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記事2002年3月13日 号 (3面) 
中央教育審議会の審議動向
専門職大学院創設を提言
中央教育審議会大学分科会の大学院部会は三月一日、東京・霞が関の文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)で第七回部会を開き、大学院における高度専門職業人養成について話し合った。文科省は、大学院において高度で専門的な職業能力を持つ人材を養成していくため、現行の大学院制度を見直し、新たに「専門職学位課程(仮称)」を創設、同課程を置く大学院を「専門職大学院(同)」と称するとの論点を踏まえた骨子案を示した。今後、審議を重ね、今年六月には部会答申案、答申案をそれぞれ取りまとめ、同月中には答申を公表する予定とのスケジュールも明らかにされた。

大学院における高度専門職業人養成
文科省が骨子案示す

【中教審大学院部会】

 部会ではまず文科省が骨子案を説明。これによると「専門職大学院」は国際的にも社会の各分野においても通用する高度で専門的な職業能力を持った人材の養成が求められる専攻分野で設置が期待されるとし、特に専攻分野は限定しないとしている。修了者の学位は(1)修業年限に応じて修士、博士の学位を授与する。専攻分野については「修士(○○)」の形で学位に付記(2)修業年限に応じて「○○修士」「○○博士」といった新たな専門職学位を授与するの二案を提示。また、各専攻分野ごとに第三者評価機関による継続的な評価(アクレディテーション)を受けることを義務づける、とした。
 委員からは「専門職大学院」の組織形態をめぐって「大学から独立した組織でないと運営が難しいのではないか」「専門職大学院を置く大学院大学も考えられるのではないか」といった意見が出た。産業界の委員は「社会的価値が認められる専門職大学院なら、業界挙げて支援することもできる。大学だけの問題でなく、産業社会と協力して育てていくことが重要だ」と指摘した。
 骨子案では、専攻分野を限定しないとしているが、「専門職大学院はむしろ分野を限定した方がいい。既存の大学院でできない分野を開拓すべきだ」といった意見や、「既に専門大学院は存在しているのだから、大学院全体の在り方を議論して、一年くらいかけて考えるべきだ」との指摘があった。
 第三者評価に関連しては「国家資格と関連する専攻分野については、アクレディテーションのシステムをかなり厳しくすべきではないか」「職業人養成を行うのだから、その関連する職業分野の関係者を含めた第三者評価を義務づけるべきだ」との提言があった。
 このほか学位については、社会的通用性を考え、既存の学位名称でよいとする意見や、専門職大学院は研究指導を行わないのだから、研究者としての能力を証明する「博士」を授与すべきでないなどとの意見があった。また、専門職大学院から博士課程への進学も可能とする制度設計を考えるべきだとの指摘も出た。

修了要件、教員組織など
専門職大学院第三者評価は義務づけの方向

【専門職大学院と現行大学院との比較】

 中央教育審議会大学分科会の大学院部会では現在、大学院における高度専門職業人養成について審議しているが、文部科学省は高度で専門的な職業能力を持つ人材の養成に特化した実践的な教育を行う大学院として「専門職大学院(仮称)」の創設を提言した骨子案を発表した。現行の大学院修士課程、専門大学院と「専門職大学院」とは修了要件、教員組織などでどう異なるのか。また、法科大学院部会では、法科大学院の創設が審議されているが、これとはどう異なるのか。項目ごとにそれぞれの大学院の相違点をまとめてみた。なお、法科大学院は「専門職大学院」の一類型である。

○大学院修士課程
 ▽修業年限=標準二年▽修了要件=修業年限以上の在学、三十単位以上の修得、研究指導、修士論文の審査▽教員組織=教育研究上、必要な教員を配置。一定数以上の研究指導教員を配置。研究指導教員一人当たりの学生収容定員の上限を分野ごとに規定(法学系は二十人以下)。実務家教員の必置規定はなし▽研究指導=実施が必須▽学位=修士(○○)

○専門大学院
 ▽修業年限=標準二年▽修了要件=修業年限以上の在学、三十単位以上の修得、研究指導、特定課題研究成果の審査▽教員組織=教育研究上必要な教員を配置。通常の修士課程の二倍の研究指導教員を配置。通常の修士課程の研究指導教員一人当たりの学生収容定員を二分の一として算出。専任教員中に実務家教員を相当数配置▽具体的な授業方法=事例研究、討論、現地調査その他の適切な方法による授業▽研究指導=実施が必須▽第三者評価=学外者による評価を義務づけ▽学位=修士(○○)

○専門職大学院(仮称)
 ▽修業年限=一律の修業年限は定めない(分野ごとに規定)▽修了要件=修業年限以上の在学。一定単位以上(分野ごとに規定)の修得▽教員組織=高度専門職業教育に関する指導能力が認められる教員を配置。研究指導教員の配置は要しない。専任教員一人あたりの学生収容定員の上限を規定(分野ごと)。専任教員中に実務家教員を相当数配置▽具体的な授業方法=事例研究、討論、現地調査その他の適切な方法による授業▽研究指導=必須としない▽第三者評価=継続的な第三者評価(アクレディテーション)を義務づけ▽学位=分野ごとの修業年限に応じ授与。案の一…○○修士、○○博士、案の二…修士(○○)、博士(○○)

○法科大学院
 ▽修業年限=一律の修業年限は定めない(標準三年、法学既習者は一年以内の短縮可能)▽修了要件=修業年限以上の在学。一定単位以上(九十三単位以上)の修得▽教員組織=高度の教育上の指導能力が認められる教員を配置。研究指導教員の配置を要しない。専任教員一人あたりの学生収容定員の上限を規定(十五人以下)。専任教員中に実務家教員を相当数配置(二割以上)▽具体的な授業方法=事例研究、討論、現地調査その他の適切な方法による授業(+現場実習)。少人数教育を基本▽研究指導=必須としない▽第三者評価=継続的な第三者評価(アクレディテーション)を義務づけ▽学位=国際的通用性も勘案しつつ、既存の修士・博士とは別の専門職学位を授与


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