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記事2001年7月13日 18号 (10面) 
ユニーク教育 (96) ―― 淑徳中学・高等学校
アントレプレナー塾
遅れるな、有為な人間
創業経営者から起業家精神学ぶ


 六月十四日、東京・板橋の淑徳中学・高校(杉田峰雄校長)で「高校生アントレプレナー塾」(株式会社ニュービジネス協議会主催=志太勤会長)が開催された。高校生を対象としたこの塾では、若者に“起業の志”を持ってもらい、これが自己実現への原動力となる心を育成するために役立つという思いで、出前特別授業を行っている。
 「進みゆく世におくれるな、有為な人間になれ」という同校の建学の理念は「時代に乗り遅れず、それぞれが能力を発揮し、役立つ人間として生きてほしい」というメッセージとなって、今も脈々と生きている。この建学の理念は「志を持って、自分で考え、自分で決められるプログラム(塾)」(杉田校長)によって、一層生徒たちの心に確認されることになった。
 当日は高校二年生と三年生、約四百人が集まり、同協議会の志太勤・シダックス株式会社会長兼CEO(最高経営責任者)ほか、創業経営者七人の講師から起業家精神を学び取った。
 塾は「自分の夢は本当に実現できると信じている」「体力には自信がある」「将来は大金持ちになると本気で思っている」など、「アントレプレナー度」のチェックから始まり、「ケーススタディ」によって、企業の創業から株式公開に至るさまざまな場面での意思決定を選択肢の中から選び、それに対して講師がコメントをするという具合に進められた。生徒たちは起業のだいご味や、創業者の悩みをバーチャルで体験した。
 「ケーススタディ」での最初の質問は、「今から十年後、あなたは叔父さんの経営していた書店を引き継ぐことになった場合、そのまま書店を続けても、変更してもかまわないが、どの店にするか。(1)日本初のハンバーガーの宅配に挑戦する(2)好きなスノーボードの並行輸入をする(3)安心できるコンビニチェーンの傘下に入る(4)書店を続ける」。
 生徒たちの答えは(1)と(2)が最も多く、両方とも約四割を占めた。(1)を選んだ生徒たちに対して、志太会長は「新しいことに挑戦する気持ちは常に必要だ」と感想を語った。また(4)を選択した生徒はわずかにいたが、「インターネットを使った新しい本屋を作りたい」と理由を説明した生徒に対して、パネリストからは「新しい本屋という発想は枠にとらわれず、起業家の素質がある」との感想が返ってきた。そのほか、副社長の選び方、ライバルが出現して売り上げが落ちた場合に対する身の処し方など、さまざまな場面を設定した質問に生徒たちは思い思いの考えで答え、講師はコメントを与えていた。また質疑応答の段階では、生徒たちがビジネスや経営について、日ごろから疑問に思っていること、独立する場合の心構えなどの質問をパネリストたちにぶつけていた。中には「女性であることを意識させられたか」「どのくらい収入はあるのか」「睡眠時間は」「どうして今の仕事を選んだか」「英語は社会に出て必要か」「高校三年生の時はどのような生徒だったか」「どのような人を採用するか」「次に出てくる産業は」など多方面から寄せられた。
 志太会長は統計上からアメリカの高校生に比べ、日本の高校生は起業意識が低いことを挙げ、「これでは日本の将来は危ない。小・中学は基礎的な勉強をするとき、高校は将来何をやるか方向を決めるとき、大学では専門的な勉強が必要で、受験だけを目標にしないでほしい」と激励した。現実の社会はどうなっているのか、厳しい状況下で選択を迫られる場合などを学ぶには絶好の機会となった。



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