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記事2002年10月13日 1864号 (2面) 
拡大学生就職支援協議会開く
大学本来の使命果たすため
就職、採用環境を改善
私大連盟
日本私立大学連盟(奥島孝康会長=早稲田大学総長)は十月三、四の両日、京都市下京区の京都東急ホテルで「平成十四年度拡大学生就職支援協議会」を開催した。就職協定の廃止によって、就職活動の早期化・長期化が年々、深刻化していることを受けて、改めて大学が社会で果たすべき本来の使命について考えようと、討議テーマを「大学本来の使命を果たすためには就職・採用環境の改善に向けて」とし、初日には産業界出身のパネリストを交えたパネルディスカッションが開かれた。


 開会に当たって、同連盟就職委員会担当理事の栗田健・明治大学総長があいさつ。「学生の就職は大学が社会的責任を果たせているかどうかの指標になる。協定廃止後、五年が経ち、さまざまな問題も生じている。学生への就職指導が日常化し、全学年にわたって通年化しているとの声も聞かれるようになった。われわれの仕事は難しさを増し、大きな責任を負っている」と、大学における就職指導担当業務の重要性を指摘した。
 パネルディスカッションには、パネリストとして桐村晋次・古河物流(株)相談役(旧日本経営者団体連盟教育特別委員会委員)、神谷雄績・私大連盟就職委員会委員長(同志社大学就職部長)、桧枝光太郎・立教大学キャリアセンター部長(理学部教授)が出席。司会は林堅太郎・立命館大学就職部長が務めた。
 神谷委員長は、就職協定廃止によって、三年生は夏休みが終わると就職活動を開始し、翌年の三月には内定が出るという現状を批判。「日本の大学は『短期大学』になりつつある。企業は未成熟な若者を採用していることになる。就職環境を改善して、教育の実を上げなければならない」と強調した。そのうえで、同連盟と日本経団連との三回にわたる懇談の成果として、早期化の現状の改善に努めていくとの共通認識に立つことができたとした。また、就職問題懇談会、就職問題検討会を通じて、同連盟として、(1)採用活動の開始は八月が望ましいことを明記すべきだ(2)企業が求める人材能力を明らかにしてほしい(3)企業倫理の欠如が見られ、改善を望みたい(4)女子学生への就職差別の撤廃、大都市圏の大学と地方大学との格差是正の主張を展開してきたと報告。十月二日に就職問題懇談会がまとめた、企業採用責任者にあてた「平成十五年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業予定者に係る就職に関する要請」では、新たに「卒業学年に達しない学生に対する実質的な採用活動を自粛、長期休暇期間など大学の教育活動を尊重した採用活動を行う」「採用情報の提供に当たっては求める人材の能力や資質を具体的に示し、公平・公正な公開を徹底する」との文言を盛り込むことができた、とした。さらに、同連盟では、私立大学全体で就職・採用環境の改善に取り組むべきだと、日本私立大学団体連合会に提案を行った結果、今後、この方向で具体的な取り組みを進めていくことになった、と報告した。
 桐村相談役は、かつて企業における管理職の役割の一つに新人の教育があったが、組織の〈中抜き〉現象が進行するという新しい状況の中でこれが困難になってきたと指摘。自己責任、自立が重要な時代になってきたとの認識を示した。学生の就職活動の早期化・長期化についてはこの問題が片付くことで、すべての問題が解消されるかとの疑問を投げかけた。八月に採用活動を解禁したとしても、企業にOBのいる一部の大学の学生はそれ以前に接触を始め、大学間で格差が広がり、かつての姿勢に逆戻りする恐れもあるとの懸念を述べた。
 桧枝教授は学生への就職指導を大学教育に重要な視点を与えるものととらえるべきだと指摘。社会に役立つ人材を育てるという視点でカリキュラムを改革し、キャリア教育の在り方も考えるべきだと述べた。また、大学経営者には就職問題を政策化していく感性が求められるとし、大学全体で意識を共有し、トップダウンで取り組んでいくことの必要性を強調した。

活発に意見交換が行われたパネル討議

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