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記事2001年9月23日 24号 (10面)
ユニーク教育(98) ―― 岡山中学・高等学校
“知育の総本山”目指す
| 岡山中学・高等学校(岡山県岡山市箕島)の佃幸男校長は「学校教育における知育の偏重が批判され、知識そのものまでが軽視されるような傾向があるように思われるが、子供が今まで知らなかったことを知ったり、考えたり、判断したり、推理したり、創造したりすることは、大部分、知育にかかわるものだ」と、知識の効用を、断片的な受験知識の詰め込みと考えることに対して批判する。 この方針の下に、「人に優しく(友愛)、己に厳しく(自律)、勉強はたゆみなく(進取)」を教育目標に掲げ、人間的成長を育成するとともに、幅広い知識の修得にも力を入れている。 同校では“知育の総本山”を目指すために、(1)暗記の強制を含めた知的訓練(2)昼食後の十分間読書(3)卒論―の三点に力を注いでいる。 十分間読書の最大の狙いは「学力の向上につながりますが、それと同時に生徒が自分で考えることのできる力を身に付けること」(佃校長)と言う。二カ月足らずの間で十一冊読破した生徒もいる。 同校は中学三年になると、卒業論文を提出させることにしている。生徒が自分を取り巻く環境・社会・文化に関心を持ち認識を深め、それに関する文献を読んだり、実際に現場で取材をしたりして、自分の考えをまとめ、論理的に表現する力をつけさせることが目標だ。 昨年度の優秀作品として校内で表彰された作品「鉄道の発達と人々の生活」は、中学三年生とは思えないほどの調査の跡がうかがえる。 JR西日本の京阪神を中心とするアーバンネットと呼ばれる地域では、全国でもトップレベルのサービスが行われているが、岡山県では最も低レベルのサービスとなっている現状を取り上げ、その原因を究明し、両サービスの格差是正のための方策を訴えている。実際に岡山県内にある山陽本線・瀬戸大橋沿いの駅、および兵庫県内の山陽本線・東海道本線沿いの駅を訪ね、各駅の設備の状況を詳細に調べ写真に撮った。訪問した駅は六十以上に上ったという。 ほかにも生徒が自己を表現する場が与えられている。中学生になって二週間ほどして書く感想文(文集『萌生』)、高校の選抜試験を通りほどなくして書く感想文(文集『新樹』)、そして大学へ入学した卒業生が在校生に贈る文集『道』がある。 『萌生』には中学生になった時の初心が収められており、目標が見えなくなった時や迷いそうになった時に“原点に戻る”ために、この文集を読み返す。ここには「友達をたくさんつくること、部活を頑張ること、勉強をしっかりすること」を目標として立てた生徒、「医者になりたい」と希望を持った生徒、「寮でしっかり勉強したい」と語っている生徒など、新たなスタートラインに立った素直な気持ちが述べられている。 『新樹』には目前に迫った大学受験のことや、将来の職業などに対する気持ちがつづられている。 『道』には中学高校時代の六年間を振り返り楽しい、また苦しい思い出、大学受験の様子、大学での生活などに触れられており、後輩への道標を示している。そして、自らの新たな道を踏み出す確認としている。 同校の特色としてぜひ挙げなければならないのが寮生活だ。同校の生徒の約二割(十三年度は百八十二人)が寮生活を体験している。「中学から六年間、寮でもまれた生徒はしっかりしている」と佃校長は誇る。 佃校長は校長室を訪れる生徒に本を一冊与えることがある。本は『福翁自伝』、『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著)、『旅人』(湯川秀樹著)。物の考え方や人間としての生き方を教えている本だからと薦めている。
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