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記事2001年9月23日 24号 (5面) 
21世紀担う短期高等教育機関の教育改革
事例報告
湘南短期大学(神奈川県横須賀市) 教務部入試担当 山川 紀子

実学志向を鮮明に国文学科を改組
ヒューマンコミュニケーション学科
 
 近年の社会構造の変化や経済的動向の影響など、時代変化の波を受けて、短大受験生の志望傾向は実学志向の強い学科や四年制大学志向へと変化を見せている。
 本学としてはこの現実を受け止め、多くの高校生や入学後の学生が関心を持ち、生涯にわたり継続すべき学習・教育内容を検討した結果、「国文学科」を廃止し、「人と人との心のつながり」をキーワードに、より実学志向を鮮明にした新学科「ヒューマンコミュニケーション学科」へと改組することとした。
 現在、マルチメディアの発達やコンピュータネットワークの発展によるコミュニケーション手段の多様化は、人間相互の情報伝達環境に大きな変化をもたらし、私達を取り巻く生活や仕事に大きな影響を与えている。IT革命により、今後更に加速する情報化社会の中で、各個人が物質的に恵まれ、豊富な情報を自由に享受できる傾向はさらに強まっているが、そこにはさまざまな問題が生じてきている。人と人とが向き合うことなく、時間と空間を越え、様々な情報通信機器を通じてコミュニケーションが図れることが可能になった結果、本来の人間性を忘れ、時として自己中心的になり、対人関係や社会意識が希薄になってゆく状況が生まれてきている。また個人個人は社会を構成する他の人々への「自己表現」や意思の伝達が未熟で、人間相互の信頼感、連帯感を喪失している場合も見られる。
 本学は「ヒューマンコミュニケーション」こそ、このような問題を解決し、人間本来の「フェイス トゥ
 フェイス」を原点とした、人間味あふれる伝達を尊重するものとして、心の問題、生き方、価値観、自己分析力、的確な判断力、社会的マナー等の多岐にわたる科目を設定し、学ばせていくこととした。
 また本学では、男女が共生社会でそれぞれの多様性を認識し、理解し合う機会を教育の場に設けたいと考え、男女共学へと踏み切った。
 「ヒューマンコミュニケーション学科」では教育の柱を次のように考えている。
 〇日本人、外国人を問わず他者を思いやり、理解し合うための豊かな人間性も含めたコミュニケーション能力。
 〇国際間のネットワークが発達した社会において必要となる情報を収集、処理、応用するうえでの情報リテラシー。
 〇資格取得により、即戦力として活躍できるビジネス実務。
 〇情報化・国際化にあって、様々な国の人々や文化に接するための標準コミュニケーション言語として習得する英会話及び英語活用能力。
 〇社会や他者に対する興味や関心を抱き、問題追求・解決のベースとなる教養。
 さらにチューター制度の採用、能力別の小クラス編成、五時限目を利用した資格取得のための特別講座等、多様化した学生に対して、一人一人の個性を重視する教育システムを作り上げた。男子にも広く門戸を開放し、志願者の拡大を図るとともに、学生の就職、編入等の希望を明確化させた上で、学生各自がそれぞれの目標を達成できるようなシステムとなっている。
 また、地元で数少ない高等教育機関として、その役割はますます大きくなっており、従来より実学志向の強い学科へと変化させることを目指し、積極性と行動力を備えた人材を育成していきたいと考える。



調布学園短期大学(川崎市麻生区) 入学広報室長 外池 昇

2学科改組、校名も変更
人間文化学科に3コース

 まず本学の改組転換についてご説明いたします。本学は、従前の調布学園短期大学に置かれていた英語コミュニケーション学科(定員百七十名)と日本語日本文化学科(定員百三十名)を改組して、平成十四年四月に人間文化学科(定員百五十名)を設けるものです。この人間文化学科に人間社会コース、日本語文化コース、実践英語コースを設けます。
 同時にこれまで称していた校名、調布学園短期大学を、同じく平成十四年四月に田園調布学園大学短期大学部と改めます。これは、短期大学におかれていた人間福祉学科を人間福祉学部として四年制大学を新設するのにともない、学園の発祥の地である田園調布を学園のアイデンティティーとして明確に意識することを目指した学園全体のプランによるものです。いずれにせよ本学は、昭和四十二年に調布学園女子短期大学として英語科の単科大学として発足し、平成十一年に全学共学とした以来の大きな転換期を迎えます。
 高校生の四年制大学への指向、また専門学校の人気にみられる実学指向が顕著になって久しいわけですが、その間にあって教養系の短期大学はややもすると埋没の傾向にあります。本短期大学部の教育内容も、コース名を一見してわかる通り、やはり教養系といえるでしょう。もちろん若年世代の実学指向にも充分な理由のあることではありますが、あらためて読み、書き、話すことのトレーニングを重ね、また日本、アジア、広く世界の文化に対する認識を深めるために二年間を学生として過ごすことは、高校卒業後の進路として充分にその価値は存在するものと考えております。
 人間文化学科に設けられるコースのうち、日本語文化コース・実践英語コースは、既存の二学科(英語コミュニケーション学科・日本語日本文化学科)を基盤としたものです。八月の改組認可後の問い合わせには既存の学科名称によったものが多く、その点ではこれまでの学科名称を踏襲したコースの名称が、人間文化学科の理解を助けていると思われます。
 また、人間社会コースは既存の二学科の内容からは大きく踏み出しています。従来は文科系の短期大学というと英文・国文等の印象が強かったわけですが、人間社会コースは経済・法学・社会学等の社会科学系の科目を多く取り入れ、近年増加の傾向を示している男子学生指向に対応したものとなっております。文化系に加えて社会科学系科目の履修は、卒業後の四年制大学編入の幅を広げることにも直結します。
 また、既存の英語コミュニケーション学科・日本語日本文化学科では外国人留学生を受け入れてきましたが、人間文化学科でも引き続き積極的に受け入れることになっています。留学生の国籍は中華人民共和国・大韓民国・中華民国等とさまざまですが、全体に学習意欲が高く、机を並べて学習する日本の高校等の出身学生にもよい刺激となっています。



山村女子短期大学(埼玉県鳩山市) 副学長 山村 穂高

豊かな人間性、実践力
コミュニケーション学科
 
 1.コミュニケーション学科への改組転換の意義について
 現代社会は、国際化、情報化、価値観の多様化等により、混迷の度合いを深めるばかりであり、より豊かな人間性を育むことの必要性が指摘されている。とりわけ、教育的な視点から、若者が自分らしさを見つけて、社会人として主体性を持って生きていくことは、現代社会における大きな課題のひとつであり、本学にとっても、心と心の絆を重視しながらコミュニケーション能力を向上させる教育をさらに推進することが重要課題なのである。
 このような観点から、本学では、豊かな人間性を育みながら、実践的なコミュニケーション能力を備え、地域社会に貢献できる人材の養成を目指し、国際文化科を改組し、コミュニケーション学科を設置することとした。

 2.コミュニケーション学科のコースについて
 コミュニケーション能力を向上させるに当たっては、次の三つのコースを設定し、履修モデルにしたがって、科目を履修させていく予定である。
 (1)心理コミュニケーションコース
 心理学や福祉の科目を通して、自己理解、他者理解、自己表現力が養われ、卒業後は、販売、事務、接客など対人関係が重視される仕事に幅広く従事できるように配慮されている。また、社会福祉主事任用資格、福祉住環境コーディネーター、ピアヘルパーなどの資格を取得することができ、福祉関係への就職にも対応している。
 (2)言語コミュニケーションコース
 英語、中国語の実践的コミュニケーション能力を養うことができ、英語、中国語会話を必要とする仕事に従事することができる。英検やTOEIC、ファイナンシャルプランナーなどコンピュータ関係の資格と組み合わせて履修すれば、銀行をはじめとする金融関連企業への就職が見込め、また、国内旅行業務取扱主任者の資格と組み合わせれば、ホテル、旅行代理店、航空会社などへの就職にも対応できる。
 (3)ビジネスコミュニケーションコース
 ワープロ、表計算はもとより、販売士、簿記などビジネス実務に関して、基礎的な能力を養うことができる。
 ファイナンシャルプランナー、MOUS、国内旅行業務取扱主任者などの資格を取得すれば、金融、販売、事務関係の就職に対応できる。

 3.保育学科の新設について(設置認可申請中)
 本学では、コミュニケーション学科のほか、保育学科を申請している。保育学科においては、命の尊さを教えられ、カウンセリングができる「骨太保育士」を養成することを目指し、21世紀に向けて、子どもたちを健全育成できる優秀な人材を育てていこうと考えている。
 カリキュラム内容は、保育所はもちろんのこと、動物園や、地球観測センターなど多彩な校外実習を予定しており、体験的に学習できるよう工夫されている。
 カリキュラム内容は、保育所はもちろんのこと、動物園や、地球観測センターなど多彩な校外実習を予定しており、体験的に学習できるよう工夫されている。
 卒業後の就職については、保育所、乳児院、社会福祉協議会、児童福祉施設、心身障害児施設、特別老人ホームなど、幅広い就職先を想定している。



夙川学院短期大学(兵庫県西宮市) 教授 高島 幸次

“通心力”、通信力育てる
人間コミュニケーション学科

 最近、新聞を読むのがつらい。理解しがたい陰惨な事件が頻発しているからである。しかし、理解しがたいから、悲惨すぎるからと、現実から目をそらして済ませるわけにはいかない。それぞれの事件については、個々の原因説明は可能だろうが、多くの事件の背景には、現代社会の抱える共通した病巣が横たわっているからである。特に、十代や二十代の若者による幼児殺傷事件などが相次ぐ背景に、「コミュニケーションに苦手な若者」の姿が窺えることは識者の語るところである。
 本学が「人間コミュニケーション学科」の来年四月開設を決めたのは、もちろん、これらの事件と直接的な因果関係はないが、かといって、まったく無関係だとも言い切れない。それは他の大学・短大で新設・改組転換されている「コミュニケーション」を冠した学部・学科についても同様であろう。
 本学の「人間コミュニケーション学科」は、旧来の英語英文学科を改組転換するものである。減少傾向にある受験生数の増加を企図したものであることは否定しないが、それだけではない。単なる看板の書き換えだけで、目先の物珍しさだけで、高校生の関心を惹き付けられる時代ではない。大切なのは、新しい学科が社会の需要に、高校生の関心に、どれだけ応え得るかということである。看板ではなく、その教育内容なのである。
 そこで本学では、二十一世紀の社会人にどのようなコミュニケーション・スキルが必要なのかを分析し、「人間関係・心理系」「観光・地域文化系」「情報コミュニケーション系」の三系からなる「人間コミュニケーション学科」を新設することにした。専攻やコースとしないで「系」としたのは、三系間の相互の柔軟な習得を可能とするためである。
 「人間関係・心理系」では、社会的存在としての個人の役割を探求するカリキュラムを中心とし、人と人との直接的なコミュニケーション・スキルの習得を主眼とする。
 「観光・地域文化系」では、国際化社会における人間の共存を探求するカリキュラムを中心とし、地域を介した異文化間のコミュニケーション・スキルの習得を主眼とする。
 「情報コミュニケーション系」では、情報化社会における個性の伝達を探求するカリキュラムを中心とし、コンピュータなどの情報機器によるコミュニケーション・スキルの習得を主眼とする。
 このような新学科の趣旨を高校生に周知するため、以下のようなメッセージを、受験生向けのパンフレットに載せた。キャッチフレーズ的な文章ではあるが、新学科の狙いが象徴的に説明されているので、参考までに引用しておきたい。
 〇たくさんのメル友はいるけれど、本当に心と心はつながっているのだろうか?
 〇新しい世界へのチャレンジにしりごみして、日常的な生活空間に閉じこもっていていいのだろうか?
 〇毎日のようにリニューアルされていく情報機器を使いこなしていけるだろうか?
 〇こんな疑問を感じているあなたのために、夙川学院短期大学では人間コミュニケーション学科を開設します。心と心を通わせる『通心力』、新しい地域へ羽ばたく力を養う『通新力』、情報技術の向上を目指す『通信力』を育てるカリキュラムを準備しています。


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