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記事2001年7月23日 19号 (1面) 
中教審 教育等9団体から意見聴取
【教員養成部会】

教員免許の総合化
専門性低下を懸念する意見も

 中央教育審議会初等中等教育分科会の教員養成部会(部会長=高倉翔・明海大学長)は、七月十六日、都内のホテルで第五回会合を開き、九つの教育、経済団体から、諮問事項となっている(1)教員免許制度の総合化・弾力化(2)教員免許更新制の可能性の検討(3)特別免許状の活用をはじめとする社会人活用の促進に関して意見を聴取した。
 このうち教員免許の総合化・弾力化に関して、全国連合小学校長会は、「各学校段階間の連携強化は当然、隣接する学校種で教授できる資質能力を教員が身に付けることは好ましい姿」としながらも、「総合化・弾力化導入で教員の持つ専門性が現在よりも乏しくなるとしたら大問題」と指摘。全国市町村教育委員会連合会は、「推進してほしいという意見が都道府県の大半」としたうえで、先ずは現行制度の中で学校間の人事交流を積極的に進め、今後の可能性を探ることが大切。教科の専門に何単位か受講させることにより、各校種間での交流や異動が可能になることもあると思われる」との意見を報告した。
 全日本中学校長会は「一定期間(十年程度)教職にあり、その資質能力が認められる場合は、異種学校免許を取りやすくし、交流を深める」方策を提案。全国高等学校長協会は、くくるのなら中等教育学校を視野に入れて中高でくくることが適切との考えを示した。
 日本教職員組合は、総合化・弾力化には賛成とした。しかしその前提として養成制度全体の見直しの必要性を指摘、具体的には早くから学校種に分化しないこと、隣接学校種での教育実習の実施等を提案した。ただし当面は特別免許状制度や兼務発令等を活用し、学校段階・学校種を超えた人事をやりやすくするなどの改善策が必要とした。
 全国国公立幼稚園長会と全日本私立幼稚園連合会はともに幼・小の連携の重要性を指摘、現在非常に困難となっている幼稚園教諭の小学校免許状取得を研修などを通じて可能とすることなどを望んだ。全国特殊学校長会は複数の障害種に対応する「総合免許状」の創設を要請した。
 一方、免許更新制に関しては、全国連合小学校長会が賛成の立場を表明、実施に当たっては判定機関の設置、評定期間、方法、処遇等の検討を求めた。全国市町村教育委員会連合会は積極的検討を求めたが、同時に実施に当たっては様々な課題も指摘した。
 全日本中学校長会は一定期間の異種学校での指導体験、企業や介護施設等での体験実習のほか十年ごとに必要な研修を義務づけ、免許の更新を行うよう求めた。全国高等学校長協会は現実面で更新制導入にはかなりの困難が伴うことなどを指摘、日本教職員組合は免許更新制の意義は見いだせないとの考えを明らかにし、現在の制度の改善で教員の力量の向上等に十分対応できるとした。
 社会人の活用に関しては反対する意見はなかったが、特別免許状の交付、処遇面の改善など課題を指摘する意見は少なくなかった。

【大学分科会】

大学院の在り方など討議
専門委員も発令、陣容決まる

 中央教育審議会の大学分科会は七月十六日、東京・虎ノ門の霞が関東京会館で第三回会合を開いた。前回の会合で分科会の下に将来構想部会、制度部会、大学院部会、法科大学院部会の四つの部会を設けることになったが、この日は各部会の検討事項を踏まえ、今後の高等教育の推進方策について自由討議を行った。各部会への委員、臨時委員、専門委員の所属も決まり、専門委員は同日付で発令となった。
 この四つの部会および大学分科会と科学技術・学術審議会学術分科会との間で「大学改革連絡会」を設け、それぞれの検討事項について審議するとともに、その状況を大学分科会の全体会合にフィードバックするという形で今後の議論を進めていくこととなった。各部会の具体的検討事項例としては、将来構想部会では大学の設置基準・設置認可の望ましい在り方、平成十七年度以降における高等教育の全体規模の在り方など、制度部会では短期大学および高等専門学校の位置づけ、パートタイム学生の受け入れの在り方、学部と大学院の役割と学部の修業年限の在り方などが挙げられている。大学院部会では大学院における高等専門職業人の在り方、専門職学位、一年制の専門大学院、通信制博士課程などを、法科大学院部会ではその教育内容、教育方法、設置基準、第三者評価の在り方などを話し合っていく。

質の担保と第三者評価

 これら検討事項をめぐって委員から活発に議論が行われたが、特に大学院については、石弘之、中嶋嶺雄の両委員からこれまでの大学院重点化政策の影響で「実態はすさまじく質の低下を招いている」「空洞化している」との指摘があった。また寺島実郎委員は「効率性を追求してMBA取得をねらいとした大学院とロースクールを育てることがこの国の基軸なのか。欠けているものは総合戦略であり、問題解決型アプローチのできる専門家を育てていく視点が必要だ。また、徹底して地域に特化した大学院があってもいいのではないか」と問題提起した。法科大学院については、佐藤幸治委員が二〇〇四年にできるだけ質の高いロースクールを立ち上げたいとしつつ、質の担保と第三者評価を課題として挙げた。
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