こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2002年10月23日号二ュース >> VIEW

記事2002年10月23日 1867号 (4面) 
日本大学のTLO 国際産業技術・ビジネス育成センター
豊富な人材と研究施設活用
コーディネーターの質、量がポイント
日本大学国際産業技術・ビジネス育成センター(NUBIC=ニュービック、〓在幸安センター長、東京都千代田区)は日本で初めての、大学の研究成果を民間に移転する技術移転機関(TLO)の一つとして、平成十年十二月四日承認された。同センターでは「国内外の研究機関はもとより、産業界との積極的な連携・協力を行うことにより、日本大学の研究活動の活性化及び新産業の創出等を図り、もって我が国経済の発展及び学術の進展に寄与することを目的」としている。
 十四年九月現在、出願済みの特許は国内三百二十一件、国際三十八件で合計三百五十九件に上った。企業への技術移転に成功したのは四十件となった。「特に中小・中堅企業が関心を持ち、問い合わせとともに件数も年々増加している」(冨田昌業・事務長)。
 同大学は十四学部および大学院十八研究科に三千人の研究者を擁し、文系から理系の最先端工学、医学まですべての学問領域をカバーできる人材と研究施設を有する総合大学だ。ニュービックの実績は、この豊富な人材と研究施設を活用できる強みに大きく起因している。
 例えば、歯学部の助教授は「歯科用三次元画像診断装置」を開発し、技術移転、製品化に成功した。これまでは歯科用のX線撮影はフィルムを口の中に入れる口内撮影法か、あご全体を撮影する回転パノラマ撮影法が一般的だった。しかし、新製品によって見えなかった部分もはっきりと見えるようになり、患者に対する説明も正確になったという。
 また、生物資源科学部の教授はラットやマウスなどの多産系の実験動物から搾乳を円滑に行うことができる「搾乳装置」を開発し、ベンチャー企業に技術移転している。
 日大歯学部附属歯科技工専門学校教員は家庭や老人ホームなどへの訪問歯科診療の際、入れ歯の削りかすの飛散を防ぐ歯科技工用「折りたたみ式集塵ケース」を発明し、歯科用模型のメーカーと秘密保持契約を結んだ。
 ニュービックを立ち上げる前は、研究者は企業と共同研究し成果に結びついた場合は、企業の方で特許の出願を行っていた。研究者は研究費などで報酬を受けていたケースが多かった。
 冨田事務長は「現在ニュービックの技術シーズは専門的な分野が多いのですが、どういう製品に利用できるのか、その目利きが難しいです」と、研究から特許、製品化されるまでへの難しさを強調する。膨大な知的財産の中から特許を稼働させるための管理運営が重要で、それを実現するのが、コーディネーターで今、質と量が最大のポイントとされている。
 日本大学ではこのニュービックとビジネススクール「グローバル・ビジネス研究科(NBS)」を中核に、相互の連携を緊密にし、生きたビジネスを学び、そこで得た知識を生かした新たなビジネス創生を特徴とし、社会の役に立つ大学、地域に貢献する大学を目指すとしている。

NUBICベンチャークラブ
産学の情報交流推進


 「NUBICベンチャークラブ」は、産学の情報交流推進を目的とするもので、これからの産業発展を担うベンチャー企業は(1)新製品開発のための技術情報の収集(2)ビジネスチャンスをいち早くつかむための情報ネットワークの必要性から考えられた。クラブの会員になると、研究者および技術の紹介、会員情報、公的支援策情報、ニュービックの活動など、幅広い情報を受けることができる。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞