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記事2002年11月3日 1869号 (10面) 
社会問題化するシックハウス
調査研究事業に1.7億円文科省予算
室内空気汚染指針値を策定厚生労働省
 建材や家具などに含まれている化学物質が原因で気分が悪くなるなど、健康被害が発生する「シックハウス症候群」が社会問題化している。文部科学省スポーツ・青少年局では、学校保健の充実を図る“学校すこやかプラン”の一環で、平成十五年度事業でシックハウスの基本的知識や具体的な対応方法を示した参考資料の作成、学校における化学物質の室内濃度などについての調査を行うことにしている。
 財務省に対する概算要求では「シックハウス症候群に関する調査研究」に約一億六千七百万円を計上している。同じ事業分野の前年度予算額二千七百五十万円の六倍強という、大幅な増額要求となった。すでに、学校におけるシックハウス症候群の原因物質について、定期的な検査を必要とするかどうかを検討する会合が持たれており、厚生労働省が(学校に限らず)シックハウスの原因となり得る化学物質についてリストアップし、「室内空気汚染指針値」を検討しており、すでにホルムアルデヒド、トルエンなど十三品目(さらに三種類を追加検討)について指針値が示された。これは空気中の濃度を環境基準として示したもの。
 シックハウス問題について詳しい社団法人北里研究所「北里研究所病院」の坂部貢・臨床環境医学センター部長は、このほど都内で講演し、化学物質過敏症の原因の約六割がシックハウス原因物質によるもので、農薬・殺虫剤や有機溶剤によるものを大きく上回っていることや、子供の注意欠陥・多動性障害(ADHD)を引き起こしたり、学習意欲低下の一因となり得ることを指摘した。
 今年七月に改正公布された建築基準法では、暫定的対応としてホルムアルデヒド、クロルピリホスの二種類が規制対象とされ、基準濃度を超えている建築物は引き渡しができないと規定された。坂部氏によれば、一般的な新築住宅の場合、室内のホルムアルデヒドの濃度は築後約一年で基準値近くまで低下する。しかし、その後しばらく横ばい傾向となり、結局、基準値を下回るには丸三年近くが必要だという。
 学校でも、厚生労働省が定める指針値をほぼ踏襲する形で検査基準が定められる方向にあり、すでに指針値が示された十三品目のうち、四品目では学校での検査基準が決まっている。今後は、他の九品目についても同様に検討され、検査対象となる物質が出てくることが予想される。

健康被害心配する保護者に対しても
原因物質濃度の測定必要

 特に、新築・増改築校舎は本来、私学にとっても受験生の耳目に訴える勧誘材料となるが、シックハウス症候群が現在以上に強い関心事となった場合には、健康被害を心配して「ウチの子は新築三年以内の学校には上げられない」という保護者も出てきそうだ。
 一般家屋の場合と同様に、校舎でも換気のよし悪しが原因物質の濃度に影響すると考えられており、通気性に優れた校舎の構造にしたり、シックハウス症候群の原因物質を使用していない(使用量が少ない)建材や塗料などを指定し、施主として使用を働きかけることも必要になりそうだ。
 なお、室内の空気汚染が心配な場合「地域の保健所に依頼すれば簡易測定をしてくれる。汚染がひどい場合には専門機関に連絡を取ってくれる」(坂部氏)とのこと。先手を打って密に測定を受け、校舎の原因物質濃度が基準値を下回っていることが実証されれば、在校生や教職員、保護者は安心でき、学校PRの上でも好材料になる。

シックハウス問題について講演する坂部氏

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