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記事2002年1月3日 号 (2面) 
地域社会が私学に期待するもの
私学の教育・運営に関する研修会 私学研修福祉会
良い学校に財政支援
子育て通じ地域育てる努力重要
 財団法人私学研修福祉会(大沼淳理事長=文化学園理事長)は、十二月三・四の両日、東京・市ヶ谷の私学会館で「私立学校の教育・運営に関する研修会」を開催した。この研修会は私立幼稚園、小、中、高校の理事長や校長ら幹部を対象としたもの。研修は「地域社会は私立学校に何を期待しているか」に焦点をあて行われた。

 研修会初日の午後からは研修課題をテーマにしたパネルディスカッションが開かれた。講師は金子郁容・慶應義塾幼稚舎長、田中雅道・全日本私立幼稚園連合会副会長(光明幼稚園長)、丹羽健夫・学校法人河合塾顧問の三氏。コディネーターは原隆・昭和一高学園顧問が務めた。
 この中で金子氏は、私立学校は地域的に同じというコミュニティではなく、価値観や考えなどを共有するコミュニティに基盤を置くべきで、また公立学校は税金を使って私立学校がこれまで一歩も二歩も先んじてきたものを取り入れている(学区制の弾力化、校長のリーダーシップ、学校のマネジメント機能の強化等)、しかし今後は公立学校対私立学校ではなく、良い学校か悪い学校かという図式に変わるべきで、良い学校に対しては財政的な支援をしていくべきだとした。さらに規制緩和で今後、学校教育に企業などが参入するため、私立学校は安閑としていられないと指摘した。
 一方、田中氏は幼稚園児の八割が私立幼稚園に在籍しているにもかかわらず、私立中心の政策が取られてこなかったこと、最初は園児を集めたが、その後うまくいっていない「駅前保育所」を例に挙げて、かつては国が決めたとおりにやっていればうまくいったが、現在はわれわれ自身が地域の実情を考えて進めていくべき時代となっていることを強調した。また幼稚園の適正な規模とはどのくらいか、これまで検討したことがないとして、今後の課題としてあげた。
 幼稚園は子育てに悩む人にどれだけ力を貸せるかが重要で、子育ての悩みを乗り越えたときに人は幸せを感じるもの、保育所は子育ての悩みそのものを取り去ってしまうとした。幼稚園には地域を育てていくことが期待されており、幼稚園が積極的に情報を発信してこそ地域の再活性化、私学経営がうまくいくことを強調した。さらに子育てに関しては、父親の姿を見せられる制度を作ること、仕事の犠牲となっている家庭をどううまく機能させるかが重要で、それがないと子供たちの未来は見えないとした。このほか保育所財政は近い将来破綻をきたす恐れがあること、子育て支援では幼保の区別なく同じ扱いが当然で、公私幼保の公費負担は平準化していけることを強調した。
 丹羽氏は予備校が蓄えてきた情報から数学・理科を中心にかなりの学力低下が進行していることを明らかにするとともに、この問題がわからないと前に進めないという“納得型”の生徒がないがしろにされてきたため、かつてはそうしたタイプの生徒が成績優秀グループにも見られたが、いまはほとんど見られなくなったこと、教員を雑務から解放し一人ひとりの生徒をていねいに扱ってほしいと訴えた。また偏差値偏重の反省がやがてやってくること、また今後、どこが良い教育をやっているか論じられる時代がやってくることを強調した。
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