回復させるのではないかとの希望を持った受験生が私学を目指したという影響もあり増えている。
 家政学系の「児童」も人文系の「教育学」と同じ傾向がみられる。家政学系で最も伝統的な「食物」は手堅い。実技系(音楽・美術・体育)の「体育」はオリンピックがある年には増えるというジンクス通り。
 医療・保健系では「医学」「薬学」が好調で競争率も高いが、「歯学」「看護学」は減った。農学系の「獣医学」も「医学」と同様の傾向である。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞