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記事2002年2月23日 号 (1面) 
教養実施の時代へ
教養、教免、社会人受け入れなどで3答申 中央教育審議会
大学の教養教育再構築必要 教免の取り上げ事由強化
長期履修学生制度を創設
 中央教育審議会(鳥居泰彦会長=慶應義塾学事顧問)は、二月二十一日、東京都内の会館で総会を開き、『新しい時代における教養教育の在り方について』『今後の教員免許制度の在り方について』『大学等における社会人の受入れの推進方策について』の三つの答申をまとめ、遠山敦子・文部科学大臣に提出した。このうち教養教育に関する答申は、幼・少年期では体験活動や実習等を通じて学ぶ意欲や態度を育て、豊かな人間性の基盤を作ること、高校では論理的に粘り強く考える訓練を行い、大学では教養教育を再構築すること等を提言している。また教員免許制度の在り方に関する答申では、中学校免許状等による小学校専科担任の拡大、現職教員の隣接免許状の取得を促進する制度の創設、特殊教育総合免許状の創設、教員免許状の取り上げ事由の強化、教職経験十年研修の構築、社会人活用のための特別免許状の授与要件の緩和等を求めている。大学等での社会人の受け入れ推進では、長期履修学生制度や一年制の専門大学院や通信制博士課程の制度化等を提言している。
 教養教育に関する答申は、今教養が必要な理由、新しい時代に求められる教養に言及したうえで、教養教育の在り方に関しては、幼・少年期、青年期、成人の教養の涵養と、人間の成長に合わせ時系列的に教養教育や教養を身につけるための手立て等を提言している。
 なぜ今教養か、については、自信や将来展望を持ちにくい状況の中で努力や学ぶこと等が軽んじられ、若者が学ぶ意欲を失いつつある時こそ、自らの立脚点を確認し、今後の目標を見定め、その実現に向け主体的に行動する力=新しい時代の教養が必要としている。
 そのうえで幼・少年期では、家庭での絵本や昔話の読み聞かせ、テレビやゲームの時間を制限して「我が家の決まり」づくり、基本的な事項の徹底のための反復練習、個別の家庭学習課題の設定などによる確かな基礎学力の育成などを、高校では必読書三十冊の選定、死や病、挫折など喪失感をもたらす人生の側面を学び、考える機会の充実などを、大学教育では学生の社会や異文化との交流促進、学際的なテーマを複数教員で担当するなど授業内容、方法の改善などを求めている。
 一方、教員免許制度に関する答申では、諮問事項の中で最大の懸案とみられていた教員免許更新制導入に関しては、我が国全体の資格制度や公務員制度と比較する中で教員にのみ更新制を導入することには慎重にならざるを得ないとし、当面の実施を見送った。
 この問題は二月二十一日の総会でも取り上げられ、「教員免許更新制の導入は現在の(教員養成の)開放制を問い直すことを含めて教員養成全体をどう見直すかの大きな問題。しかし未来永劫しないわけではない」(高倉翔・教員養成部会長)といった意見があった一方、鳥居会長は更新制の問題は、現在審議を続けている、新しい時代にふさわしい教育基本法の検討、教育振興基本計画の策定の中でも行えるとの考えを示し、教員養成の開放制についても検討が及ぶ可能性を示唆した。
 さらに大学等における社会人の受け入れの推進方策に関して提言された「長期履修学生制度」は仕事を持っていることなどにより通常の修業年限を超えて在学する正規の学生で、大学学部、大学院、短大、高専(専攻科)、専門学校が対象。修業年限が伸びる分、修得単位数や学納金などの分割が可能となる。
 一年制の専門大学院は、高度専門職業人の養成に特化した大学院修士課程の一年コースで、主として実務の経験を有するものが対象。例えば経営管理、ファイナンス、公共政策などの設置が期待されている。
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