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記事2001年9月13日 23号 (2面) 
フードスペシャリスト養成課程研修会を開催
日本フードスペシャリスト協会
食品の官能評価・鑑別テーマ
山口・東京農大教授“グローバルな視点が必要”
 新しい食の専門職、フードスペシャリストを養成している大学・短期大学でつくる「日本フードスペシャリスト協会」(田村真八郎会長=元農林水産省食品総合研究所長)は八月二十三、二十四の両日、茨城県つくば市の独立行政法人食品総合研究所で第二回フードスペシャリスト養成課程研修会を開いた。全国から約八十人の教員らが参加。初日には三つの講演が行われたほか、同研究所を見学した。
 今回の研修会のテーマは、フードスペシャリストの活躍の場が流通や外食産業など消費者に近い業種であり、食品の品質の鑑別・検査に関する知識と技術が求められることを踏まえ「食品の官能評価・鑑別」をテーマに開かれた。
 「官能検査の基本事項」と題して講演した、山口静子・東京農業大学応用生物科学部教授は、本物の食とは、生きる歓びを与え、生命を燃え立たせ、心身を健康に育てるものだと述べ、官能検査は食を感覚によって評価することを目的とするものだと定義づけた。従来の官能検査は企業の商品開発のために、食品の感覚特性を平面的にとらえたものが多かったが、食の種類・形態・提供のされ方が大きく変化し、食生活が個人を超えたところで大きく支配されるこれからの時代の官能検査は、生活者の利益のために、グローバルな視点からの評価・研究を行う必要があると指摘。フードスペシャリストには、本物の食を見分け、人は何を、いかに食べるべきかをグローバルな視点から洞察でき、人を正しい食に導ける力を期待する、と述べた。
 食品総合研究所から鈴木建夫理事長が「21世紀食生活のキーワードは『快適性』」、大坪研一・穀類特性研究室長が「米の品種鑑定」についてそれぞれ講演。鈴木氏は、猪口邦子・上智大学教授の論文を引用しつつ、二十一世紀の価値の中心は快適性にあり、均衡(バランス)こそがその具現化のためのキーワードだと述べ、食品産業には消費者のニーズを見据えた少量多品種での生産が求められてくるとした。また、日本の食生活指針はこれまで省庁縦割りの一つの典型であったが、これが統一され、昨年三月、新しい食生活指針が閣議決定されたことは意義深いと評価した。同研究所では、こうした食をめぐる環境の変化も踏まえ、現在、未利用資源の確保、食品の安全性向上、機能性食品の開発の三本柱で研究活動に取り組んでいるとした。大坪氏は同氏らのグループで行っている米の品種のDNA判別法について紹介。米のゲノム遺伝子のわずかな構造上の相違をRFLP(制限酵素断片多型)やPCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)によって識別し、DNAの塩基配列という多数の情報から品種識別しているのが特徴だと述べた。

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