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記事2002年11月13日 1870号 (1面) 
父母も参加した全国私学教育研究集会 宮崎大会
教育課程など8部会で討議
感性豊かな人間育てる
“心の豊かさ” 中坊氏講演
 今年で五十回目となる全国私学教育研究集会が十一月六日から三日間、宮崎市の宮崎観光ホテル、ホテルプラザ宮崎を主会場に開催された。今年の宮崎大会には八百人の募集人員を上回る九百二十八人の私立中学高校の理事長、校長、教員らが参加、「感性豊かな人間を育てる私学教育」を研究目標に、これからの私学教育について八つの部会を中心に研究協議を行った。また初日の全体集会には、宮崎県内の私立中学高校の保護者も参加、合わせて千三百人が参加しての盛大な全体集会となった。

 この大会は(財)私学研修福祉会が主催、九州地区私立中学高等学校協議会、宮崎県私立中学高等学校協会が実施、日本私立中学高等学校連合会、宮崎県、宮崎市が後援、(財)日本私学教育研究所が協力したもの。
 この中であいさつに立った堀越克明・(財)日本私学教育研究所理事長は、「全国研究集会は、研究所ができる以前の昭和二十七年、中高連の委員会がいち早く全国の私学の教職員が研修を積むために、日本の将来を見通しながら、私学人として教育に当たる研鑽をしようということで始まった。第一回は東京で二百人足らずの先生方が集まり開かれた。昭和二十七年から起算して本年度が五十回になる。今回のように一千人を超す参加者が集まったことは、いかに全国の私学が意気込みを持って当たっているかの証左だ。学校の教育はかなり荒廃という現象もあり、国民の期待が大いに私学に寄せられていることは嬉しいことだが、その私学教育をどう維持していくかは、我々が談じ合ってよりよき道を探っていくことが極めて大事だ」などと語り、教員らに一層の研鑽を促した。
 続いて実行委員長の上田祐規・九州地区私立中学高等学校協議会長は、「予想以上の先生方がお集まり頂き大変感激している。また父母の皆様には感謝している。今教育は大変厳しい段階に来ている。物が豊かになったが、今やオアシスのない砂漠のような精神世界が日本中に溢れている。これから選ばれる学校になるためには我々私学の教職員が腕を磨くことだろうと思う。よき教師によき生徒が集まってくる」と語り、研修の充実を願った。更に開催県を代表して久保武司・宮崎県私立中学高等学校協会長が、「私学は非常に厳しい状況にある。少子化、低迷する(マイナス)経済の中、就学したい子どもが高校で学べないような状況だ。(研修期間は)三日間と短いが宮崎で語り合い、私学に奉職している自負心を忘れずに二十一世紀の私学を担う我々として胸襟を開き話し合えればうれしい」と語った。
 この後、松形祐尭・宮崎県知事、津村重光・宮崎市長の祝辞が代読された。
 休憩を挟んで、宮崎第一高校女子空手部が女子団体形「ニーパイポ」を披露、全国大会常勝校の実力を示した。また全国コンクールで金賞を始めさまざまな賞を獲得している宮崎女子高校合唱団が見事なハーモニーで宮崎民謡などを披露した。
 その後は、弁護士の中坊公平氏が「生きること・学ぶこと」とのテーマで、科学技術の発達や資本主義社会の自由競争で効率を求めるあまり、物の豊かさは手に入れたものの、心の豊かさを失ったこと、またエゴが充満し、今や「自己中心的な無理しない社会」となったことなどを指摘、あるべき姿を求めて考えることの必要性、自立・自律・連帯の重要性を強調した。また劣等感にさいなまれた自らの幼少年期等を振り返りながら、能力とは親から受け継ぐものでも、学ぶものでもなく、自分で作るもので、幸せとは心の中にあることなどを力説した。

学校経営部会で田村、小池氏講演

 二日目からは学校経営や教育課程など八つの部会に分かれての研究協議となったが、このうち学校経営部会では、中央教育審議会委員を務める田村哲夫・渋谷教育学園理事長が「教育の自由化時代における私学の優位性」と題して講演し、ものの豊かさが実現したことで生徒等の学習意欲をどう作るかが大きな課題となっていること、中教審が十一月十四日にもまとめる審議の「中間報告」では、学習の意欲を満たすため、生涯学習を前提に「自己実現」を教育の目標としていること、自己実現・個人教育の中では当然、絶対評価が必要になること、そのことに公立学校の教員は不安を感じているが、そのことが私学に優位性をもたらすことにつながる可能性があると指摘した。
 また続いて講演した小池俊夫・(財)日本私学教育研究所研究部長は、今後“人間力”を育てる教育が大切となることを強調、そのためには哲学する力(自分で考える)、関係する力(人とかかわる)、創造する力(日々よりよく生きようという力)が必要だと力説。大学等の進学実績は、こうした教育の二次的産物だとした。
(近く詳報)

宮崎市内で行われた第50回研究集会の全体集会

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