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記事2001年9月23日 24号 (2面) 
実践通し具体策
中教審討議
【教育制度分科会】 

教養教育の在り方自由討議
ワーキンググループ設置も決める

 中央教育審議会の教育制度分科会は九月五日、東京・霞が関の文部科学省別館で第七回会合を開き、新しい時代の教養教育の在り方について委員間で自由討議を行った。また、答申起草に向けたワーキンググループの設置も決めた。次回の分科会会合が十月十日に予定されており、これまでに二回、ワーキンググループとしての会合が開かれる予定だ。
 自由討議では、田村哲夫・渋谷教育学園理事長がマナーについての教育を教養教育の中に入れるべきだと主張。田村氏はマナーとは心の習慣とも呼ぶべきものであり、文化とはまさしくマナーの総称であると指摘。教養教育は最終的には人と人とのつながりを考えるものであるとも述べ、マナーについての教育を意図的に教養教育の中に入れる必要性を力説した。田村氏の意見に対しては「形から入っていくことで、それが身体化されるという日本人の伝統的教育観と合っている。修養的教養は必要だ」(竹内洋・京都大学大学院教育学研究科教授)などと賛意を示す意見と、そこまで答申の中に書き込む必要があるのかと否定的な見方を示す委員とに立場が分かれた。
 高等教育段階における教養教育の在り方についても議論が行われた。梶田叡一・京都ノートルダム女子大学長は、教育は人材育成であるという教育観を払拭すべきだと指摘。専門大学院が設置され、大学院重点化が進められているいまだからこそ、人間観、社会観、人間としての深さ、広さを育てることが重要だと述べた。田村氏は大学の教養教育についてのコア・カリキュラムを例示的に示すべきではないかと問題提起した。また、竹内氏は、法学部や経済学部といった、プロフェッショナル・スクール的な伝統的学部でも、実態はリベラルアーツ的であり、こうした学部での教養教育の在り方を考え直すべきだと指摘した。
 
 この日、設置が決まったワーキンググループのメンバーは次の通り。

▽木村孟・大学評価・学位授与機構長
▽田村哲夫・渋谷教育学園理事長・渋谷幕張中学・高等学校長
▽永井多惠子・世田谷文化生活情報センター館長
▽阿部謹也・共立女子大学・短期大学長
▽杉田豊・静岡県教育委員会教育長
▽竹内洋・京都大学大学院教育学研究科教授

【スポーツ・青少年分科会】

子供の体力向上で事例報告
欠席児童が半減に

 中央教育審議会のスポーツ・青少年分科会は九月五日、東京・霞が関の東海大学校友会館で第六回総会を開いた。子どもの体力向上に向けて先進的な取り組みを行っている二つの自治体と小学校一校から事例報告が行われた。このうち、名古屋市立菊住小学校の千葉宣昭教頭は、運動遊びを通じて子どもの体力向上に取り組んでおり、不登校、いじめは一件もなく、欠席児童も半減したとその成果を報告した。
 菊住小学校は平成十年度から三年間、文部省(当時)から「体力つくり推進校」に、名古屋市教育委員会から「新世紀学校つくり推進校」の指定を受けた。子どもたちが友達と触れ合いながら運動を楽しんだり、自分の体力つくりに励んだりする中で、相手を認め合う態度を育て、心と体のバランスの取れた児童にしようと、教科体育、生活体育、健康生活での実践を進めた。生活体育の取り組みとしては、朝、始業前の十五分間を業前体育(ふれあいタイム)の時間とし、心や体をほぐす体操をしたり、同学年や異学年の友人と触れ合いながら運動をすることで、児童間のコミュニケーションが活発になり、児童たちの遊びが多様化し、自分たちで新しい遊びを開発し、こんな遊びがしたいと教師に要望するなど、自主性も育ってきたと、千葉氏は報告。指定研究の期間は終わったが、今後も児童の体力つくりを主眼とした実践を進めていきたいとした。
 群馬県太田市の西牧正行・市長室スポーツ課指導主事は、同市でジュニアスポーツの育成支援の一環として、子どもたちが日常的にスポーツに親しむことのできる環境づくりを目的に「おおたスポーツ学校」を昨年六月に開校したことを発表した。運営母体は市内のスポーツ関係団体、地域、学校などの代表者で構成された委員会で、現在、十種類のスポーツをそれぞれ月二回のペースで「部活動」として、小中学生対象に教えていると報告。地域スポーツを育てていきたい、との抱負も述べた。
 富山県福野町教育委員会の重原一雄・体育課長は三年前、同町で「ふくのスポーツクラブ」を設立、地域に根ざし、開かれたクラブ活動を実践してきたことを発表。組織、施設、事業、活動の四つのオープン化に努めた結果、人口一万五千人の町で、現在、三千人以上の町民がクラブの会員であること、福野小学校・中学校で実施した新体力テスト、スポーツテストの結果、平成十一―十三年度の三年間で着実に記録が伸び続けていることを成果として挙げた。

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