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記事2001年8月13日 21号 (3面) 
学力育て意欲向上策聴取
白川名誉教授ノーベル賞受賞者ら意見発表
 中央教育審議会初等中等教育分科会の教育課程部会(部会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は七月二十四日、東京・千代田区内のホテルで二回目の会合を開き、学生生徒等の学力育成や学習意欲向上策について三人の学者や教育実践家から改善策などを聴取し、質疑を行った。
 この日意見発表したのは、ノーベル賞受賞者の白川英樹・筑波大学名誉教授(内閣府総合技術会議議員)、大学生の学力低下問題に警鐘を鳴らし続けている上野健爾・京都大学理学研究科教授、民間からの教育改革推進を目的に民間教育者の有志で設立した特定非営利活動法人(NPO)教育支援協会の吉田博彦・代表理事の三人。
 この中で白川名誉教授は「頭の良い子は反応の良い子というのが一般的。じっくり考え、良い考えをすることが考慮されていない」などとして少人数クラス編成(理想は二十人、妥協して二十五人)の必要性を強調した。
 また勉強のできない子が社会の落伍者と見られる点の改善を求めた。さらに発想力、創造力の育て方に関する質問に対しては、「学級の規律のために子供達から発言の機会を奪っている。あえて問題ある教え方をして生徒達に問題を指摘させてもいい。アメリカでは積極的に自分の意見を言わせる」と答えた。
 上野教授は、京都大学の学生を例に取り、「学力低下がすさまじい。学びの質も、目の前のものは処理するが、物事に疑問を感じなくなるなど質が変わってきている。能力が下がっているわけではない。興味、関心、意欲の落ち込みが著しい。解らないことを考え続けていくことができない。しかも基本的体験に欠け、体力も落ちている」などと最近の京大生の状況を報告した。そのうえで改善策としては、学習できる環境を整えること、具体的には専任の司書を学校図書館に常駐させ子供たちの意欲を助ける、先生の実力を高める(今は専門の勉強が少なすぎる)、学習指導要領を即時改訂しレベルアップを図る、教科書に進んだ内容などを盛り込むことを求めた。また大学入試におけるマークシート方式の弊害も訴えた。
 吉田代表理事は、教育支援協会は、地域のおける総合的な学習を実践するため地域での学習活動や体験学習のプログラム作りを全国各地の教育委員会と協力して行っていること、学力問題に関する研究を進め、新しい学力観に基づくテストの研究を実践しているNPOだと説明。
 そのうえで、「これまでの学力テストが選別、序列付けのための評価に偏りすぎていた。そうではなく指導者の参考にすること」を訴え、現在の学校教育自体がテスト対応型の教育になっている点を指摘、知識の修得は大事で、ペーパーテストは残し、評価する側が「育成のための評価」との視点を明確に持つことで生徒の関心、意欲を喚起できる点を強調した。
 教育課程部会は今後、(1)新しい学習指導要領と児童生徒の現状(児童生徒の学力の現状、発展的指導、補充的指導など個に応じた指導、「総合的な学習の時間」)(2)児童生徒の学習状況の評価(評価規準等の研究開発、各学校において評価に取り組む際の留意点等、全国的かつ総合的な学力調査)の検討を進めていく予定。

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