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記事2002年2月3日 号 (4面) 
私大通信教育 現状と特色
全国25万人が大学院、大学、短大で学習
大学通信教育は生涯を通じて大学で学べるシステムとして五十年以上の実績があるが、平成十一年四月からは大学院でも通信教育がスタート、生涯学習ニーズの高まりに伴って、より社会に開かれた大学として期待が集まっている。文部科学省のまとめた「学校基本調査報告書」によると、平成十三年度には全国で約二十五万人が大学院、大学、短期大学の通信教育で学習している。

大学院でもスタート
生涯学べる教育システム

 近年の急速なマルチメディアの発達で、テレビ会議式の遠隔授業やインターネットを活用した授業などを積極的に採り入れる大学も増えてきており、大学通信教育は、大学で学びたいが通学は不可能だという人のための大学教育から、学ぼうとする人々の期待にいつでも応えることができる大学教育としての性格が色濃くなってきた。また、近年、社会の変化はきわめて早く、かつて大学で学んだが改めて学び直す、職業上の必要に迫られて新たにほかの専門分野を学ぶ、といった多様な学習ニーズが生じており、大学通信教育への期待はさらに高まっている。
 十三年度現在で、通信教育を行っている大学は、大学院七校、学部二十三校、短期大学十校。大学通信教育設置基準では(1)印刷教材等による授業(2)放送授業(3)面接授業(4)メディアを利用して行う授業の四つを学習方法として規定している。
 (1)は大学通信教育の中心的な学習方法で、大学指定のテキストを学習し、与えられた課題に沿って、学習報告書(リポート)を作成して添削指導と評価を受ける。リポートは一回(一単位)が二千字程度の論文形式。四単位の科目ならば学習の進度に応じて一〜四回のリポートを提出する。こうした印刷教材による授業だけでは不十分な科目や学習内容もあることから、面接授業(スクーリング)や放送授業が行われている。卒業のためには大学で三十単位以上、短大で十五単位以上を面接授業で修得しなければならない。これは卒業所要単位の約四分の一に相当する。面接授業には、昼間・夜間・通年の三種類あり、このほか地方都市で集中講義を実施したり、土・日曜日に開講する大学・短期大学もある。
 メディアを利用して行う授業としてはこれまでテレビ会議式の遠隔授業が認められていたが、インターネットなどの急速な発達・普及を受けて、これらを利用した授業も通信教育の授業形態として認められることになった。電子メールによる質問・相談の受け付け・回答を行っているところもある。
 次に主な大学の通信教育課程(部)の概要と特色を見ていくこととしたい。

【大学通信教育・各校の特色】

●法政大学
 法政大学通信教育部は昭和二十二年に創設された日本で最初の大学通信教育課程だ。開設学部は法学部(法律学科)、文学部(日本文学科、史学科、地理学科)、経済学部(経済学科、商業学科)。受験のチャンスは年十回あり、単位修得のための試験もほぼ毎月、全国で行っている。スクーリングは学生個々の条件に合わせて受講できるよう、夏期、冬期、春・秋期、地方、特別、通年(昼・夜)と豊富な形態のスクーリングが用意されている。学費は「望むものだれもが学べるように」という建学の精神を受け継ぎ、可能な限り低く抑えている。全国の大学通信教育課程の中で唯一、文学部に地理学科を設けているのも特徴の一つ。地理学科では測量士補の資格取得も可能だ。

●近畿大学・近畿大学短期大学部
 近畿大学通信教育部は昭和三十二年に開設。現在設置されている学科およびコースは、法学部法律学科と短期大学部商経科、図書館司書コース、学校図書館司書教諭コース。いずれも内容の充実と経済的負担の少ないことで人気がある。法学部法律学科では憲法、民法、商法、刑法などの六法科目を中心に法律学体系の基礎理論を学び、さまざまな社会現象を把握する広い視野と法的な思考能力を身につけることを目的としている。一方、短期大学部商経科は、伝統的な簿記や会計学のほかに、証券論、不動産論、中小企業論など商業、経済、経営の三分野からアプローチ。現代社会が必要とする実学重視のカリキュラムが特徴だ。

●東洋大学
 東洋大学通信教育部(文学部日本文学文化学科、法学部法律学科)は東京・文京区にキャンパスがある利便性と、連休、土曜、日曜、夏期、冬期、地方の各スクーリングのほか、通学生と一緒に学ぶ通年スクーリング開講によって充実した学習環境を提供している。通年スクーリングは、ユニークな新教育システム「TES」(TriangleEducationalSystem)の導入によるもの。現代の大学生の多様化するキャンパスライフに応じて一部・二部開講科目の聴講を認めている。修得単位は合計三十単位まで卒業単位に加算される。

●明星大学・明星大学大学院
 明星大学通信教育部は心理・教育学科(教育学専修)を開設。教育学に加えて心理学を併せて学べるよう配慮し、子供たちを心理面からも支えられる教員の育成を目指している。レポートの提出・添削が通信教育のメーンだが、その指導には通学課程と同じ教授陣が指導に当たっている。スクーリングを重視しており、全体の四分の一はスクーリングによる授業。
 通信制の大学院、人文学研究科教育学専攻修士課程は、現職教員や教育関係の仕事に携わっている社会人の学習ニーズに応え、実践的課題の解決に向けての知識や技術の教育、自立的な研究能力の育成に、その役割を果たしている。

●大阪学院大学
 大阪学院大学通信教育部(流通科学部流通科学科)は、経営・会計の専門知識を実践能力として習得できることを大きな特色とし、専攻科目の比率を高めたカリキュラムでその独自性を生かしてきた。昭和四十五年の開設時から三十年の歴史の中で、公認会計士・税理士・国税専門官などを輩出し、高度な学識と実践能力を養うことができる専門性重視の姿勢に高い評価が定着している。また、それぞれの学習ニーズや教養レベルに対応するために、基礎的な内容から事例に基づいた実践的な内容の科目まで、幅広いカリキュラムを設け、自由度の高い学習が行えるようにしている。

●産能大学・産能短期大学
 産能大学通信教育課程(経営情報学部経営情報学科)は社会人の学習ニーズの拡大に対応し、今年四月から新たに産業心理コースを開設する。産能短期大学能率科も同様に、英文会計実務コース、ライフ・キャリアデザインコースを設ける。産業心理コースは経営に関する分野に加えて、組織で働く人の理解を心理学的なアプローチから学ぶとともに、カウンセリングの理論や手法について学習する。英文会計実務コースは国際会計のスキルを持った人材育成を目的とした東京商工会議所主催の国際会計検定の高スコアを目指す。ライフ・キャリアデザインコースは社会人を対象に、ライフ・キャリアプランの作成を行う。

●聖徳大学・聖徳大学短期大学部・聖徳大学大学院
 聖徳大学通信教育部人文学部(児童学科、日本文化学科、英米文化学科)では願書受け付けを随時行っており、いつでも都合のよい時に入学して、学習を始めることができる。各学科ともさまざまな免許・資格を取得することができる。短期大学部通信教育部保育科は正科生の場合、三年間で幼稚園教諭二種免許状、保育士資格などを取得することが可能。通信制大学院の大学院児童学研究科は、児童教育学、児童発達学の領域を中心に、豊かな専門知識と現場での実践的指導力を養う。選択科目を多くし、個々の研究テーマに応じて自由に選択できるようになっている。

●大阪芸術大学短期大学部
 大阪芸術大学短期大学部通信教育部(保育学科、デザイン美術学科、広報学科)は常に学生の立場に立った学習システムを組んでいる。担当の教員が手掛けたテキスト、一人ひとりへの行き届いた個別指導など、日本で初めて認可された短大通信教育ならではの充実した学習システムが大きな特徴だ。
 また、併設の大阪芸術大学通信教育部では、芸術作品の完成を最終目標として、在宅学習とスクーリングの両面から理論と技術を学ぶ。インターネットを利用した学習・情報支援も行っており、事務室からのお知らせ、学生メールの利用、音楽学科では一部科目の報告課題の提出・添削などが可能となっている。

●近畿大学豊岡短期大学
 昭和四十四年開設の近畿大学豊岡短期大学は、開かれた通信教育をモットーに「人に愛される人、信頼される人、尊敬される人」の育成を教学の方針に掲げ、二万人を超える卒業生は各地で活躍している。学科は幼児教育学科、生活情報・福祉学科の二学科。幼児教育学科では乳幼児期の重要性と情報化・高齢化といった時代の要請に応えるため、理論と実践とを兼ね備えた、豊かな資質と高度の指導性を持つ人材の育成に力を入れている。生活情報・福祉学科では衣食住を中心としたカリキュラムを充実させるとともに、情報リテラシー教育にも力を入れ、高齢化・福祉社会を支える人材を育成している。


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