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記事2001年9月23日 24号 (1面) 
中等教育の大変革
サイエンスイングリッシュなど新たな研究開発校続々
学習指導要領に縛られず特定分野に重点
私学は特色教育更に磨き必要 14年度概算要求
 教育改革は現在急ピッチで進行中だが、来年度から「スーパーサイエンスハイスクール」や「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール」など新たな事業が次々と立ち上がる。いずれも文部科学省が平成十四年度予算として財務省に要求しているもの。今後、査定の段階で予算規模が縮小される可能性はあるが、学習指導要領に縛られず、理科や数学、英語など特定の分野に重点を置いた、あるいは特化した教育は中等教育の世界を大きく変えかねない。事業の大半は私立学校も対象となっているものの、研究校の主体はやっぱり公立。私立学校は今までにも増して特色ある教育に磨きをかける必要に迫られてきた。
 
【学力向上フロンティアスクール】
 
 この事業は、全国で千校程度の小・中学校を「学力向上フロンティアスクール」に指定、(1)発展的な指導、補充的な指導など個に応じた指導や、小学校における教科担任制の実践的研究を行うほか、(2)個に応じた指導のための教師用指導資料の作成、(3)「自ら学び自ら考える力」の育成のための教材開発を進める。
 さらに(4)教育事務所等を単位に各フロンティアスクールを核とする研究協議会を立ち上げ、事業の成果を全国に普及させていく。そのために必要な予算として十一億三十七万七千円を財務省に要求している。ただしこの要求は構造改革特別要求枠を使っての要求のため、九月末に予算要求額が減額される可能性がある。
 理解の早い児童生徒のための発展的な学習や、反対に理解に時間がかかる児童生徒のための学習に関しては、教員定数を加配して、少人数授業を行うことにしており、発展的な学習に関しては、学習指導要領の教育内容を深化あるいは幅を広げる予定だ。先取り教育ではないが、場合によっては学習指導要領外の内容も扱うことになる。
 私立の小・中学校に関して同省の初等中等教育局教育課程課では、この事業の対象とすることを検討しているが、今年度から始まった「第七次教職員定数改善計画」では私立学校の手当てができないこと、入学生は選抜試験を経た児童生徒のため、その研究結果を全国に普及できるかなどの点が課題となっている。

【新しいタイプの公立学校】
 
 総理の私的諮問機関だった教育改革国民会議が昨年十二月に提言した「新しいタイプの学校」(コミュニティ・スクール等)や今年一月に策定された文部科学省の「二十一世紀教育新生プラン」などを踏まえ、新しいタイプの学校の設置・運営上の課題や可能性等を、五校の研究校での実践を通して研究していく。実践研究に関しては教育委員会に委嘱、実践研究校を指定、必要な経費は文部科学省が支出する。研究期間は三年。そのための予算として同省は三千八百九十七万一千円を財務省に要求している。
 新しいタイプの学校に関しては、今後、中央教育審議会で検討が予定されているが、実践研究成果はその資料ともなる。
 教育改革国民会議は新しいタイプの学校に関して、地域が運営に参画する、校長に教員採用権を与えるなどの方向を示したが、今回の研究では、学校評議員制度を活用して地域が学校の運営に参画する仕組みづくりの研究、これまで以上に人事や予算面で校長の裁量の拡大等の検討を進める。
 また総理の公的諮問機関である総合規制改革会議も今年七月、新しいタイプの公立学校(コミュニティ・スクール)を市町村が設置できるよう法制度整備を含めた積極的な検討を十四年度中に行うべきだと求めており、同時に現行法制下では、校長を公募し、教員について校長の推薦が尊重されるとともに、学校と協力して運営に当たる「地域学校協議会」を学校ごとに設置するなどの仕組みを備えた、自主的な学校運営の実験を行うモデル校作りを十四年度内に実施するよう求めている。
 
【スーパーサイエンスハイスクール】

 科学技術、理科・数学教育を重点的に行う学校(高校、中高一貫教育校)を研究開発学校として指定して、理科、数学に重点を置いたカリキュラムの開発、大学や研究機関等との効果的な連携方策の研究を進め、将来有為な科学技術系人材を育成するのが、この事業の目的。全国で二十校程度を指定する計画で、研究期間は三年。
 そのための予算として七億千九百十二万千円を文部科学省が財務省に要求しているが、この要求は構造改革特別要求枠を使ってのもの。そのため九月末に予算要求額が減額される可能性がある。
 具体的には(1)学習指導要領によらない教育課程の編成等により、高校及び中高一貫校における理科・数学に重点をおいたカリキュラムの開発(2)大学や研究機関等と連携し、生徒が大学で授業を受講、大学の教員や研究者が学校で授業を行うなど、関係機関等との連携方策の研究(3)論理的思考力、創造性や独創性等を一層高めるための指導方法等の研究(4)科学クラブ等の活動の充実(5)トップクラスの研究者や技術者等との交流、先端技術との出合い、全国のスーパーサイエンスハイスクールの生徒相互の交流を実施する計画。研究開発校のため、学習指導要領に縛られることはなく、極端な場合、理科と数学のみのカリキュラムも可能だ。
 スーパーサイエンスハイスクールには、教員の加配、必要な実験機材、消耗品等の整備、科学技術系クラブの活動経費などが手当てされる。この事業の対象に私立学校も含まれる。
 
【スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール】

 この事業は英語教育を重点的に行う高校・中等教育学校二十校を研究開発学校に指定し、(1)英語教育を重視したカリキュラムの開発(2)一部の教科を英語によって行う教育(3)大学や海外の姉妹校との効果的な連携方策の実践的研究などを行うもので、研究期間は三年。文部科学省はそのための予算として一億四十六万円を現在、財務省に要求している。研究開発学校ということから学習指導要領にとらわれず英語教育に特化したカリキュラム編成ができる。私立学校もこの事業の対象となることができる。
 この事業に指定された学校には研究開発校よりも多少多い額の予算が支出される。

2千校の理科 教育推進校も

 このほかにも公私立小・中・高校等二千校を対象とした理科教育設備の重点的整備事業「理科教育推進校」(予算要求額二十億円、構造改革特別要求枠、補助率二分の一・沖縄は四分の三)や英語以外の外国語教育に取り組んでいる十の都道府県を指定して域内の高校五校、計五十校で実践的な研究を二年間かけて行うといった新規事業もある(予算要求額三千百八十二万五千円)。

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