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記事2002年2月23日 号 (5面) 
ユニーク教育 (105) ―― 同志社香里中学校・高等学校
教育改革推進
豊かな個性、可能性を
共学、AO入試、総合学習、一貫教育


同志社香里中学校・高等学校(生井武世校長、大阪府寝屋川市)は同志社を設立した校祖、新島襄のキリスト教主義の伝統を根底に置き、「自治・自由・自立」の気概あふれる教育を実践しているが、昨年、創立五十周年を迎えたことを機に現在、大胆に教育改革を進めている。
 改革の第一歩は平成十二年度から、高校七クラスのうち二クラスに「国際コース」を新設し、このコースを男女共学にしたことだ。残りの五クラスも二年から「文系」と「理系」の二コースに分けて、三コース制にした。現在一、二年生で九十人ほどの女子生徒が学んでいる。さらに、十四年度からは中学校の男女共学をスタートさせる。これに先立って、十三年度から高校入試で従来実施していた学力検査を廃止して、「総合評価方式(AO入試=アドミッション・オフィス)」を導入した。「作文」と「面接」、個人報告書の教科評定、およびクラブ・生徒会・ボランティアなどの特別活動を考慮して合格者を決定する。これによって、豊かな個性と可能性を持つ生徒を積極的に受け入れようというのが狙いだ。
 「高校から共学化を始めましたが、目的意識をはっきり持った女子生徒が入学してきたようです。女子が入学したことで、学校が活性化してきました。またAO入試に変えて分かったことは、自分に自信を持っている生徒が多数入ってきたことです」。こう語るのは、西山啓一教頭だ。
 学校週五日制についても、同校は十二年度から実施しているが、学力の低下を招かないようにと、補講や休暇中の特別授業で対応している。
 また、十四年度から、中学で始めるのが週一時間の「リベルタス」の授業だ。この時間は生徒一人ひとりが同志社を理解し、自分で考え、生きていく力、あるいは隣人を愛し、共に生きていくことの大切さを学び取ることを目的とした、いわば教科の枠を超えた「総合的な学習の時間」だ。
 一年では同志社の歴史や新島襄について学ぶ。二年では、新島襄ゆかりの地である東北地方の会津若松へ修学旅行に行くが、その事前学習としてさらに深く情報を収集し学ぶ。三年になると、各自の進路について考える。国際理解教育、情報教育にも今まで以上に力を入れる。
 このように同校では今、新しい学校づくりへの取り組みが順調に行われている。そして、中学共学の第一期生が高校へ進学するのを機に、十七年度から完全な中高一貫教育のカリキュラムをスタートさせる予定だ。同校ではほとんどの生徒が同志社大学へ進学するため、特別に受験勉強をする必要はなかったが、私学としての独自性を出し、またさまざまな方面への進学希望者が増えてくることに対応するためだ。
 十七年度から始められる中高一貫教育の基本方針は、中学では基礎学力を重視し、高校卒業時には他大学にも進学できるように進路保証をすることだ。同志社大学の教授を招き講義をしてもらうことによって、大学でどのような勉強をするかを学び、大学で専門的な勉強をするための基礎的な能力を養うこともこの時期に考えている。ここでは大学をも含めた中高大の一貫教育の実現を目指そうとしている。
 「今まで培ってきた男子校としての長所を含めて、本校の伝統を共学の中でどのように実現するかが課題です。また、共学となり、女子生徒がどのように成長するのかが楽しみですが、女子生徒が社会へ巣立って行くときこそが、本校の真価が問われると思っています」と、西山教頭は改革への手ごたえを感じている。


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