こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2002年4月13日号二ュース >> VIEW

記事2002年4月13日 号 (3面) 
中央教育審議会の審議動向
着々と振興計画など討議
【基本問題部会】

教員養成、柔軟な学校システム
私学関係討議聞かれず

 中央教育審議会は三月二十九日、東京都内のホテルで第四回基本問題部会を開き、「教育振興基本計画」の柱立てと、教育の目標を達成するために総合的・計画的に実施すべき施策のうち、「優れた教員の養成・確保」「柔軟な学校システム」の政策目標、具体的施策を討議した。
 このうち「教育振興基本計画」の柱立てに関しては、前回とは異なる、鳥居会長が中心となりまとめた「試案」が鳥居会長によって説明された。
 試案は、(1)「教育の現状と歴史的背景」(教育の危機危機に瀕する国家、国家の発展段階と教育制度、現行教育制度の再検討)(2)「基本計画の基本理念と必要性」(教育とは何かを改めて問う、教育に必要なものを改めて問う、今改めて基本計画を要する歴史的状況)(3)「教育振興基本計画でとりあげるべき事項」(教育の基本的システムの再構築、教育の改善・向上、教育資材装置、施設の充実、先端化、教育予算)との構成。この試案は、私立学校を含めた学校制度や社会的責務(社会的付託)、設置認可システム、地方分権システム等を挙げているのが特徴。しかし時間も限られていたことから私立学校の位置付けなどに関する意見はほとんど聞かれなかった。四月九日の次回会合では、より重点化を図った「柱立て」が再び提案される見通し。また次回会合では、専門的な知見を持った人を加えたプロジェクトチームを基本問題部会内に設置することが提案される予定。
 委員からは、教育振興基本計画の柱立てや政策目標等に関しては「考えられることをすべてやればいいのか。どちらが効率的か。それをはっきりさせないといけない」「既存のものをどう柱立てにしていくかが重要」「公共への積極的関心、政治、司法との触れ合いを計画の中でどう出すか考えるべきだ」「幼保の一元化は取り上げられるのか」などの意見が出されたほか、公立学校でなかなか広がらない学校評議員制度や優秀な教員の確保策などが討議された。

【大学改革連絡会】

高等教育の展望と政策
グランドデザイン基に意見交換

 中央教育審議会大学分科会と科学技術・学術審議会学術分科会合同の大学改革連絡会は四月三日、東京・霞が関の文部科学省別館で第六回連絡会を開催した。文科省が「今後の高等教育の展望および高等教育政策について(グランドデザイン)案」を提示。これに基づき委員間で意見交換を行った。
 「グランドデザイン」では、今後の高等教育の基本的在り方について(1)国際競争力のある高等教育機関としての世界水準の教育研究の展開(2)各高等教育機関が個性輝く機関として多様な教育研究を展開(3)多様な学習ニーズへの対応(4)社会・経済の発展に対する積極的貢献の四点を指摘。また、▽少子化等の社会動向を踏まえた高等教育の全体規模、地域配置、学問分野のバランス、学生の多様化についての展望▽短期大学、高等専門学校・専門学校を含めた高等教育機関の在り方などを、高等教育の発展の方向の検討課題としている。今後の高等教育政策の在り方については、経営困難に陥った私学への対応の在り方など高等教育の質の維持向上のための新たなシステムの構築、高等教育に対する公的支援の充実など高等教育財政の在り方などが検討課題に挙げられている。
 委員からはこれらを踏まえ「日本の大学は四年制大学一律であったり、教養教育と専門教育を同時に行っているところに問題があるのではないか」「人文・社会系に限って言えば、優秀な学生は欧米の大学へ行く傾向がある」などと日本の大学の現状を危惧する指摘があった。また、大学院重点化の影響をめぐって「重点化で大学院でも学生の学力低下が起こっている」「大学院重点化が何をもたらしたのか、効果とデメリットを検証する必要がある」といった指摘が出された。
 大学教員の処遇をめぐっても「一律に定年制を設けるというのもどうか。見直すべき時期に来ている。もっとフレキシブルに行っていい」「年俸制にするなどして、緊張感をいかに保つかが重要だ」などの意見が出された。

【大学分科会大学院部会】

専門職大学院の学位
社会的・国際的通用性修業年限考慮

 大学院における高度専門職業人養成について討議してきた、中央教育審議会大学分科会大学院部会は、三月十八日の第八回部会で骨子案を固め、新たに「専門職大学院(仮称)」の創設を提言した。法令上、「高度で専門的な職業能力を有する人材の養成」を設置目的として明確に位置付け、修了要件も従来の大学院とは異なる。修了者には社会的・国際的通用性や修業年限を考慮して、適切な名称の学位を付与するとされた。その学位として骨子案では四つの案が提示されたが、各案の概要は次の通り。
 【案の一】原則として「○○博士」とするが、国際的通用性や修業年限などを考慮して、適切と認められる場合には「○○博士」といったように、新たな専門職学位を授与する。
 この場合、専攻分野ごとに専門職学位として使用できる名称を法令などに限定列挙する。
 【案の二】既存の学位名称に専門職学位であることを示す表現を付記する。例えば、原則として「実務修士(○○)」または「専門職修士(○○)」とするが、国際的通用性や修業年限などを考慮して、適切と認められる場合には「実務博士(○○)」または「専門職博士(○○)」を授与する。
 【案の三】原則として修士の学位とするが、国際的通用性や修業年限などを考慮して、適切と認められる場合には博士の学位を授与する。
 この場合、専攻分野については「修士(○○)」「博士(○○)」の形で、養成される高度な専門職業能力にふさわしい分野名称を学位に付記する。
 【案の四】専門職学位として新たな名称の学位(例えば碩士など)を創設する。

【法科大学院部会】

中間報告案設置基準等
標準修業年限3年
専任教員に実務家教員を

 中央教育審議会の法科大学院部会は四月二日、東京・霞が関の文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)で第十三回部会を開き、法科大学院の設置基準等についての中間報告案を審議した。中間報告案は昨年十二月に同部会が公表した「論点を反映した骨子」を加除訂正したもの。法科大学院は専門職大学院(仮称)の一つとして位置付けられ、標準修業年限は三年。部会では記述の加除訂正部分を中心に意見交換が行われたが、内容面で特に大きな異論はなく、次回部会で成案が取りまとめられる予定。
 中間報告案では法科大学院は法曹養成に特化した教育を行うものと位置付けた。研究後継者養成を目的とする課程(博士後期課程)に進学し、研究者を目指すことも想定されることから、法科大学院の修了者について受け入れの規定を整備することを求めている。教員組織については最低限必要な専任教員数は十二人。専任教員のうち相当数を実務家教員とし、相当数はおおむね二割程度以上とした。
 教育内容・方法は法曹として備えるべき資質・能力を育成するために、法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分をも併せて実施。実務との架橋を強く意識した教育を行う。教育方法については少人数教育が基本で、事例研究、討論、調査、現場実習そのほかの適切な方法で授業を行うものとし、双方向的・多方向的で密度の濃いものとする。通信制法科大学院については、通常の法科大学院発足後の教育の展開状況を見つつ、その在り方について検討していく。
 また、法科大学院の第三者評価(適格認定)の在り方については、大学院評価制度全体の枠組みの中で位置づけられることが基本となるが、この結果が新司法試験の受験資格の付与とも連動することを踏まえながら、制度設計を行う必要があるとした。
 資力の十分でない人が経済的理由から法科大学院に入学することが困難とならないよう、奨学金、教育ローン、授業料免除制度など各種支援制度を充実する方策は今後、検討。長期履修学生についても各法科大学院で対応し、受け入れていくことを求めている。
 入試では多様なバックグラウンドを持つ人を多く法曹に受け入れるため、社会人にも広く門戸を開放していく。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞