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記事2002年12月23日 1876号 (2面) 
私学事業団が「今日の私学財政」まとめる
帰属収入減少など厳しさ増す私学の経営
[大学] 初めての資産減少
経営努力も収入減に追いつかず
 日本私立学校振興・共済事業団(鳥居泰彦理事長)は、このほど、「平成十四年度版今日の私学財政」(大学・短大編、高校編の二分冊)をまとめた。この報告書は大学、短大、高校を設置する学校法人とそれぞれの校種の平成十三年度財務状況を過去五年間の推移の中で明らかにしたもの。それによると、私立学校の財務状況は、就学人口の減少等からおおむね資産規模が縮小傾向をたどっており、施設設備等新規投資への意欲が低下、資金の流動性も下がっていること、また帰属収入の減少に見合う人件費など消費支出の削減が進んでいないこと等から私学の財務状況は厳しさを増していること等が明らかになった。大学、短大、高校の財務状況の概況をみる。

【大学】
 一法人当たりの資産は、十二年度に比べ四億三千九百万円減少していた。前年度に比べての減少は、同事業団が集計を公表した昭和四十八年度決算以来初めてのこと。また資産の中で有形固定資産の比率はほとんど変動していないものの、現金等流動資産の比率は、九年度の一九・六%から一七・八%へと減少していた。また減量経営を志向して負債の減少も続いていた。
 消費収支状況では、一法人当たりの帰属収入が減少し続けており、学生納付金の落ち込みが顕著だ。このため同報告では今後も帰属収入の減少は続くとみている。これに対して人件費の削減も行われてはいるものの、その削減率が帰属収入の減少率に追いつけず、結果として経営の余裕を減少させる状況となっている。消費支出が消費収入を上回った大学法人は、九年度の四七・六%から十三年度には五九・九%に上昇している。

【短大】
 短大法人は資産規模の縮小が特に目立っており、短大一法人当たり九年度に百億三千三百万円あった資産は、十三年度には八十九億四千六百万円へと減少していた。この背景には、新たに大学を開設して大学法人に移行した短大が比較的規模の大きかったこともある。また大学法人同様、資産の流動性の減少も見られ、負債の減少も。
 消費収支状況では、学生数の減少などから一法人当たりの帰属収入は、九年度から十三年度までに約四分の三強に縮小していた。また人件費、教育研究経費、管理経費がこの五年間で減少していたものの、その削減率は帰属収入の減少幅に追いつけず、大学法人同様、経営の余裕を失いつつあることがわかった。

【高校】
 一法人当たりの資産規模は平成十三年度で四十九億四千万円に上り、九年度の四十六億七千六百万円から漸増を続けていた。資産の漸増は、土地や建物といった有形固定資産の増加(資産全体に占める比率も増加)が影響している。現金といった流動資産は他の校種と同様、減少傾向を見せており、資金の流動性が徐々に損われつつあるようだ。
 消費収支状況では、一法人当たりの帰属収入が九年度十一億五千八百万円から十三年度には十一億四千六百万円へと減少はしているものの、その減少幅は少なかった。これは生徒数が減少を続けているにもかかわらず、生徒納付金、補助金が比較的安定していることによるもの。しかし一法人当たりの基本金組み入れ額は九年度の一億五千百万円から十三年度には一億千五百万円へと減少しており、施設設備の拡充等将来に向けての新規投資を手控える状況だ。帰属収入に占める消費支出の割合を示す消費支出比率は、高校単独では平成十三年度九六%にもなる。
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