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記事2002年2月3日 号 (3面) 
変革促す提案次々と
中央教育審議会の審議動向
 中央教育審議会は発足して約一年。現在、次々と総会、分科会、部会等を開催している。最近の総会等から審議の概要を報告する。(編集部)

【第13回総会】

新時代にふさわしい基本法討議
私学の扱い再検討の指摘も

 中央教育審議会(会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)は、一月二十二日、東京都内の会館で開いた第十三回総会で、教育基本法に関する自由討議を行った。自由討議に先立って中教審事務局(文部科学省)から教育基本法制定の経緯や諸外国の教育基本法の概要などが報告された。
 教育基本法をめぐる討議では、昭和二十二年の制定以降、五十年を超える社会状況の変化の中で、現行法に付け加える必要が出てきたものを検討すべきだ、といった同法の持つ制度面の見直しに重点を置く意見が目立った。
 現行法に不足しているものに関しては、家庭教育に関する視点やパブリック(公共)の概念、国際化などが指摘されたが、「私立学校の扱いをどうするかも避けて通れない」といった意見も聞かれた。
 一方、「国際化、国際貢献といった考えは昭和二十、二十一年にはなかった。憲法を含めて見直すべきだ」といった意見や、戦争の反省から教育基本法が平和主義を重視したものの、積極的に平和をつくり出すことをしてこなかったこと、全体主義の反省から個人主義を重視したものの、そのためきちんとした指導ができなかったことなどを指摘し、同法が戦後何を生んだか考えるべきだ、あるいは「今という時代認識の踏み固めを真剣に考えるべきだ。教育は市場主義、競争主義だけではない。精神的に持ち堪えるものにしないと、時代の表層的なものになってしまう」など理念の再構築の重要性を指摘する意見も聞かれた。さらに「教育基本法の理念はすばらしい。教育基本法を見直すべきだといった世論調査があるのか」との指摘もあった。
 このほか一九八九年にフランスで制定された「教育基本法」(通称「ジョスパン法」)に見直しのヒントがあるといった意見も聞かれた。

【基本問題部会設置等を決定】

本格的審議近く開始
基本法、振興基本計画検討委員16人、年内にも答申へ

 一月二十二日の中央教育審議会第十三回総会では、新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方や新たに策定する教育振興基本計画を専門的に検討する「基本問題部会」を総会の下に設置することと十六人の委員を決定した。
 近く初会合が開かれ、しばらくの間は部会での検討が続くが、部会での検討状況を随時、総会に報告、それに基づき総会で審議、その結果を部会での検討に反映させる。
 教育基本法の見直しと教育振興基本計画の策定は、昨年十一月、遠山敦子文部科学大臣から諮問されたもので、一年後をめどに答申がまとめられる予定。一月二十二日の総会を含めて三回、教育基本法や教育振興基本計画に関する自由討議を行っているが、今後は基本問題部会で本格的な検討が始まる。
 十一月の諮問では、教育振興基本計画に関しては、教育改革の基本的方向等や、政府が総合的・計画的に実施すべき施策の具体的政策目標や主要な施策、必要な教育投資の在り方などの検討を、また教育基本法に関しては、教育の基本理念、教育の基本原則、家庭、地域社会等の教育に対する役割等の検討を求めた。

 基本問題部会委員は次の通り。

(委員)
▽鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問=中教審会長
▽木村孟・大学評価・学位授与機構長=同副会長
▽茂木友三郎・キッコーマン株式会社代表取締役社長=同副会長
▽梶田叡一・京都ノートルダム女子大学長
▽國分正明・日本芸術文化振興会理事長
▽佐藤幸治・近畿大学法学部教授
▽高木剛・ゼンセン同盟会長
▽永井多惠子・世田谷文化生活情報センター館長
▽中嶋嶺雄・アジア太平洋大学交流機構(UMAP)国際事務総長
▽森隆夫・お茶の水女子大学名誉教授
▽山本恒夫・大学評価・学位授与機構評価研究部教授

(臨時委員)
▽石弘光・一橋大学長
▽市川昭午・国立学校財務センター名誉教授
▽黒田玲子・東京大学教授
▽鶴田卓彦・株式会社日本経済新聞社代表取締役社長
▽西室泰三・株式会社東芝代表取締役会長

【大学分科会】

大学に社会人受け入れ
長期履修生制度導入、通信制博士課程制度化も

 大学などにおける社会人の受け入れ方策について審議してきた中央教育審議会の大学分科会は一月二十一日、答申案をほぼ固めた。学生が個人の事情に応じて修業年限を超えて履修し、学位を取得する長期履修学生(パートタイム学生)制度の積極的導入を提言。専門大学院一年制コース、通信制博士課程の制度化も盛り込んだ。
 海外では個人の事情に応じて修業年限を超えて履修を行い、学位を取得する正規の学生が制度的に存在しており、平成十二年の大学審議会答申の中でもこのような制度の導入について検討が求められていた。
 答申案では職業などに従事しながら大学などで学ぶことを希望する人々の学習機会を一層拡大する観点から、個人の事情に応じて修業年限を超えて履修を行い、学位を取得できる仕組みを各大学が導入できるようにすべきだと提言した。長期履修学生の受け入れが想定されているのは、大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校のすべての高等教育機関。大学については高等教育に対する多様な学習ニーズに応えるため、短期大学については地域に密着して生涯学習機会を幅広く提供することが期待されていると、受け入れ推進を理由づけしている。さらに短期大学については、社会人を含めた地域の学習需要に応える、多様なコースを設定した総合的な学科などを設け、長期履修学生を受け入れることも一つの方法だと例示している。
 長期履修学生が在学できる最長年限は各大学で学則などで定め、その範囲内で学生の希望を考慮しながら定めることが適当だとした。年間修得単位数も各大学が定める上限の範囲内で学生が毎年自由に登録できるようにすべきだと提言。設置基準の適用上や私学助成の算定上の収容定員の取り扱いについては、長期履修学生を正規の学生として受け入れる以上、定員内の扱いとすべきだが、通常の修業年限在学する学生よりも一年間または一学期間の修得単位数が少ない学生数の算定方法は、その実員に一定係数を乗じて算定するなどの対応が必要だと求めている。
 専門大学院一年制コースについては、社会人が大学院において短期で集中して高度な専門職業教育を受ける機会を広げる観点からその設置を提言。教育方法、修了要件は、各大学院でその在り方を工夫することが必要だと検討を求めている。
 また、社会人が修士課程における学習の成果に基づき、継続してより高度な研究を行う機会を拡大するために通信制博士課程の制度化を提言している。通信制博士課程では、電子メールを活用したレポート指導やメディア・スクーリングなど情報通信技術の積極的な活用とともに面接指導も行うなどの指導体制の充実を求めている。教育水準の確保のために、アクレディテーション(適格認定)・システムの検討の必要性についても言及している。
 この日の分科会ではこの答申案の内容について、委員の間から特に大きな異論は出なかった。近く開かれる中教審総会で取りまとめられる。

【大学分科会法科大学院部会】

中間まとめに向けて検討課題を例示
連合大学院の検討急務

 中央教育審議会大学分科会の法科大学院部会は一月二十二日、東京・虎ノ門の文部科学省分館(旧国立教育会館)で第九回部会を開き、法科大学院の設置基準などについて話し合った。同部会は昨年十二月二十五日に開いた部会で標準修業年限は三年、専任教員の約二割以上を実務家教員とすることなどを盛り込んだ骨子案をまとめている。この日、事務局(文科省)からは、中間まとめに向けた検討課題例が示されたほか、司法制度改革推進本部法曹養成検討会が一月十一日の第一回会合で取り上げた主な論点について報告があった。
 中間まとめに向けた検討課題例として示されたのは主に、(1)通信制の法科大学院(2)法科大学院の学位(専門職学位)(3)複数の大学が連合して設置する大学院(連合大学院)(4)法科大学院に関する評価(5)奨学金、教育ローン、授業料免除制度などの各種支援制度の五点。このうち(3)については、現行制度との整合性も考えながら、今後早急に検討することが必要だとされ、複数の大学(学校法人)がそれぞれ共同出資して新たに学校法人を設立し、法科大学院を設ける、複数の大学(学校法人)が協定などによって連合組織をつくるなどして法科大学院を設ける、といった中から適切なパターンの在り方について検討する必要があるというもの。(4)については、新たな法曹養成制度の中核的機関としての水準の維持・向上を図るため、法科大学院設立時の設置認可(チャータリング)の審査とともに、継続的な第三者評価(アクレディテーション)を行うことが重要だというのが基本的視点。現在、大学分科会将来構想部会では総合規制改革会議の第一次答申を踏まえた検討が行われており、司法制度改革推進本部でも法曹養成検討会が設けられ、第三者評価(適格認定)基準についての検討が始まっており、整合性ある制度設計について検討する必要があるというものだ。
 また、法曹養成検討会では法科大学院の第三者評価(適格認定)基準について、教育方法を大学院設置基準の定めに加え(1)少人数教育に関する措置(2)双方向的かつ多方向で密度の濃い授業に関する措置(3)実務教育の導入部分に関する措置について評価基準で定めることなどを内容とする主な論点を示した。
 部会では佐藤幸治部会長(近畿大学教授)が「七―八割の合格者を出してもよいように、第三者評価をどうするか。二〇一〇年までに三千人の合格者が出るよう目指したい」と発言。また、川端和治委員(弁護士)は「法科大学院の設置基準は最低基準として(国際法務など)、拡張した機能を持つことは考えられるのではないか」などと述べた。

【大学分科会将来構想部会】

大学の設置認可の在り方めぐり
アクレディテーション義務付けなど討議

 中央教育審議会大学分科会将来構想部会は一月二十四日、東京・霞が関の文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)で第五回部会を開き、大学の設置認可の在り方について、特に設置認可とアクレディテーションとの関係、アクレディテーションの義務づけなどをめぐって話し合われた。
 部会では最初に事務局(文科省)から、目的による大学評価の類型例と、設置認可と第三者評価によるトータルシステムの例についてそれぞれ説明があった。事務局が示した類型例は(1)自己点検評価、外部評価、第三者評価(2)アメリカのアクレディテーション団体、JABEE(日本技術者教育認定機構)などのような機関別・専門分野別アクレディテーション(3)公財政支出を効果的に行うことを目的とする研究費の資源配分のための審査・評価(4)大学における教育研究活動を一定の評価尺度を基に順位づけるランキングの四つ。
 そのうえで、設置認可と第三者評価によるトータルシステムの例として、三つの案を示した。現行では設置認可により質を保証するという形になっているが、A案は大学の設置時を除き、アクレディテーションに基づき質を保証するというもの。
 B案は大学が学位を授与するための教育プログラムに着目した設置認可とアクレディテーションの双方で質を保証するというもの。C案は大学の内部組織に着目した設置認可とアクレディテーションの双方で質を保証するというものだ。
 この日、委員からは「チャータリング、アクレディテーションともに国が関与することには心理的圧力を感じる。(検討のたたき台として示されたトータルシステムの例の中では)A案、B案が比較的好ましいのではないか」(大南正瑛委員)、「アクレディテーションの義務づけは行うべきだ。その代わり設置認可は緩やかにすべきではないか」(黒田壽二委員)、「アメリカでは連邦政府が複数のアクレディテーション団体に補助金を出しているが、日本ではいま政府自らがアクレディテーション団体をつくろうとしている。その違いを認識して議論した方がよい」(天野郁夫委員)、「アクレディテーション団体は“紳士クラブ”のようにすればよい。法令違反などにはアクレディテーション団体のアドバイスに従って、文科省が是正命令を出すようにすればよい」(山崎正和委員)などの意見が出された。
 また、鳥居泰彦会長は昨年十二月十一日に総合規制改革会議が第一次答申を明らかにし、第三者による継続的なアクレディテーション制度の導入を平成十四年度中に措置するとしていることに触れ「改革の引き金となることはありがたいが、中教審との関係をどうするか難しい。どこかの段階で話し合って調整することも必要かもしれない」との考えを明らかにした。

【初等中等教育分科会教員養成部会】

私学団体含め教育、経済関係団体から意見聴取
今国会で教員免許法等改正

 中央教育審議会初等中等教育分科会の教員養成部会(部会長=高倉翔・明海大学長)は昨年十二月二十六日、東京都内の会館で第十四回会合を開き、会合の前日、遠山敦子文部科学大臣に提出された審議の中間報告「今後の教員免許制度の在り方について」に関して答申に向けての取り扱い等を討議した。また部会で中間報告案を取りまとめて以降、総会や初等中等教育分科会で出された意見とそれに伴う修正内容等が報告された。
 中間報告に関しては、教育、経済関係の二十四団体から書面で意見を聴取するほか、パブリックコメント制度を通じて一般からも意見を募ることにしている。二十四団体のうち私学関係団体(予定)は日本私立小学校連合会、日本私立中学高等学校連合会、全日本私立幼稚園連合会、日本私立大学団体連合会、日本私立短期大学協会の五団体。このうち日私小連、中高連からの意見聴取は同部会としては初めて。寄せられた意見については、一月二十九日の第十五回会合で報告、検討するなどして、二月末から三月初めには答申する予定だ。提言内容は教員免許法の改正案等として開会中の通常国会に提出され具体化が図られる。
 また同部会内に設けられた「特殊教育免許の総合化に関するワーキング・グループ」(WG)の初会合が、十二月十四日に開催されたことが明らかになった。このWGは障害を持つ児童生徒等の重度・重複化等の課題に対応するため、現在、盲・聾・養護学校に区分されている免許状の総合化を検討するもの。主査は大南英明・帝京大学文学部教授で委員は大学教授や特殊教育学校の校長ら十一人。


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