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記事2001年8月3日 20号 (2面) 
中教審教育制度分科会
教養教育の在り方
山崎、山本両氏が意見発表
 中央教育審議会の教育制度分科会は七月二十五日、東京・竹橋のKKRホテル東京で第六回会合を開いた。この日は新しい時代における教養教育の在り方について、山崎正和・東亜大学長と山本恒夫・大学評価・学位授与機構教授がそれぞれ意見発表を行った。
 山崎氏は「知を軸にした人格形成」が教養であると定義づけたうえで、近代に入ってこの教養の根源が揺らぎ始めた、あらゆる学問分野を基礎づける教養が無効になってしまったと指摘。日本の大学では人文・社会・自然科学のごく基礎的なものを教養課程として並べてみたものの、これでは学生の勉学意欲をかき立てることはできず、教養部解体の大きな導因となった、とした。現代では教養を支えるべき社会的条件は備わっていないうえに情報化の波が押し寄せているが、情報は断片的な知の集積にすぎないとし、知識、教養の体系性を守ることが必要だとの認識を示した。教養教育を再生させるための方策として山崎氏は、大学生に専門とはまったく異なる副専攻を履修させることと、教養教育の場、方法論を学校の外に出す、教養教育の〈社会化〉が必要だと強調した。
 一方、山本氏は日本では成人の職業教育・訓練とリベラルな教育・学習の統合は図られていない、との現状認識に立ち、生涯にわたり教養を培うための三つの方策を提言。(1)大学・大学院の職業訓練講座にリベラル的色彩を付加する(2)高齢者が社会で活動できるような社会的機能領域の学習を活発にして、教養的な学習とのバランスを取る(3)生涯についての考え方を、自立して何かができる「成熟」段階から、自己の能力を十分発揮できる「完成」段階を目指すものととらえ直すことを検討すべきだと問題提起した。

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