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記事2002年12月13日 1875号 (2面) 
中教審・基本問題部会がヒアリング 教育基本法の見直しで意見聴取
本物の人間教育大事
宗教教育で上田京都大学名誉教授から聴取も
 中央教育審議会(会長=鳥居泰彦・日本私立学校振興・共済事業団理事長)は、十二月九日、東京・千代田区内のホテルで十七回目となる基本問題部会を開き、上田閑照・京都大学名誉教授から宗教教育の在り方について意見を聞いたほか、日本労働組合総連合会、全国町村教育長会、日本青年会議所、全国連合小学校長会の四団体から中教審が先月公表した教育基本法見直し等に関する中間報告への意見を聴取した。中教審基本問題部会は今後も十二月十三日、同十七日、同十九日と意見聴取を続けることにしており、私学関係では十三日に全国専修学校各種学校総連合会が、十七日には全私学連合が意見発表する。
 この中で上田名誉教授は、人間は人間として養い育てなければならないこと、放って置けば非人間的になること、どういう人間にならなければならないか考えなくてはいけないこと、「ものを大切にする」、「人に親切にする」といったことだけでも人間の在り方を十分言い尽くしていることなどを指摘。そのうえで宗教教育に関しては、キリスト教など既存の宗教に関するインフォメーションを行うのではなく(インフォメーションは世界史、美術史などで行う)、死の問題を含めて本当の人間になる教育を行うべきで、それは比較的道徳教育に近いものとした。
 また宗教という用語を使うと問題を引き起こす可能性があること、すでに成立している宗教を手がかりとせず、人間としての経験の中で与えられた真実、人類の歴史の中でこれが本物と思える人間について教えることがよいとした。また現在、教育が抱える問題の解決には社会全体が取り組む必要があること、自然破壊が人間にも精神面で影響を与えていることについても研究する必要性を指摘した。
 一方、日本労働組合総連合会は、教育基本法の議論と並行して教育の現状についての議論を行うこと、国民の教育基本法に対する関心の低さから国民にもっとメッセージを送るべきで、現行法に足りない点については国民に伝えることが大事だとし、教育基本法の見直しで再び国家至上主義に戻らないよう歯止めの必要性を強調した。
 全国町村教育長会は、ものを大切にする感謝の心を育てるとともに、日本人が日本人として心に誇るものを残しておきたいとした。また教育振興基本計画に関しては、国の予算が一般財源化するとなかなか教育に予算が回ってこないとして国の予算の確保を要請した。
 日本青年会議所は全国百三十三カ所で開催した教育改革地域会議で出された意見を集約した結果として、教育の原点は家庭であることを自覚して、しつけ・道徳心・倫理観を家庭でしっかりと教えること、学校を中心とした教育活動に地域が積極的に参加すること、人間の尊厳(個)を基盤とした、社会に対する責任(公)を教えること、日本人として伝統・文化を大切にして後世につなげること、国を愛する公民としての奉仕と義務の精神を植え付ける教育などを提言した。そのうえで教育基本法私案を明らかにした。
 全国連合小学校長会は中間報告が示した教育の役割、継承すべき価値(不易)に関しては、もう少し突っ込んだ内容とすべきだったとし、伝統や文化の尊重、国語教育重視はもっと前面に押し出したらよかったとした。目指すべき人間像に関しては、みんながイメージできる日本人を示してほしいと、また教育基本法に関する見直しは基本的なものに絞り込むべきだと指摘した。
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