こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2001年9月23日号二ュース >> VIEW

記事2001年9月23日 24号 (4面) 
私立短期大学は改組転換でどのように変わったか
ユニークな教育を求め活性化
より魅力ある短期大学づくりに向けて、新学科の設置など積極的に改組転換に取り組む短期大学が増えている。ここでは来年度から改組転換により新学科を設置する私立短期大学のうち、五月末に申請し、七月に認可された各短期大学に改組転換の意義とその必要性、新学科の内容・特色、学生確保の見通し、今後の取り組みなどについて原稿をお寄せいただいた。(編集部)

静岡英和女学院短期大学(静岡市) 教授 小嶋 善行

文系3学科を整備拡充
現代コミュニケーション学科
 
 〇改組転換の意義と必要性
 (学内)短期大学文系三学科の発展的整備拡充を図る
 英文学科、国文学科、国際教養学科を改組転換し、キリスト教女子教育の建学の精神を堅持しつつ、新たな視点から人間相互のコミュニケーションのあり方を探究する「現代コミュニケーション学科」を設置する。一方、同文系三学科から四年制大学への改組も同時に進行中であるが、開設の暁には、中学・高等学校、短期大学、四年制大学と、静岡英和のキリスト教一貫教育体制がより堅固なものとなり、一貫した人格教育、人間教育を施すことが期待できる。
 (学外)現代社会の急激な変化に応えるコミュニケーション能力の養成
 二十一世紀を迎え、情報化、国際化が急激に進み、社会の様相が複雑化し、人間の価値観も多様化してきている。これまでの言語文化活動における「ひずみ」が社会のあちこちで見られ、コンピュータを中心としたIT革命が加速化している。
 本学科では深い人間理解と教養に基づき、コミュニケーションの基層を心理学的観点から見直し、言語とコンピュータの運用能力を高め、他者と共存できる自立した、新しい価値観を現代社会に実現していく人材の育成を目指す。

 〇新学科の内容とカリキュラムの特色
 「現代コミュニケーション学科」の内容は、端的に「教養と実務能力の養成」と言うことができる。そして教育の目指すところは、二年間という短期間に日本語、英語、それにコンピュータの運用能力を高め、心理学的側面からコミュニケーション能力を促進させること、さらに、学校、職場、地域、家庭のいずれの場においても必要となる人間理解のための文化的教養を養い、複雑極まる現代社会と国際社会に対応できる基礎的資質を養成し、社会に出て即戦力となる有為な人材を送り出すことである。
 カリキュラムは大きく基礎教育科目群と専門教育科目群に分かれ、基礎教育科目群では主に情報処理、心理学や人間理解のための科目を、専門教育科目群では種々のコミュニケーション論をはじめ、日本語、英語の表現能力の充実を図る科目、ビジネス社会を基礎から学ぶ科目、さらに法律についての専門知識を養成する科目を配置した。また、学生が就職を視野にいれて、各自の興味・関心に応じて履修できるように、「ビジネス実務」「観光サービス」「英語コミュニケーション」「メディア表現」などの履修モデルを提示し、種々の資格・認定・検定取得支援科目を配置した。さらに、学生一人ひとりの異なった要望に応えられるように、きめ細かい指導を目指して、一年次の「基礎ゼミ」、二年次の「専門演習」と、少人数のゼミ形式の授業を用意している。フィールドワーク科目群では、実業界へのソフトランディングを目指したインターンシップや、英和独自の早期英語教育資格認定証が取得できる幼稚園での教育実習も履修できる。この他、カナダ姉妹校への長期(九カ月)と短期(三カ月)の留学、これはカナダで取得した単位は「現代コミュニケーション学科」の単位に読み替え可能。さらに、本大学人間社会学科(認可申請中)やその他の四年制大学の三年次編入へも強力に支援する。

 〇学生確保の見通しと卒業後の進路
 静岡県内の十八歳人口の動向および平成十二年十二月に実施したアンケート調査等から進学需要を推計すると、平成十四年開学年度の「現代コミュニケーション学科」への志願者は十分見込まれる。また、入試方法の更なる改善等により学生確保は十分可能と考えられる。本学はこれまで九〇%余の高い就職率を達成し、「就職の英和」という世評を享受してきている。職種の点でも、各種サービス業をはじめ、銀行、証券・保険会社等の金融機関、製造・卸・販売業等からの求人が多いことから見て、地域社会からの信用が極めて厚いことが分かる。従って、改組後も良好な就職状況を維持することが十分期待できる。



九州龍谷短期大学(佐賀県烏栖市) 学生部長 藤 能成

人と人との繋がり学ぶ
日本で初めて人間コミュニティ学科

 1.新学期開設に至る経緯
 本学は、昭和二十七年に佐賀龍谷短期大学として佐賀市に設立され、平成十四年度には開学五十周年を迎える。昭和二十七年に仏教科(二十名)、昭和二十九年に国文科(六十名)、昭和三十七年、保育科(五十名)を設置し、三学科体制が確立した。昭和六十年には、四年制大学開設を目指し、佐賀市の校地から約三十キロメートル離れた鳥栖市の現在地へと移転し、校名も九州龍谷短期大学へと変更した。平成三年度より臨時的定員増を行い、仏教科は入学定員四十名(臨定二十名)、国文科は百名(臨定四十名)となって、入学生の増加に対応してきた。しかし現在まで順調に入学定員を確保しているのは保育学科のみで、国文科は平成八年度、仏教科も平成九年度を境に定員割れの状況が続いている。その打開策として本年度より、仏教科を仏教学科、国文科を日本語・日本文化学科、保育科を保育学科へと学科名称を変更したが、入学生の増加には結びつかなかった。
 このような中で、本学は地域に貢献できる教育機関としての四大への昇格を目指し、社会学系統の四大設置計画を立案、地元の市等に資金助成を求めたが諸般の事情によりかなわず、次善の策として、昨年秋、急遽、短大としての改組によって学内改革を進めることを決めたのである。これに従い、仏教学科四十名と日本語・日本文化学科百名の定員と教員組織をもとに、本年五月末、文部科学省に人間コミュニティ学科(平成十四年四月開設)の設置を申請し(同種の学科=随時申請)、七月末に認可された。

 2.人間コミュニティ学科の理念と特色
 「人間コミュニティ学科」は、日本で初めての名称である。人間とコミュニティ(共同社会)、すなわち人と人との繋がりについて学ぶ。現代社会は、人間が人間らしく生きることが非常に困難な状況にある。学校現場では、不登校、引きこもり、いじめをはじめとする多くの問題を抱えている。このような中で、強く豊かな人間性と精神性を身につけ、企業や地域社会をはじめとするあらゆる組織・人間関係の中で、自己の能力を発揮し、また数々の問題にも的確に対応・処理する能力を備えた人材を育成することが人間コミュニティ学科の教育理念である。
 人間コミュニティ学科における実践的、応用的なカリキュラムを実現するために、旧学科体制の中では「従」の位置付けにあった社会福祉主事任用資格課程、ビジネス実務士課程などの資格課程を前面に出し、そこにカウンセリング、地域社会、社会調査関係科目を加えたものを専門教育科目の柱として位置付け、従来の仏教、日本語・日本文化関係科目を大幅に削り「従」とする、主従逆転によるカリキュラムを策定した。
 教養科目としては、建学の精神を教授する仏教入門、真宗入門、日本語表現法Iを必修科目とし、また外国語科目は、学生の負担を減らすために科目数を減らした。専門基礎科目として、人間関係論、暮らしと人権、ソーシャルマナー、コミュニティ論、専門演習、パソコン演習Iを必修科目とした。専門応用科目(選択科目)としては、社会福祉、カウンセリング、地域コミュニティ、社会調査に関する科目、ビジネス実務、日本文化、仏教等に関する科目群を置き、三系七コースの履修モデルを設定している。すなわち人間文化系(仏教コース、日本文化コース、図書館司書コース)、福祉カウンセリング系(地域福祉コース、カウンセリングコース)、情報コミュニティ系(地域コミュニティコース、情報ビジネスコース)である。
 また、インターンシップ(事業所実習)、社会調査実習、社会福祉実習、宗教コミュニティ実習等の多彩な実習科目を開講し、地域社会との連携、および体験を通した多様な学修の機会を与えている。
 取得できる資格には、図書館司書、社会福祉主事任用資格、ホームヘルパー二級、カウンセリング基礎課程修了証、レクリエーションインストラクター、ビジネス実務士、社会調査アシスタント、本願寺派教師資格等があり、ほとんどの資格は卒業単位の中で取得できるようになっている。

 3.学生確保の見通し
 これまでの仏教学科、日本語・日本文化学科での入学実績を基に、最低でも八十名の入学生の確保を目指している。四大や専門学校への志向が高まる中、短大は保育、福祉、食物栄養系以外の専攻では入学生の確保は容易ではないが、新聞への全面広告、高校配付用ビデオの作成をはじめ、県内外への高校訪問により、学科内容の理解を促進し、入学定員の充足を図っていきたい。



市邨学園短期大学(愛知県犬山市) 副学長 水野 良一 教授 武田 康雄

激動社会に応え改組
現代コミュニケーション学科
 
 ここ数年、全国的に短大離れが進行し、短大が女子に対する高等教育の標準的な担い手として最も適しているという従来の期待が失われてきています。また、社会、経済、文化すべての分野でグローバル化が急速に進み、国際的な流動性が高まっています。このことは昨年の大学審議会答申(審議の概要)「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について」においてすでに明らかにされている通りです。
 本学においては、こうした新しい社会情勢の分析に基づいて総合的に判断した結果、英語科を改組転換し、「現代コミュニケーション学科」を開設することになりました。改組転換の理念、趣旨は次の通りです。
 (1)激しく変化し続ける社会の新しい要請に適切に応えることにより、短大は今後も高等教育機関としてその役割を果たすことができる。
 (2)全国的な新しい傾向の一つとしてコミュニケーション関係の学部、学科の新増設が見られ、社会の新しい需要に応えている。また、本学の人的条件からコミュニケーション関係の学科への改組転換が最も適している。
 右記の理念、趣旨は次のように、より具体的に表現することができます。(1)は社会がどのように変化し、そしてその新しい要請がどのようなものであるかということであり、(2)は新学科を「現代コミュニケーション学科」とすることになった本学の内部状況(条件)がどのようなものであったかということです。これらは当然、新学科設立の教育理念、つまり新学科の開設の意義、カリキュラムの内容、そして学生の卒業後の進路等と大きくかかわるものです。そこで次にその観点から個々の項目について詳しく述べてみます。
 まず、新学科開設の意義、カリキュラムの内容等にかかわる、前者の「変化する社会」を次の三つの視点から捉えました。1.少子高齢化の進行、2.経済面における国際競争の激化と情報社会の到来、そして3.国際化の進行です。ご存じのように二〇二〇年には六十五歳以上の高齢者は全人口の二六%を超えると予想されています。また、すでに種々の企業に見られる国際的な合従連衡は、大小を問わず企業がかつてない国際競争にさらされていることを表しています。さらに、社会のあらゆる分野で、人、物、文化の国境を越えた交流、往来は増大しています。情報化はそれらを一層加速しています。
 こうした分析から、これからは社会の様々の場面で人と人とのコミュニケーションがますます重要になると判断しました。そこで新学科は、人間社会をコミュニケーションという視点から捉え直し、その新しい視点から見た社会の需要に応えうる人材養成の場とすることにしました。そして、既述の三つの視点に対応したそれぞれの科目群を用意し、カリキュラムを編成しました。具体的には、まず様々な分野のコミュニケーションに関する基礎科目群をおき、その上に1に対しては人間理解、人間関係構築のための心理学を中心とした科目群、2に対しては現代ビジネスの知識や情報技術を身につけるための科目群、そして3に対しては国際理解を深めるための英会話等の語学科目群と異文化理解のための文化関連科目群です。
 次に、先に触れた(2)と深く関連することですが、こうしたカリキュラムの編成は本学特有の事情に助けられて可能になりました。それは、当短大には英語科のほかに商経科、生活文化学科、保育科があり、心理学、ビジネス、内外文化にかかわるそれぞれの専門分野の人材に恵まれていたことです。新学科の教育理念実現のため、新たに就任を依頼した教員もおりますが、本学の専任教員の配置転換や兼任により、新学科の態勢はよりスムーズに整うことになりました。
 幸いにも認可を受けた今、入学者の確保と、二年後の学生の就職先の確保は、新学科ゆえに教育の中身と同様、一層重要な課題ですが、王道はなく、地道な努力の積み重ねが必要と考えています。

静岡英和女学院短期大学


九州龍谷短期大学


市邨学園短期大学

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞