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記事2002年10月23日 1867号 (6面) 
ユニーク教育 (111) ―― 川崎医科大学附属高等学校
地域医療に貢献する良き医師
人間教育と体育織り交ぜた教育

古市校長

 岡山県倉敷市にある川崎医科大学附属高等学校(古市誠祠校長)は、樹木の緑と花のあふれる広大な自然環境に恵まれている。同校は昭和四十五年、「人間をつくる」「体をつくる」「医学をきわめる」を建学の精神に掲げ、川崎医科大学の附属高校として開校された。同校の基本方針は「良医を育てるために、人間教育と体育を織り交ぜた特色ある教育を行うことを目的」としている。
 「私は特に地域医療に貢献できるような良き医師を目指すようになってもらいたいと思っています。人々の健康の維持と社会福祉に貢献し、社会から信頼される医師になるために幅広い知識と、人間性の基礎を本校で身につけてほしい」と、古市校長の生徒にかける期待は大きい。
 幅広い知識の修得と、人間性の基礎を養うという方針は、さまざまな特色教育となって表れている。同校では、生徒全員が校舎に隣接する寮で共同生活を送る全寮制教育を実施している。豊富な教育経験を持つ舎監が、夫人とともに住み込んで指導に当たっている。古市校長は「全寮制教育の役割の一つは、生徒を親から離すことによって、生徒の独立心を育てることにあると思います」と、全寮制の意義を強調する。
 また、川崎医科大学の受験科目に理科三科目が指定になっているので、数学、英語のほか物理、化学、生物にも重点を置いている。理科について幅広く学んでいるので、大学であらためて、例えば生物を勉強し直すというようなことはない。
 平成七年から始められた「テーマスタディ」は、同校が力を入れている「自己啓発学習」だ。これは、二年生が五、六人ずつ六班に分かれてそれぞれ、テーマを決め、それについて調査、検討、発表を行う。新教育課程の総合的学習の先駆的試みと考えられるもので、自力で問題を発見し、解決することによって自主的学習能力の向上を図ることができる。十一月に展示発表し、翌年一月に一、二年全員参加で発表会を開催している。
 「生徒は将来医学を研究し、学会等で発表する機会も多いから、自発的にテーマを見つけ、資料を収集・整理し、まとめて発表する能力を身につけることは意味があると思います」と永井理夫教頭は話す。
 十二、十三年度二年間のテーマを見ると、健康、脳、食中毒、病原菌など健康に関するテーマだけでなく、日本の方言、火星、コンピュータ、クジラ・イルカ、環境問題、旅と内容は多岐にわたっている。「健康について」は食品添加物、タバコ、薬物、ハーブティー、健康とストレス、音楽とリラックスを素材に、健康に悪影響を与えること、健康の素になることについて、肉体と精神の両面から考えた。このうち、タバコについての研究はタバコが体に及ぼす影響を調べ、なぜやめられないのか考察し、(1)ニコチン(2)社会的慣習(3)他の習慣との結びつきを考えている。
 同校では一年から三年まで年間各一日、優れた医療福祉事業の行われている旭川荘で研修を兼ねてボランティア活動を行っている。生徒たちは一生懸命生きている人たちに接して感銘を受け、生きることの意味や福祉のあり方について考えるようになる。一年生はおしめたたみや窓ふき等の作業が中心となり、二、三年生になると食事の介助、車いすでの散歩の介添え等障害を持つ人との接触が多くなる。
 開校以来、卒業生は千二百人を超え、そのうち約九五%に当たる者が医師として、全国で活躍している。

テーマスタディで研究成果を発表する生徒

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