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記事2001年8月13日 21号 (5面) 
立教大ではメディアセンター
学習院大では計算機センターを設置
 IT(情報技術)の発展とともに、教育界にもIT革命の波が押し寄せている。中でも大学での学術論文、歴史的文献や学生に関する情報のデジタル化が進んでいる。そこで、立教大学の家城和夫教授、学習院大学の入澤寿美教授にそれぞれの大学でのIT教育、学内情報のデジタル化についての取り組みとその必要性についてお話しいただいた。

出席者(敬称略・順不同)
 家城 和夫 (立教大学教授・メディアセンター長) 
 入澤 寿美 (学習院大学教授・計算機センター所長)
 北田 征二 (株式会社新進商会代表取締役社長)
 丸山 明弘 (株式会社新進商会デジタルソリューション事業部営業技術係長)



 丸山 本日は、学内情報のデジタル化の必要性と現状に関しましてお話をうかがいたいと思います。はじめに、自己紹介を兼ねまして私ども新進商会での事業内容を簡単に紹介させていただきます。私どもは、生産・流通・販売・ITの分野等、様々なフェーズにおけるトータルアウトソーシングサービスの提供を目指す企業で、現在五つの事業を展開しております。(1)ソフトウエア事業では、各社ソフトメーカー、PCメーカーのパッケージ・ソフトウエアやPC添付ソフトウエアの製造を部材調達からマニュアル印刷、アセンブリ、レプリケーション、パッケージングまでをトータルサポートしております。また、製造に当たりマイクロソフト社のOSを複製する権利であるAR権を国内・アジア地域で取得しており、国内PCベンダーの販売されるPC添付OS(同社OS)のほとんどは弊社で製造販売しております。(2)ハードウエア事業では、PC関連機器の製造から初期再生までをメーカー製造のアウトソーシングとして展開しております。(3)フルフィルメント事業では、総合流通サービスを展開しております。(4)デジタルソリューション事業(本日のメインテーマでのサービス事業)では、各学校機関や企業内のアナログ情報を、用途、目的に合わせてデジタル化し、その運用を含めたデジタル化トータルサービスを提供しております。(5)インターネット事業では、プロバイダーからホスティング、インターネット上でのカード決済であるBittradeの仕組み等を提供しております。これらのアウトソーシング事業が各学校機関の進めるIT化でお役にたてればと思っております。それでは、先生方からご所属のセンターについてお話し願えますでしょうか。
 家城 立教大学メディアセンターは昨年発足したばかりの新しい組織です。それまでは大型計算機を導入した三十年ほど前からコンピュータセンターという形で運用してきましたが、この十年ほどで環境が大きく変わりました。私自身は物理学を専攻しており、従来はユーザーとして大型計算機を使用していましたが、ここ数年でダウンサイジングとなり、ほとんどがユニックスを使うようになりました。いまのメディアセンターになる前に新しい建物にパソコンを二百台弱入れ、分室という形で運用していましたが、時代に合わなくなってきていました。大型計算機のユーザーはどんどん減っており、教員の利用も数えるほどになってきました。教室環境も大きく変わり、建物ごとに運用していたものがこれでは不都合があるということで統合した形でメディアセンターが発足したのです。昨年四月には新しい教室棟として八号館が完成しました。ここにはパソコンが三百五十台あり、パソコン教室が五部屋、そのほかにマルチメディア教室、LL教室、一般教室などを集めた建物です。これらをはじめとする全教室のAV・情報環境をメディアセンターが一括して運用しています。
 入澤 私も物理学の専攻ですが、計算機センターができた当初に助手として入ってきました。コンピュータのスーパーエンドユーザーということで、一時期を除いて二十数年間、計算機センターのシステム設計からすべてにかかわっています。現在も情報システムに関しては、学内だけでなく事務を除いた法人全体からの相談を受けています。二年前、補正の補助金を利用して、本学でも昭和初期の古い建物の三十から四十部屋くらいにネットワークとマルチメディア機器を導入して改装したのですが、その設計も行いました。現在は新しい建物を建てていますが、ここでも情報系について担当しています。

Vキャンパス構築立教大学
電子化は教員の教育から学習院大学

 北田 家城先生、立教学院は高校もお持ちですが、そちらの情報化も担当しておられるのですか。
 家城 立教大学は池袋キャンパス内に立教小学校、立教池袋中高があります。大学にインターネットを導入した時には、小中高の先生方にもアドレスをお渡ししましたし、中高の校舎が新しくでき、ここのネットワークも新しいものを導入するということで、いろいろな相談に乗っています。埼玉の新座キャンパスには学部が二つ、立教新座中高があり、こちらからも相談には応じています。
 北田 各大学ではさまざまな方向からIT化に取り組まれていると思いますが、今後どのような形で展開していかれるかおうかがいできますか。また、大学間で連携して取り組んでおられる事例もありましたら、お話しください。
 家城 教育研究環境ということでいえば、バーチャルユニバーシティーの取り組みが挙げられます。三年前に「Vキャンパス」を構築しました。これはイントラネットでバーチャルな大学をつくろうということで、ネット上でいろいろな情報のやり取りができるようにするものです。掲示板など、外部から守られた環境で大学内の情報にアクセスできるシステムとなっています。当初考えていたよりも世の中のスピードが速く、既に入学前にプロバイダー契約している学生もいるなど、自宅学習にも使う環境を保つためにはさらに改善が必要となっている状況です。イントラネットのコンテンツは、当初休講情報くらいしかなく寂しかったのですが、今年から千コマの授業の情報を載せるプロジェクトをスタートさせました。シラバスや履修登録など事務関係のデータとのリンクも図っています。大学間の連携は重要な課題です。「Vキャンパス」を始めて、これをどう発展させていくか一年ほど侃侃諤諤議論しました。すべての先生の情報が載せられるようになってこそユーザーとしての学生にとって満足のいくものとなるわけですが、実際は自分でウェブページをつくることのできる教員の情報しか載せられないというギャップがある。このギャップをどうしようかと議論したわけです。他大学も事情が同じところはあるでしょう。私立大学情報教育協会が大学間のコンソーシアムをつくろうという、CCC(サイバー・キャンパス・コンソーシアム)構想を進めていますが、これにも参加しわれわれが提供できるものは提供していきたいと考えています。
 北田 先生と学生との間で双方向のやり取りは行われていますか。
 家城 掲示板システムやメーリングリストがその役割を果たしています。イントラの中でクローズすることもあるし、一定のメンバーの中に限ることもできますので、あるゼミの中で限定された掲示板で相互に書き込みするということが行われています。
 入澤 学習院では、セキュリティーを考えるとCGIサービスを公式には行っていません。そうなると、双方向のサービスを行うためにはアウトソーシングして責任を外に持っていかなければなりません。内部でやるとなるとリスクは大きいわけです。いろいろな教材の電子化をするに当たって教員のスキルアップを図る必要があります。学生はメールアカウントを持っており、教員と直接やり取りしています。あるコンテンツをつくるとなると、どれくらいの負担になるのか教員は知りません。しかし、丸投げして本当に自分の考えていたような教材ができるかというと、そうでもなさそうな気がします。その辺りが難しいところです。

古文書や学術論文などの公開
デジタル化が主流へ

 北田 先生方のIT教育が必要となっているわけですね。
 入澤 学生はコンピュータを普通の道具として使いこなしていますが、教員の方はまだ特別なものを使っているという意識です。十年もすれば、変わってくるとは思うのですが。
 北田 社会に出れば、パソコン、インターネットはどうしても必要なツールとなっています。アメリカの大学では、有償でいろいろな情報を提供しているサイトもありますが、学術論文など大学が持っている情報を外部に発信していくことは考えておられますか。
 入澤 私どもの大学では明治期以前の古文書や絵画などを所有していますが、そういうものを公開すれば、研究成果についても公開するということになります。ただ研究対象になっているものとそうでないものとがあって、単純に公開するというわけにはいかない場合もあります。公開して皆さんに見ていただくと劣化しますので、ある時期にデジタル化する必要は認識しており、徐々に始めつつあるところです。
 家城 古い校舎を壊しますと、そこに所蔵していたものをどうするかという問題があります。デジタル・アーカイブにするというのが一つのやり方で方向性として考えていますが、まだまだそこまで踏み込めません。いずれやらなければなりませんが。学術論文に関してはいままで図書館で見ていたようなものがほとんどウェブ上で見ることができるというスタイルが主流になってきています。文系の教員でも紀要や学会誌をウェブ上に載せることに取り組んでいます。情報を得るという意味では非常にやりやすくなっています。
 北田 デジタル化されるものは歴史的価値があり、研究材料でもあるものですが、デジタル化に当たってアウトソーシングについてはどうお考えですか。
 入澤 デジタル化する装置を何台も持っていてもあまりにも高価すぎ、意味がありません。これはアウトソーシングということにならざるを得ません。
 丸山 学校内の業務的な側面での情報化については進んでいるのでしょうか。
 家城 シラバスや時間割の電子化は既に行っています。学内の教室、会議室の予約をウェブ上で行うということも始めています。私どもは入試、教務、財務それぞれ大型計算機を使った大きなシステムを使って業務を行ってきたのですが、ここ何年か議論を重ねて、この先このスタイルを続けていくことは時流に合わなくなっているということで、四年後をメドに大きく変えようと検討しているところです。
 入澤 学習院では事務系は事務計算機室が統括しており、汎用機を一部併用していますが、レンタル期間が切れるということで、次世代への移行作業に動き出しています。それとともに学生へのサービス、教員へのサービス、事務の効率化をどう図るかということで、いま徐々に検討しています。当然シラバスの電子化などは行っていますが、問題は昔の卒業生の成績をどうデジタル化するのかですね。
 北田 われわれ企業人の立場からはITを身につけた卒業生を迎え入れたいわけですが、IT教育についての現状はいかがですか。
 入澤 ワープロや表計算、統計処理、ウェブ検索、メールの送受信などはできるようにし、情報倫理教育も行っています。必修ではありませんが、九九%の学生が受講しています。受け入れる以上、大学側にも学生にITを身につけさせる責任はあります。高校での情報教育が進んできたこともあって、ここ二、三年は教育しやすい環境になってきました。

学内情報の発信も視野に
公式ホームページは教員が責任

 北田 大学には教材も含めてコンテンツを持っているという強みがありますが、それを学外に発信する必要があると思いますが。
 家城 学生が満足できるコンテンツを充実させるのが第一で、その先にそれを社会に還元する問題が出てきます。現段階ではまだ学生への対応を優先させています。「Vキャンパス」をつくった後で、NTTと協力してiモードで利用できるコンテンツもつくったのですが、それを発展させる形で大学の中におけるいろいろなコンテンツを外部に出していこうということは計画しています。まずは文字情報が中心になると思いますが、社会人の入学者が増えていることもあって、そうした方への対応という意味でも、力を入れていくことになると思います。
 入澤 ホームページをいかに見て役に立つものにするかということに取り組んでいるほか、学習院大学だからこそ外部に見てもらえるコンテンツがあるわけで、それをいかに公開できるかがやはり課題です。
 北田 先生方が作られたレポートなどは学内であればオープンにしていいとのスタンスなのでしょうか。
 家城 そこは議論が残るところです。一つの考え方は、授業のために準備されたものは著作権は大学に帰属すると解釈し、オープンにしていいというものです。研究との関係もあって、著作権がどこに所属するかについては、あいまいなところがあります。
 入澤 学習院は個人の自由です。学内で共通に公開するという最低限のレベルはつくってあって、それ以上は個人の意思によります。というのは専門分野によっていろいろな考え方があって、統一して決めることができないのです。
 家城 本学ではインターネットとイントラネットが並立していますので、教員によって、イントラネットだけで公開するとか、インターネットだけでパスワードを付けるとか、いろいろな形で対応しています。例えば臨床心理学の症例などでは個人のプライバシーに触れ、外部に公開すると問題となるようなケースもあり、個別に対応するしかないという面はあります。
 入澤 大学の公式ホームページは教員が責任をもってつくる体制です。
 家城 学生が立ち上げているホームページには時々不適切な表現があり、気が付けば対応していますが、それを完全に管理することはできません。むしろ情報倫理教育を徹底させることの方が重要です。

古文書や学術論文などの公開
デジタル化が主流へ

 北田 先生方のIT教育が必要となっているわけですね。
 入澤 学生はコンピュータを普通の道具として使いこなしていますが、教員の方はまだ特別なものを使っているという意識です。十年もすれば、変わってくるとは思うのですが。
 北田 社会に出れば、パソコン、インターネットはどうしても必要なツールとなっています。アメリカの大学では、有償でいろいろな情報を提供しているサイトもありますが、学術論文など大学が持っている情報を外部に発信していくことは考えておられますか。
 入澤 私どもの大学では明治期以前の古文書や絵画などを所有していますが、そういうものを公開すれば、研究成果についても公開するということになります。ただ研究対象になっているものとそうでないものとがあって、単純に公開するというわけにはいかない場合もあります。公開して皆さんに見ていただくと劣化しますので、ある時期にデジタル化する必要は認識しており、徐々に始めつつあるところです。
 家城 古い校舎を壊しますと、そこに所蔵していたものをどうするかという問題があります。デジタル・アーカイブにするというのが一つのやり方で方向性として考えていますが、まだまだそこまで踏み込めません。いずれやらなければなりませんが。学術論文に関してはいままで図書館で見ていたようなものがほとんどウェブ上で見ることができるというスタイルが主流になってきています。文系の教員でも紀要や学会誌をウェブ上に載せることに取り組んでいます。情報を得るという意味では非常にやりやすくなっています。
 北田 デジタル化されるものは歴史的価値があり、研究材料でもあるものですが、デジタル化に当たってアウトソーシングについてはどうお考えですか。
 入澤 デジタル化する装置を何台も持っていてもあまりにも高価すぎ、意味がありません。これはアウトソーシングということにならざるを得ません。
 丸山 学校内の業務的な側面での情報化については進んでいるのでしょうか。
 家城 シラバスや時間割の電子化は既に行っています。学内の教室、会議室の予約をウェブ上で行うということも始めています。私どもは入試、教務、財務それぞれ大型計算機を使った大きなシステムを使って業務を行ってきたのですが、ここ何年か議論を重ねて、この先このスタイルを続けていくことは時流に合わなくなっているということで、四年後をメドに大きく変えようと検討しているところです。
 入澤 学習院では事務系は事務計算機室が統括しており、汎用機を一部併用していますが、レンタル期間が切れるということで、次世代への移行作業に動き出しています。それとともに学生へのサービス、教員へのサービス、事務の効率化をどう図るかということで、いま徐々に検討しています。当然シラバスの電子化などは行っていますが、問題は昔の卒業生の成績をどうデジタル化するのかですね。
 北田 われわれ企業人の立場からはITを身につけた卒業生を迎え入れたいわけですが、IT教育についての現状はいかがですか。
 入澤 ワープロや表計算、統計処理、ウェブ検索、メールの送受信などはできるようにし、情報倫理教育も行っています。必修ではありませんが、九九%の学生が受講しています。受け入れる以上、大学側にも学生にITを身につけさせる責任はあります。高校での情報教育が進んできたこともあって、ここ二、三年は教育しやすい環境になってきました。

コンテンツ充実が焦点
企業へのアウトソーシングも

 北田 学内のIT化を推進するのに中核となる組織はあるのでしょうか。
 家城 本学では十年ほど前に全学で情報企画委員会をつくり、全学的な情報化の企画を行っています。その下に小委員会があり、予算要求はそこから発案するという形になっています。いままでは主にハードウエア、施設設備関連の充実を図る方向でやってきましたが、こちらは一段落して、これからは授業のデジタル化支援などのコンテンツ関係が中心です。
 センターは実施、運営をサポートするのがメーンですので、予算が決まったものを執行するのが役割です。
 「Vキャンパス」も情報企画委員会の中で責任者を決めて推進し、センターはそれをサポートするという形で進んできました。
 むしろ大きな国立大学などの場合では大きな計算機センターがあって、そこが先導するという形ではないでしょうか。
 入澤 センターは最終的にネットワークを止める権限を持っていることが大きいのですが、何か問題が起きるとそれへの対応がたいへんです。
 丸山 ネットワーク・セキュリティーへの対応はどうなっていますか。
 入澤 成績や予算の関係を取り扱うので事務だけは暗号化して通信するシステムにしています。教育研究についてはわれわれ教員がモニタリングしています。助手三人、教員を支援する助手が三人、副手(事務担当)三人、教員二人といった体制です。
 北田 先生方にはかなり負担となるお仕事だと思うのですが、運用面を含めたアウトソーシングはお考えでしょうか。
 入澤 ネットワーク周りについては外注が可能です。システムの設計についてはまだわれわれでできるかなという感じです。
 家城 本学はウェブサーバーとメールサーバーなどについてはアウトソーシングしています。理学部を除くほかの学部はファイアーウオールの中にネットワークを置くようにしています。成績の問題もあり、事務系ネットワークと教育研究系ネットワークは分けています。

大学間の連携が始動へ

 北田 そうした中で、大学におけるIT化に向けてわれわれアウトソーシング企業にこういう協力をしてほしいといった要望はありますでしょうか。企業間では運用をITを介し外注化する、アプリケーションサービスプロバイダーなどのサービスが始まっていますが、基本的にはそういうサービスを提供できるのではないかと考えています。例えば、大学同士で同じ分野の学部がインターネットを介して情報交換するといった場合にも、われわれアウトソーシング企業が協力できると思うのですが。
 家城 大学間連携ということでいえば、私情協で先に申し上げたCCCという構想が出ており、その中で業者の方への協力の要望は出てきています。
 入澤 学習院では成蹊、成城、武蔵の各大学との間で会合を開いていますが、まだ大学間連携の試みは始まったばかりです。
 丸山 今後そうした動きもますます活発になってくることでしょう。そうした中で、企業のニーズから生まれてきたさまざまな情報技術を大学でも積極的に活用していただくべく、今後、当社では各学校機関にご提案していきたいと考えています。
 本日はどうもありがとうございました。


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