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記事2002年10月3日 1862号 (10面) 
北海道文教大学、斬新な構想で躍進
人とつながり、心でつないだ60年 世界へ飛翔する人材育成 すばらしい人生を、すべての学生へ
道内唯一の外国語大学
語学力、生きたコミュニケーション力


【21世紀の私学像】
 鶴岡学園(鈴木武夫理事長、北海道恵庭市)は十月四日、創立六十周年を迎える。一九四二年、「北海道女子栄養学校」としてスタートした鶴岡学園はいま、大学、短期大学部、高校、幼稚園を擁する総合学園へと発展している。来春には大学に新学部として人間科学部を設置、また、大学院も新設する(いずれも認可申請中)。常に時代を見据え、時代に先駆けた教育を展開してきた鶴岡学園は創立六十周年を機に、さらに前進していく。


時代に先駆け理事長構想の改革実現
鶴岡学園理事長北海道文教大学・短期大学部学長鈴木 武夫氏

 鶴岡学園は、一九四二年、鶴岡新太郎・トシ夫妻によって創立された「北海道女子栄養学校」が始まりです。当時は食糧難の時代であり、夫妻は北海道の人々の食生活の改善と、栄養指導の必要性とを強く感じ、同校を設立しました。これが全国で六番目の栄養学校の誕生であったことは、時代を見通す先見性と時代の一歩先を読んでの行動だったといえます。戦後、一九五九年には高校を設置、六三年には栄養学校を基礎として短期大学を設置、七〇年には幼稚園をそれぞれ設置しました。その後、短期大学の食物栄養学科は八八年に札幌市から恵庭市に移転、現在は恵庭と札幌の二キャンパスとなっています。そして九九年、道内で唯一の外国語大学として北海道文教大学を開学しました。
 かつて「北海道女子栄養学校」が道内では先駆的な学校として誕生したように、現在でも鶴岡学園はユニークな学習分野や制度を意欲的に開拓し続けています。大学には北海道・東北で唯一の中国語学科があり、高校にはサッカーを学べるコースがあることなどはその表れだといえます。いまの生徒や学生が本当に学びたいと思っていること、彼らに本当に必要なこととは何かを考え、柔軟に対応していくことこそ、創立当時から脈々と続く学園の理念です。
 現在、鶴岡学園で学ぶ者は、海外からの留学生を含め二千人余を数え、卒業生は道内ばかりでなく、日本全国、さらに海外にも広がり、その活躍は高く評価されています。これは素晴らしい人生を切り開いていく能力をすべての生徒、学生へ提供することを目指した創立以来の学園の教育理念の正しさの証しです。
 教育は百年の大計です。この六十年をいわば草創期とすれば、次の四十年は創造拡充の時期だといえます。鶴岡学園は「質」「量」ともにさらなる拡充に努めていきます。「質」の充実ということでは、来春、大学院グローバルコミュニケーション研究科と人間科学部健康栄養学科を設置する予定ですが、これはより高い研究と教育面での質的充実を目指したものです。「量」の拡大では、経営を無視した教育が事実上存在し得ないのと同様、教育を犠牲にした経営もあり得ないことから、鶴岡学園の学校経営上の適正規模を三千人と定め、財政および運営基盤の安定を図っていきます。
 鶴岡学園は今後も教育の先駆的開拓者としての歩みを続けていきます。


【北海道文教大学外国語学部】
 北海道文教大学は道内で唯一の外国語大学として、これまで順調な発展を遂げてきた。外国語学部の特色を、鈴木理事長・学長は次のように説明する。
 「本学では二カ国語ができるのは当然という時代の中にあって、三つの専門学科が連携して、どの学科を選択しても英米語、中国語、外国語としての日本語、さらにロシア語も修得できるマルチリンガルシステムを導入しています。できるだけ多くの学生に海外留学の機会を与えようと、半年〜一年の長期留学から約一カ月の短期研修まで、個々の目的に合わせて選べる多彩なプログラムがあり、受け入れ大学との密接な連携の下、学生が安心して留学できるシステムを採っています」
 学部長の黒坂満輝教授は、同学部が実践的なコミュニケーション能力の育成に主眼を置いていることを強調する。「話す、聞く、読む、書く、の四技能を徹底的に身につけることは当然ですが、言語運用能力を深めるために、その言語の背景となる文化、思想を理解することにも重点を置いています。国際感覚を身につけ、グローバルな視点で物事を見ることのできる人材を育てています」
 語学教育には理想的な少人数制クラスによって集中的に学習に取り組める環境が用意されていることもこの学部の特色。指導にはネーティブの教員と日本人教員とが連携して当たり、留学生と交流する機会も豊富だ。
 学生の勉学をサポートするための施設設備も充実している。学舎内は清掃が行き届いており、そこかしこに飾られた花々が目を引く。学内に三つあるコンピュータラボラトリ(CL)には総数約百六十台のパソコンを整備。教員自らが制作したソフト(教材)による語学の授業が行われるほか、パソコンによる課題、レポートの提出も受け付けている。授業以外の時間も利用可能で、自分のペースで予習・復習ができる。
 また、学生生活の拠点となる大学図書館には約六万点に及ぶ図書資料がそろい、学習や情報収集、読書にと、多くの学生が利用している。入館率は高く、平均すると全学生が一日一回は入館している計算になる。
 北海道文教大学は来年三月、第一期の卒業生を送り出す。学生の就職活動全般を組織的にサポートしていく「就職対策委員会」を設けているほか、入試広報と就職指導を専門に扱う部署として「進路支援センター」を設置、この分野のスペシャリストがセンター長として学生の就職活動支援の陣頭指揮を執っている。小規模大学ならではの特徴を生かし、学生一人ひとりの個性や資質、希望に沿うよう、きめ細かに個人面談を行っている。鈴木理事長・学長は「卒業生が道内はもとより、全国、さらには海外で『適材適所』の活躍ができるようにバックアップしていきたい」と話している。

【人間科学部大学院】
記念事業
人間科学部健康栄養学科 大学院グローバルコミュニケーション研究科

 鶴岡学園創立六十周年記念事業の一環として、北海道文教大学に来年四月、人間科学部健康栄養学科、大学院グローバルコミュニケーション研究科が誕生する。
 人間科学部健康栄養学科は高い専門知識と技能とを兼ね備えた管理栄養士を育てるために、現在の短期大学部食物栄養学科を四年制の学部に改組するもの。鶴岡学園では学園創立以来六十年間、一貫して栄養士養成施設として地域社会の要請に応え、数多くの栄養士を輩出してきた。病院、学校、福祉施設など第一線で卒業生が栄養士、管理栄養士として活躍している。短期大学部食物栄養科は第十五回管理栄養士国家試験で全国栄養士養成施設三百十四校中二十五位という好成績を残している。
 学部長に就任予定の中矢雅明・食物栄養学科長は人間科学部で「『もてなしの心』を持った管理栄養士を育てたい」と強調する。管理栄養士はそれぞれの地域に住む人たちと接しながら食生活をサポートすることが仕事となる。健康な毎日を送るためになぜ食生活を改善する必要があるのか、高度で専門的な知識をすべての人に分かりやすく説明する配慮や、おいしくて体によい料理を提供することができるように、人々を「もてなす」ことのできる優しい心を持った管理栄養士が社会から必要とされているというわけだ。
 現在の短期大学部食物栄養学科では、オフィスアワーを設け、毎週一回は時間を決めて教員が学生の訪問を受け付けるようにしており、どの研究室も気軽に入れる雰囲気となっている。また、教員と学生が共に学ぶ勉強会「学科セミナー」は一九九四年以来、四十回の開催を数える。全道、全国に張り巡らせた卒業生の人的ネットワークの効果もあって、食物栄養学科卒業生の就職率は毎年一〇〇%の実績を記録している。また、鈴木理事長・学長は「学園にとって、管理栄養士養成のための四年制の学部設置はまさに創立の趣旨に沿ったもの。短期大学部には別科調理専修を設けており、いずれは調理師と管理栄養士とのダブルライセンスを持つ人材の養成にも努めていきたい」と話している。

全国で初となる研究科

 一方、大学院グローバルコミュニケーション研究科(修士課程)は、グローバル化が急速に進む中、外国語に堪能で高度なコミュニケーション能力を持った人材、グローバル・アイデンティティーを持った人材の育成を行うために新設されることとなった。全国で初となるこの研究科の名称にはそうしたねらいも込めてネーミングされた。来年度は中国語コミュニケーション専攻のみからのスタートとなるが、将来的には英米語学科、日本語学科の各コミュニケーション専攻の開設を視野に入れている。大学院の設置によって外国語学部の教育内容のさらなる充実にもつなげていく。
 中国語コミュニケーション専攻では「中国語のより高度な実践的運用能力、コミュニケーション能力とともに、高度な言語文化に関する知識を持った専門的職業人を育成していきます」と黒坂学部長は話している。
 北海道文教大学では鈴木武夫氏が二年前に理事長に、さらに今年から学長に就任して以来、学生が満足できる「いい教育」を行おうと大学改革を強力に推進してきた。外国語学部では教育内容と施設設備の充実に力を入れてきたが、今回の人間科学部と大学院の新設もまた、改革の成果である。

【北海道文教大学短期大学】
高い就職率誇る
幼児教育学科と調理師養成の別科

 現在、短期大学部には恵庭キャンパスに食物栄養学科と別科(調理専修)が、札幌キャンパス(札幌市南区藤野)に幼児教育学科があるが、食物栄養学科は四年制学部へと移行するため、来年度から一学科一別科となる。
 幼児教育学科は校外実習に力点を置いた実践的なカリキュラムときめ細かな指導体制によって、幼児教育に必要不可能な知識と技術、豊かな人間性を育成している。卒業と同時に幼稚園教諭二種免許および保育士の資格が取得可能。保育専門職を中心に一〇〇%の就職率を誇っている。今年度から男子学生も入学し、幼児教育学科は新しい時代を迎えた。「子どもたちに楽しい思い出をつくってあげたい」「自分も子どもたちからたくさんの刺激を受け吸収したい」と、幼児教育に対する熱い思いを抱いて学習している。
 別科(調理専修)は、高度な技術はもとより、栄養学、食品学、食品衛生学などの科学的知識と現代的センスとを身につけた調理師を育成している。調理実習では、一流ホテルやレストランの料理長など、経験豊かな講師陣が直接指導。近代的な調理設備をフルに生かしながら、調理の基礎から高度なアレンジまでを学び、調理技術に磨きをかけている。

【北海道文教大学明清高校】
総合学科型のカリキュラム体制
普通科5コース、食物科

 生徒一人ひとりの個性を生かし、知的好奇心を伸ばせる学習の場を提供するため、今年度から明清高校(後藤敬校長、札幌市南区石山)では、普通科に「語学留学」「総合進学」「サッカー」「情報デジタル」「社会福祉」の五コースを開設。総合学科型のカリキュラム体制とした。また、全道で唯一の男女共学の調理師養成学科である食物科では新たなカリキュラムを導入した。
 普通科の語学留学コースは高校二年生で約七カ月間の長期留学を実施。サッカーコースは将来性のあるサッカー選手や指導者の育成を目指している。共に道内初の設置となるユニークなコースで、これも学園の改革の成果である。大学、短期大学部を擁する総合学園ならではのメリットを生かした優先入学制度や入学金の減額などの支援体制も整えている。

【短期大学部附属幼稚園】
地域の子育て拠点
園舎、体育館開放

 短期大学部と同じ南区藤野の小高い丘の上、札幌キャンパスの中にある、北海道文教大学短期大学部附属幼稚園(小田進一園長)は三十二年の歴史の中で地域の要望に応える保育施設として、また、短期大学部幼児教育学科の実習施設としての役割を担ってきた。九八年には「子育て支援センター」を開設。就園未満の親子のために、定期的に園舎やグラウンド、短期大学部の体育館などを開放し、自由に遊べる空間として提供している。また、保育相談などの活動を通し、親たちとの日常的な交流を進めるなど、短期大学部と連携。地域における子育て拠点として大きく貢献している。
 藤野の連合町内会は福祉の街づくりを進めていることもあり、子どもの成長と老人福祉がリンクした教育空間をつくろうという構想もある。

世界の人々と交流できるグローバル・コミュニケーターの育成に努めている北海道文教大学


緑あふれる恵庭キャンパス


短期大学部幼児教育学科のある札幌キャンパス


北海道文教大学明清高校


短期大学部附属幼稚園

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