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記事2002年3月3日 号 (5面)
中川節子教授 | 二十一世紀を迎えて、IT(情報技術)を取り入れた教育活動や学校事務管理が進展しているが、ネットワーク環境の広がりとともにシステム全体の管理体制をどのように行っていくのかが大きな課題となっている。金城学院大学(戸田安士学長、名古屋市守山区)では昨年、全学のネットワーク強化を機にネットワークの状態やトラブルを自動的に監視するシステムを導入して管理の合理化に成功している。本紙では同大学の情報教育推進とメディアネットワーク構築を担当するマルチメディアセンター長の中川節子教授に、同大学の教育とネットワークシステムについてうかがった。
情報の知識と技術向上図る 基礎から実践的なビジネスコンピューティング
【情報教育の現状】
学校法人金城学院は幼稚園と中学から大学までを擁する総合学園ですが、これまで中学、高校も含めて情報教育を重視してきました。 大学においても企業活動に貢献できる人材を育成していくという目的からも情報教育の重要性はより一層増してきています。最近ではインターネットを活用した授業も行われるようになっていますし、現実の問題としてインターネットが使いこなせないと就職にも差し障るという状況です。 本学では基礎教育として「総合教育」と「情報」と「語学」という三つの科目に重点を置いていますが、コンピュータに関する教科は十三年度までは選択科目でした。 今年四月からは情報の知識と技術レベルの均質化と一層の向上を図るために全学のカリキュラムを一新して、コンピュータの基礎となる入門科目「コンピュータ入門(1)」と「コンピュータ入門(2)」を全学で必修科目にします。 前期ではタッチタイピングから始まってワープロやインターネット、情報の基礎知識や情報倫理などを含めて学び、後期はより実践的なビジネスコンピューティング、例えばエクセルやパワーポイントを使った演習を行います。 ただ、全学で必修科目とするには問題がないわけではありません。入学生の情報に関する知識を調べてみると、高校で情報の授業を受けた学生は、エクセルなどもかなり使いこなしている一方で、大学に入るまでマウスを触ったこともない学生もいるのが現状です。
基礎的なスキルから 高度な情報教育へ
本学で昨年度に行った調査では、高校で情報の授業を受けなかった学生が五六%もいました。そうしたなかで、大学を卒業するまでにすべての学生がしっかりとした情報の知識とスキルを身につけてほしいということが新しいカリキュラムの目標です。 どのような学部、学科に在籍し、何を目標として学習を行っているかにかかわらず、また何らかの資格取得を目標とするとしても、このような基礎的なスキルを身につけておくことが非常に大切であると考えています。 さらに、二年次以降はアドバンストコースを設けます。このコースは選択科目ですが、グラフィックス、マルチメディア、インターネットプログラミング、データベースなど、少し専門的な部分も含めて授業が組まれています。その中にはホームページ作成などの授業もあります。 そのほかに五年前にできた現代文化学部の情報文化学科では、情報社会における新しい文化の創造をめざし、専門的な授業(JAVAプログラミング、ヴァーチャルリアリティ技術、コンピュータ映像など)を行っています。 また、十四年度からスタートする生活環境学部では、生活環境情報、環境デザイン、食環境栄養の三学科を置くことになりました。生活環境情報学科では、家族福祉、消費保護、情報活用を中心に二十一世紀のライフスタイルを学びます。また、情報という名称がつかない語学系やデザイン系の学科でもかなり高度な情報教育が行われています。 全学部で展開される専門的な情報教育をしっかり行えるようマルチメディアセンターは支援を行っています。
【大学の教育理念】
社会で活躍でき 自立した女性育成
金城学院大学は明治二十二年にアメリカ人宣教師であるミセス・ランドルフによって設立された私立金城女学校をルーツとし、百年以上の歴史を持つ伝統ある女子大学です。本学の教育理念は、キリスト教の精神に基づいた豊かな人間性と深い専門知識をバランスよく兼ね備えた女性を育成することにあり、これまで特に力を入れてきたものとして文学部における語学教育と、家政学部における家庭生活教育、現代文化学部における社会と文化の創造に関する教育が挙げられます。 近年は女性が社会で活躍する機会が増え、女性の能力を企業の中で生かすことが必要になってきたことによって女性教育に対する社会の要請も変化しています。古くからの良妻賢母型の女性から、手に職を持ったり、さまざまな資格を取ったりして社会で活躍できる自立した女性を育成するための教育に焦点を当てています。このような教育理念のもと、十四年度から新しく人間科学部が発足します。家政学部は生活環境学部に名称変更を行います。
【自動監視システム導入の背景】
ギガビットの光ファイバー導入 同時に自動監視システムを
どこの大学も同様だと思いますが、本学においても情報関連の機器やネットワークを全学に広げる過程はどうしても逐次的になり、システムの構成がどんどん複雑になってきます。また、本学の地理的条件としてキャンパスが二つのエリアに分かれ、建物も分散しているので、ネットワークの管理は非常に手間と時間がかかっていました。トラブルが発生した場合、まずその場所を特定するのが大変なうえに、復旧にはいちいちその場所まで人が出かけていかなければならないという事態が起こります。 このようなトラブルは活用の内容が高度化し、ネットワークが広がれば広がるほど発生頻度も上昇するので大学としては大変な問題で、なんらかの解決方法を模索する必要がありました。そこで、昨年の八月にギガビットの光ファイバーを導入するのに併せて採用したのがペレグリン システムズのIND(InfraToolsNetworkDiscovery)というネットワーク自動監視システムです。 光ファイバーの導入はこれからの時代を見据えて情報ネットワークのパワーを大幅にアップし、より高度な教育の実践を行うための環境整備として計画されたものですが、大容量の情報が流通し、高度な処理をスムーズに行うためにはトラブルの防止と迅速な対処が不可欠で、ネットワークの管理面もそれに対応した体制の整備が必要です。 本学では以前ネットワーク管理ソフトを導入した経験がありますが、その時代のものは相当の専門知識が必要で、リモートで自動的に監視を行えるような機能もなく、大学の職員レベルでは使いこなせるようなものではありませんでした。 それに比べINDはその装置に内蔵されたソフトウエアがネットワークに接続されているすべての機器の接続状況を自動的に「物理マップ」という目に見える形で表示するうえに、トラフィックの負荷状況やトラブルの個所とその原因をモニター上に自動表示します。この装置であれば、少人数でネットワーク全体を管理することができ、現在、本学のマルチメディアセンターでは、全学の教育系、事務系を含むすべてのネットワーク管理を、一人の管理責任者と四人の助手という態勢で行うことが可能になっています。 先日も工事で学内の一部が停電し、ある研究室でインターネットが使えないというトラブルがありましたが、どこでネットワーク障害が発生しているかはこのシステムを使うと現場に行かなくてもひと目で分かり迅速な対処が可能でした。また、例えば、IPアドレスが重複している場合などもすぐに分かります。四月から始まる新カリキュラムに対応した大容量の情報流通を少人数で管理するには、INDは非常に便利だと思います。また、今後取り組む予定のe―ラーニングを実施する際にも安定した運用ができると思います。
【学内ネットワークシステム】
14年度からコンピュータ教育必修 全学生にメールアカウント
金城学院のネットワークシステムは前述した各学部、学科で行われる授業、演習での使用のみならず、教務事務の処理、管理を網羅するものです。特徴としてはパソコンにマッキントッシュを多く使ってきたことが挙げられます。一九九六年ごろからはウィンドウズも入って、現在ではウィンドウズが六割程度になっていますが、他大学に比べるとそれでもマックが多いと思います。これらを有機的に学内のネットワークに接続するとともにインターネットへの接続も行っています。 インターネットの導入は九四年からで、かなり早い時期に属すると思います。インターネットを使った授業は九五年から始まり、電子メールも希望者にはアドレスを与えるようになりました。十四年度からはコンピュータ教育が全学的に必修となることに伴い、全学生にメールアカウントを与えることになります。現在でもホームページづくりはかなり盛んで、現在、クラブ活動のものなども加えると五百以上のサイトが公開されています。 こうした活動のなかで問題になるのは、著作権や個人情報の扱い方です。本学ではクローズドの部分とオープンなエリアを分け、ガイドラインを作って運用しています。
【今後の課題】
外部へのネットワーク高速化へ
昨年の夏に学内ネットワークはギガビットになり、学内は高速化が実現したのですが、外部へのネットワーク接続はまだ高速化に対応していないので、増速が必要だと考えています。 また、情報基礎教育の内容の面についてですが、単純にこのテーマをワープロで打ってきなさいといっても学生は興味を持ちません。少しテーマを変えて、自分の興味があるテーマをインターネット上で検索しながらレポートを作成したり、それをパワーポイントで発表したりすると、とても身につく学習ができるようになります。インターネットを活用しながら、学生の自発性を引き出し、自在に応用できるような授業を心がけたいと考えています。 |
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