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記事2001年8月13日 21号 (10面) 
企業トップインタビュー
みずほフィナンシャルグループ株式会社日本興業銀行取締役会長藤澤義之氏
情報集め“枠から飛び出せ”
常に謙虚さや柔軟性もって


 経済同友会では現在、企業の経営者が中学や高校へ出向いて講演を行う「出張授業」を行っている。いわば産学交流を大学だけに限らず、中学・高校にまで広げようという趣旨だ。藤澤義之会長も講演を行うメンバーの一人だ。藤澤会長が講演したのは本所中学校(墨田区)で、テーマは「創造性」だった。
 「これからみんなが生きる時間は長いのだから、一番大事なことは創造性だ。創造性を身につけるためには、どうしたらいいかという話をしました。楽しく講演をさせてもらいましたが、その中で『“枠から飛び出せ”という話が特に面白かった』という感想を頂きました」
 藤澤会長は大学一年の時、ある大学の創造性の開発講座に参加していた。講座に二回参加したことがきっかけで、大学のカリキュラムを作る手伝いもした。藤澤会長自身も創造性を高めるために、ブレーン・ストーミング(創造的集団思考法)などの方法を広める講習会を開いたり、合宿を行ったりした。ブレーン・ストーミングには四つの基本原則があるという。
 「まず、できるだけたくさんアイデアを出すこと。生徒たちには『そのためには情報を集めないと駄目だよ』と話しました。次にとんでもないことを考え、話すこと。これが“枠から飛び出せ”ということです。三番目に他人の意見を批判せずに相乗りして、かつ付加価値を付けること。最後に粘り強く継続すること。しかし、一番大事なのは、好奇心、問題意識を持つことです。問題意識を持つと、必ずどこかで創造性に結びつくからです」
 では、創造性を身につける教育を行っているだろうか。藤澤会長の見方は厳しい。
 「子供はどうあるべきか、荒れる子供がどうしているのかに関心はあります。しかし、むしろ子供を取り巻く家庭、学校、そして教育委員会、文部科学省など、子供を受け入れる側が変わっていないところが問題です。社会が変わってきているのだから、教育界も“枠から飛び出せ”と言いたい」と、教育界自体のあり方に問題を提起する。 
 海外に六年間勤務した経験を持つ藤澤会長は、特に英語教育の重要性を指摘する一方で、それは英語教育の問題というよりも、最後は日本語教育の問題だと考える。
 「一つは、日本語で考えられないことは英語でも話すことはできないということです。つまり、英語で何を話すかを日本語で考えられるかということです。そのためには英語に慣れることと、日本語をおろそかにしないことが重要です」
 さらに、「(ある内容を説明するのに)相手だったらどう考え、どう説明するのか、を考える必要があります」と、相手に分かる表現の仕方の大切さを説く。
 企業が望む人材像についてはどう考えるか。
 「フレッシュマンについては、企業がこういう人物がほしいと決めてかかるには無理があります。オーラの出ているような、つまり素質がある人とか持ち味のある人を見つけ出し、育てていくのが企業の責任だと思います。パーフェクトの人間はいないのですから、フレッシュマンは自分の持ち味を語れることが必要です」。企業の中で実際、必要とされる人物としては、「物事に処して逃げない人、チャレンジ精神のある人」を挙げる。
 「(知識や経験などを)放出する立場になって、初めて吸収することが足りないことに気付く」と語る藤澤会長は、謙虚さや柔軟性を重視する。
 藤澤会長が心に残っている言葉は、禅でいう「随処に主と作れば、立処皆真なり」。この「主と作れば」とは、「謙虚な気持ちを持って自分だったらどうするかと、主体的に考えること」と説明する。

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