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記事2002年3月13日 号 (2面) 
学生募集活動激化など影響予測
全国大学・短大実務教育協が報告書
国立大学独法化の私大・短大への影響
地域密着型研究行う私学に期待
 「全国大学・短期大学実務教育協会」(和野内崇弘会長=札幌国際大学理事長・学長)はこのほど、国立大学の独立行政法人化が私立大学・短期大学へ与える影響について分析した報告書を公表した。独法化によって私立大学・短大への国庫助成の減額と国立大学の授業料の高騰、学生募集活動の一層の激化などが起こると予測。今回の独法化の目的は「大学発の新産業創出」にあるとし、いまこそ地域密着型の「オンリーワン研究」を行う私学の出番だと結論づけている。
 この報告書は同協会の総合企画委員会(菅野英孝委員長=福島学院理事長)の平成十二・十三年度における調査研究事業として、福永弘之理事(姫路工業大学環境人間学部教授)がまとめた。報告書では独法化が私立大学・短大に与える影響として、第一に国庫助成の減額を指摘。独法化によって国立大学の研究教育条件や授業料が私立大学並みになれば、高等教育に対する公的支出は減額され、ひいては私立大学についても国庫助成の減額が起きると分析。独法化によって国立大学会計の独立採算制と受益者負担は一層強化され、授業料の大幅値上げは避けられないとも予測。国公立大学でも高校への出前講義に出向く大学が増えてきたことなども挙げ、学生確保をめぐり活動が激化するとみている。これは私立大学との格差是正に働き、有利な材料であるとし、授業料の安い国公立大学に受験生が流れるという傾向にも歯止めがかけられるかもしれないとしている。このほか、学生募集活動の激化、定員の超過、寄付金の奪い合いが起きるだろうと分析。学生募集活動については、現在、地方の短大で定員を満たしているところは主として中国からの留学生で占められているケースが多いが、有力国立大学までが中国に事務所を設けて留学生確保に乗り出してくる動きが現在でもあり、地方の短大にとっては脅威であると指摘。また、独法化によって国公立大学も独立採算制に近い形が強いられることになり、定員を超過して学生を入学させる大学も出てくるとしている。民間資金が投入される受託研究についても国立大学と私立大学との間で奪い合いが起きると予測している。
 そのうえで、報告書では、独法化の真のねらいは、教官や研究者の特許公開、企業への技術移転、さらに創業といった「大学発の新産業創出」にある、と指摘。こうなれば基礎研究はないがしろにされ、即効性のある応用研究のみが増えていくとして、地域密着で「オンリーワン研究」を行う私学の役割を評価している。
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