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記事2002年12月3日 1874号 (3面) 
日短協秋季大会 中教審の動向と対応など協議
 日本私立短期大学協会(川並弘昭会長=聖徳大学短期大学部理事長・学長)は十月二十二日、仙台市青葉区の仙台国際ホテルで「平成十四年度秋季定期総会」を開催した。総会では中央教育審議会の審議動向およびこれに対応して協会内に設けられた「短期大学振興対策特別委員会」の審議動向が報告された。また、中教審答申で第三者評価制度の導入が提言されたことを受け、短期大学基準協会を認証評価機関とすることについて協議。短大基準協会を法人化する場合、日短協の積立金を基本金として拠出することが了承された。

中教審の答申
準学士の学位としての明確化必要
高等教育のグランドデザインを検討へ

 中教審の審議動向については中教審臨時委員の島田子・文京学院短期大学理事長・学長、関根秀和・大阪女学院短期大学長が報告した。島田理事長・学長は答申の中で特に短大にかかわりが深いものは、設置認可の在り方の見直し、第三者評価の義務化、法令違反状態の大学への段階的な是正措置であるとポイントを指摘。そのうえで九月十二日に開かれた大学分科会では、今後の高等教育のグランドデザインが議題となったが、グランドデザインとは何なのかで議論が終始したと報告し、学部教育の在り方や準学士の称号の取り扱いを含めた短大・高専の在り方などを今後、大学分科会で検討していくことになる、と述べた。関根学長は今国会に上程された学校教育法改正案の第四条(2)の二で、短大の学科の設置に関して分野の変更を伴わないものは届け出で足りることが条文として定められていること、同四条(2)の一で大学の学部の設置などで授与する学位の種類と分野の変更を伴わないものについては同じく届け出で足りることが定められているが、これまで協会では準学士の称号を学位とするよう要望してきた経緯があり、改正案が成立するとこれを修正するには国会の議を経なければならず、短大にとっては憂慮すべき問題であることを指摘。学位としての取り扱いが制度上、明確になるよう議論を進めていく必要があるとした。また、高等教育のグランドデザインについては短期間で本質的な問題まで議論できるか危惧していると述べた。

中教審への対応
学位への格上げ要望
短大振興策を中教審に要請

 日短協「短期大学振興対策特別委員会」の審議動向について、同委員会の佐藤弘毅副委員長(目白大学短期大学部理事長・学長)が報告。佐藤副委員長は八月に中教審が公表した三本の答申を日本の高等教育全体に転換を促すものだと位置づけたうえで、これを受けた立法作業への対応が同委員会の課題であるとした。「準学士」の称号については、名称を変更することも一つの考え方であるとの意見が出たものの、「準学士」以外の適切な名称案が浮上せず、この名称のまま学位への格上げを要望していくべきだというのが同委員会の現在の方向であると述べた。ただ、現在、高等専門学校の卒業者にも「準学士」の称号が付与されており、短大側が「準学士」の学位への格上げを要望していく場合、高専や専門学校との関係も視野に入れた対応が求められるとした。短期大学の基本問題については、全私学連合が七月、中教審に提出した要請書の中に、私立短大振興策の確立について(1)生涯学習社会の諸要請に対応し、地域の多様な学習需要に応えることができるよう、私立短大教育の振興策を図るべきだ(2)「準学士」を学位として位置づけるの二項目が盛り込まれたことを報告。コミュニティ大学への脱皮を考えたとき、自由で多様なプログラムを開発、地域に展開し、それをどのように国や地方自治体がバックアップしてくれるかが課題であると挙げた。

総合規制改革会議
基準協を認証評価機関に
日短協からの積立金拠出も了承

 内閣府の「総合規制改革会議」(宮内義彦議長=オリックス株式会社代表取締役会長兼グループCEO)は七月に、経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革の事項を列挙した「中間とりまとめ」を公表した。教育分野では、都道府県の私立学校設置認可審査基準等の見直しの促進、私立学校審議会の見直し、教育分野における株式会社の参入などが挙げられ、さらに特定地域に限定してその特性に注目した規制改革を実施する「規制改革特区」制度の創設が打ち出された。この中でもとりわけ焦点であった教育分野への株式会社参入については文部科学省の強い反対もあり、今回は見送られたこと、構造改革特区のプログラムについては地方公共団体や民間事業者などから一月十五日まで受け付けていることなどが杉田均事務局長から、報告された。また、今国会に構造改革特区法案が上程されたことにも言及した。

認証評価機関設置

 八月の中教審答申「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」において認証評価機関による第三者評価制度の導入が提言された。これを受けて短期大学基準協会を認証評価機関とすることについては、その推進に向け法人化することになった場合、日短協の積立金を基本金として拠出することを視野に入れた作業を行いたいと、正副会長会、常任理事会での審議を踏まえ、川並会長が提案。特に異論はなく、了承された。

入学金返還問題
入学金返還問題は特別委員会で検討

 九月にこの問題に対応するため発足した「特別委員会」の坂田正二委員長(呉大学短期大学部理事長・学長)が報告。契約を解除した方に請求の権利があるのか、契約一般の原理原則と消費者契約法との間にどのような違いがあるのか、弁護士も委員に交えて検討していると報告。来年の春季総会には検討結果を報告したいと述べた。関口富左氏に

その他
関口富左氏に相談役を委嘱

 協会会則第二十七条に基づき、協会の理事として多年在任、功績が大きいとして、関口富左・郡山女子大学短期大学部理事長・学長に相談役を委嘱することを総会で承認。川並会長から関口理事長・学長に委嘱状が手渡された。


高等教育のファーストステージの役割
リカレントのための教育機関の位置づけ

文部科学省大学課長合田 隆史氏

 今後の文教施策について(説明)
 短期高等教育は世界的に見ても重要な位置づけを持っている。近年、短大教育再評価の動きもある。背景は二つに集約できる。一つは高等教育のユニバーサル化だ。エリート型からマス型、ユニバーサル型へ発展していくが、これを支える重要なエレメントが短期高等教育機関であり、短期大学の今日的意義は重要だ。もう一つは知識社会化だ。先進国では知識経済の段階に入っており、知識や情報の担い手である人の育成も重要になってくる。知識・情報は日進月歩であり、常に自らの知識・技能をリフレッシュしていくことが求められる。四年間はアクセスしづらい。短期大学はこうしたニーズに柔軟に対応できるポテンシャルを秘めており、新しい知識社会の中で短期高等教育の占める重要性は今日的意義を新たに付け加えている。
 この二つの要因から導かれることは、高等教育システムの中で短期高等教育が二つの位置づけを担うということだ。一つは高等教育のファーストステージの役割、もう一つはリカレントのための教育機関としての位置づけだ。短大は今後どういう形態を取るのか。(1)専門的職業教育(2)教養教育(3)生涯学習の三つのタイプがあり、短大の多様な形態での発展が期待されるが、コアとしての強さはどこにあるか、この三つのタイプは一つの枠組みを提供してくれるものだ。中核的強みを押さえ、それを軸に多様な展開を考えることが重要だ。この三つのタイプを軸にしながら、社会にオープンな形で多様化を進めていくのがこれからの短大の在り方である。
 短大の苦しい状況が言われるが、元気を取り戻している兆しもある。平成十四年度学校基本調査速報によれば、定員充足率は九五・五%と、かなり改善が進んだ。学科別に見ると、短大の構造転換が進んでいる様子がうかがえる。学生数は人文系、教養系、家政系で減っており、増えているのは教育系。分野別の志願倍率、定員充足率が伸びたのは人文系、教養系、教育系だ。人文系、教養系はかなりこれらの学科を改組、縮小し、ほかの分野に転換しながら結果的に状況を改善している。一種の構造転換がいろいろな指標の改善という形で表れているのだとすると、将来、短大に明るい展望が開けると考えていいのかもしれない。
 今後の方向性としてはいくつかの側面がある。一つは制度の問題だ。短期大学の名称の問題や、準学士の学位としての位置づけの問題だが、これは四年制大学、学部教育をどのように考えるかと密接に関連している。わが国でも学部教育の見直しが迫られている。短大について考える場合も学部教育との関係を整理する必要がある。しかし、制度を変えればカタがつくほど単純ではない。短大の「量」の問題をどう考えるか。量的縮小に関して下げ止まりの兆しが見え始めている。しかし、短大の構造転換が進みつつあるという見方をすればという条件付きである。国際的に見て、日本の短期高等教育に在籍している学生数は少ないが、やり方によっては教育需要が十分ある。問題はそうした潜在的需要を開拓する、顕在化させる方法を見つけることだ。コミュニティ・カレッジタイプ、地域総合科学科などの教育機会を大幅に拡大していくことが必要だ。短期高等教育のリバウンドを図るには、オープンな教育機会を提供していけるかが課題だ。より重要なことは「質」の問題だ。短大が短期高等教育の中で最も質の高い部分を担っていけるか、短大の名にふさわしい充実した教育機関として十全な体制にあるか、冷静に見つめ、改善のための取り組みを進めていかなければならない。いま重要なことは第三者評価で、事前規制を緩和するとともに、事後チェックを厳しくするという仕組みで、質の保証をしていくシステムが提案されている。短期大学基準協会の活躍を期待したい。ここで重要なことは、こういう仕組みを自分たちの手で守り育てていくという気持ちになっていただけるかということである。情報公開、大学間の情報交換も必要だ。改善の取り組みを促す効果がある。いい取り組みが普及して、それがいわば業界の標準となれば、短大全体の評価を高めることにつながる。

当面の課題を審議した短大基準協総会
認証評価機関へ準備開始
地域総合科学科の適格認定4校で実施

 短期大学基準協会(川並弘昭会長=聖徳大学短期大学部理事長・学長)は十月二十二日、仙台市青葉区の仙台国際ホテルで「第十八回定期総会」を開催し、同協会が認証評価機関としての準備を進めていくことについて協議、異議なく承認した。従来から実施してきた相互評価、地域総合科学科の適格認定、経常費補助金交付に係る外部評価の一つとしての評価は引き続き実施するが、前回総会で実施が承認された協会評価(同協会が会員校に対して行う第三者評価)は当面、実施を見送り、認証評価機関への準備に力を傾注していくこととなった。
 平成十四年度事業については杉田均事務局長から報告があった。今年度の春季総会では協会評価を実施する規約を承認したが、中教審から認証評価機関による第三者評価制度の導入が答申されたため、これの十六年度実施に向け検討を進めていくことになったと理事会の結論を報告。「協会評価委員会」では十五年度中には認証評価システムを構築しなければならないため、アメリカのアクレディテーション団体による認定事例などを検討したとし、「自己点検・相互評価推進委員会」では地域総合科学科の適格認定評価を行ったことを報告。適格認定の対象となったのは、呉大学短期大学部、広島文化短期大学、香蘭女子短期大学、北海道浅井学園大学短期大学部だが、これまで文部科学省による学科認可直後に評価を行うケースはなかったとし、今後も設置認可を受けた地域総合科学科については適格認定評価の実施要領に基づき、評価を行っていくと述べた。さらに「調査研究委員会」については、短大の制度的位置づけについて、客観的・専門的に理論構築していこうと、準学士の学位化の当否や短大ファーストステージ論を発展させたアーティキュレーションに関する調査研究などを従前からの課題として取り組んできたと報告した。
 認証評価機関への準備については、関根秀和副会長(大阪女学院短期大学長)が、短大も認証評価機関による評価を義務的に受けなければならない環境になったとし「協会評価委員会」でこれへの対応を協議してきたとこれまでの経過を報告。協会がやがて施行される法律に基づき、認証評価機関としての申請を行う前提の下で、これからどう準備に入っていくべきか、総会後の理事会、「協会評価委員会」などで検討していくことになるとした。その準備としては(1)認証評価機関としての組織に協会の組織を適合させなければならない。独立採算制や法人化への移行が問題(2)評価の性格を検討し直さなければならないことを挙げた。実際の施策に合わせて協会が業務を行っていくうえでは、会員校相互の協力、切瑳琢磨によって各校の質が向上していくための働きをするという協会の精神、理念に引き付けて認証評価機関としての評価も考えたいとし、現段階までの「協会評価委員会」の作業の中でもそうした方向性を共有していると述べた。ただ、これまでの第三者評価と異なり、今回、法で定められる評価は適格判定であり、両者の間で性格の違いが発生すると指摘。この懸隔を協会創立の理念に合わせてどうブリッジしていくかが重要だとした。時期的な問題については、文科省では、実際に認証評価機関としての評価がスタートするのは平成十六年秋以降であり、これに先立つ十五年四月に法が施行、十六年四月から夏ごろにかけて認証評価機関を定めるというタイムスケジュールを描いているとした。
 また、「協会評価委員会」の山内昭人副委員長(香蘭女子短期大学理事長)は、文科省が認証する認証評価機関に協会がなるのかどうかがまず、問題であるとし、これに移行するとなれば、法人格の取得、組織、基金の在り方など膨大な事務的作業が派生すると述べた。それと同時に重要なことは認証評価機関としての評価基準をどうすべきかが課題であると指摘した。今後、こうした課題が山積しており、春季総会で実施が承認された「協会評価」については当面、実施を見合わせ、認証評価機関に向けての準備に協会の全力を傾注していくべきではないかとした。これらを受けて、「協会評価」の実施は当面見合わせ、協会が認証評価機関への準備を進めていくことについて川並会長が改めて参加者に諮ったが、異議なく承認された。
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