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記事2002年12月3日 1874号 (6面) 
私学の経営者・教職員の資産承継 三菱信託銀行個人業務推進部
資産承継と結う遺言信託
 高齢化社会を迎えて相続、特に個人資産の次世代への承継をいかに行うかという問題が深刻化している。団塊の世代を中心とした熟年層の親世代が高齢化して相続が現実の問題となっていることに加え、相続を受ける側の権利意識も強まった結果、遺産分割の要求が強まり相続をめぐる争いも増加している。私立学校の経営者・教職員においても親世代との相続問題で切実な悩みを抱える場合もある。このような社会状況のなかで信託銀行が取り扱っている「遺言信託」業務の利用件数が大幅に増加している。そこで、本紙では「遺言信託」と「遺産整理業務」のエキスパートである三菱信託銀行個人業務推進部に相続をめぐる問題点と、「遺言信託」「遺産整理業務」の概要についてお話を伺った。私学関係者には相当の個人資産を保有しているケースが多いことからも、事前に資産承継への考え方を整理しておくことや資産の構成を見直すことが有益だ。

個人資産の相続をめぐる状況
相続をめぐるトラブル防止
遺言信託の件数増加

 平成十二年に相続税の申告書を提出した相続人数は十五万三百十七人、被相続人は四万八千四百六十三人で、相続人数においてはマイナス五・四%、被相続人(亡くなった方)においてはマイナス四・五%の対前年比減少となっています。
 近年、自分の意思を明確にして思い通りの資産承継を望む人が増加するとともに、以前であれば長子に集中していた相続資産が社会情勢の変化と個人の権利意識の高まりのなかで分割を余儀なくされ、それとともに相続をめぐるトラブルを防止するために「遺言」を準備する人が非常に増えています。
 この傾向は日本の社会が高齢化するなかで対象者が増大していくことと、相続人の権利意識の高まりが相まってますます深まることは確実です。このような背景から信託銀行が取り扱う「遺言信託」の受託件数も毎年大きく伸びており、全体では昨年同期比で二〇%近い伸び率を示しています。
 一方、相続資産の内訳を見ると、土地が全体の六二%余りを占め、現金・預貯金が約一四%、有価証券が約八%、家屋・構造物が約四%、その他一〇%となっていて、依然として土地の比重が高いのが実情です。
 資産における不動産の比重が高いのは日本の資産状況の特色ともいえますが、土地は分割しにくい性質があるので、相続発生前の対策を検討することが大切です。また、相続財産全体の状況によっては金融資産だけでは相続税が払いきれない場合もありますので、こちらも事前の対策が必要です。

円満な資産承継の考え方
遺産分割、納税資金、相続税の軽減
三要素のバランス重要

 相続対策というと「相続税の節税」だけに目がいきがちですが、むしろ一番に考えておかねばならないことは「円満な遺産分割」で、次に「納税資金の準備」、三番目に「相続税の軽減」で、この三つの要素のバランスを上手にとることがスムーズな資産承継を実現する道筋といえるでしょう。
 「円満な遺産分割」を実現する方法として有効な手段となるのが「遺言」です。「遺言」で指定された財産配分は法定相続分に優先するために、遺産分割に際して自分の意思を反映させることが可能となりますし、本人の家族への思いや社会へのかかわりを明文化して伝えることができるので、関係者の納得を得られやすいのです。遺言は何度でも書き換えることが可能なので、残したい財産の内容や財産配分に関する考え方が変わった場合はその都度変更できます。
 また、先にも述べましたが、日本人の資産の多くが土地などの不動産で占められています。土地・家屋があるので、いざという場合は処分して分ければいいという考え方をする人が多いのですが、不動産はすぐに売れるものでもなく、分割も容易ではないことを認識する必要があります。

不動産買い替え相続税軽減など
 信託銀行が相続の相談を受けた場合には、「円満な遺産分割」を実現する方法として、例えば、処分しにくい「不動産」について相談者の資産状況等を踏まえ、本人の意思に沿ってスムーズな分割が可能になるように不動産の買い替えなどの対策を提案します。そうして「納税資金の準備」と「相続税の軽減」も併せて対策していくことになります。

遺言と遺言信託
自筆証書遺言と公正証書遺言
信託銀行が執行者に

 「遺言」にはその形態により大別して「公正証書遺言」「自筆証書遺言」などに分かれますが、遺言信託の対象としては「公正証書遺言」が中心となります。

公正証書遺言は 内容が法的確定
 「遺言」を残すことを勧めたいケースとしては「妻の生活安定のために財産の多くの部分を妻に残したい」「事業の存続を図るために後継者に資産を承継させたい」「相続人ごとに特定の財産を自分の意思で指定したい」「世話になった家族に相応の財産を残したい」「子供がいないので妻に全財産を相続させたい」「福祉団体などに寄付し、社会への恩返しをしたい」などがあります。このような場合、「遺言」の形式については内容が法的にも確定する「公正証書遺言」が望ましいでしょう。
 信託銀行は法律によって財産に関する「遺言の執行者」として認められた法人で、「遺言信託」とは、信託銀行が遺言に関する事前の相談、遺言書作成の手伝いから保管・管理、相続が発生した場合の遺言の執行までを行う業務を指します。

本人の意思実現 遺言信託が適切
 遺言の役割として大切なことは、遺言のない場合には法定相続となる遺産を「本人の意思に沿って配分する」ことにありますので、遺言の作成のアドバイスと、保管、執行までを行う「遺言信託」は「本人の意思の実現」にもっとも適したサービスといえるでしょう。また、遺言の中の付言事項として普段はなかなか言葉にできない家族に対する感謝の気持ちや愛情を伝える手段としても評価されているようです。

相続の手続きと「遺産整理業務」
信託銀行が代行

 相続が発生すると短期間に多くの手続きを行う必要があります。相続税ひとつをとっても財産の範囲や評価をはじめ、相続税はだれがどのようにして納めるのかなど、多種多様な財産をそれぞれの事情に応じて総合的に処理しなければならないことが数多く発生します。具体的には、役所などへの種々の届け出、健康保険の切り替えや財産の名義変更などがあります。これらのさまざまな遺産分割に関する手続きを遺族が直接行うことは大変な時間的、精神的負担を伴う場合もありますので、信託銀行ではこのような手続きを代行する業務として「遺言信託」とは別に「遺産整理業務」という業務を行っています。特に「遺言書」のない場合には遺産をどのように配分するかということが全相続人の話し合いによって決定されたのちに「遺産分割協議書」を作成する必要がありますので、種々の手続きをスムーズに運ぶことが大変難しくなりがちです。
 仕事を持っていて時間に余裕のない方や役所関係の手続きが苦手な方は「遺産整理業務」について相談されるとよいでしょう。

遺言で可能な事項

・財産の処分に関する事柄
(1)第三者への遺贈
(2)社会へ役立てるための寄付
(3)財産の保全、または収益の有効活用のための信託設定
 ・相続に関する事柄
(4)法定相続分と異なる割合の指定
(5)相続人ごとに相続させる財産の特定
(6)遺産分割の禁止(五年)
(7)生前贈与、遺贈の持ち戻しの免除
(8)遺留分の減殺方法の指定
(9)共同相続人間の担保責任の減免・加重
(10)遺言執行者の指定
・身分に関する事柄
(11)認知
(12)法定相続人の廃除、またはその取り消し
(13)未成年後見人、または後見監督人の指定
 (右記の項目中、法律により信託銀行で執行可能な業務対象は、財産に関する(1)から(10)までの事項。身分に関する事項は弁護士の取り扱い範囲となる)
 三菱信託銀行では、相続と遺言についてやさしく解説したパンフレット「はじめて聞く、相続・遺言の話」を無料で進呈している。
 パンフレットの請求は「ご相談ダイヤル」 フリーダイヤル0120(37)5314
 相続に関する相談は「ご相談ダイヤル」または各支店の財務コンサルタントまで。

相続対策

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