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記事2001年7月13日 18号 (3面) 
東京純心女子大学の学校インターンシップ制度
市教委と大学が連携
学生が小学校で英会話の授業
 東京純心女子大学(田崎清忠学長、東京都八王子市)では、今年四月から八王子市教育委員会が始めている事業「学校インターンシップ制度」を導入している。これは市教育委員会と大学が連携して小中学校の教育活動に大学生が参加するというもので、同大学では英米文化学科の児童英語教育コースの学生が小学校で児童に英会話を教えている。学生たちには自分たちが学んでいる英語力を生かしながら、小学校の教諭の指導の下に自由な発想で授業を構築、実践できるプログラムとして人気が高く、児童からも楽しみながら英語が学べると好評だ。
 八王子市教育委員会と大学との連携事業としては、これまでも学生ボランティアが市立小中学校にメンタル・サポーターとして出向く(中央大学)などの事例があり、成果を収めてきたが、昨年七月、市教委から新しい大学との連携事業として、英会話に関する「学校インターンシップ」の試行について東京純心女子大学に依頼があった。ちょうど同大学では英米文化学科に四つのコース制を今年四月から導入することを決め、児童英語教育コースを設けることになったが、二年、三年次配当の科目「児童英語教育実践」における実践の場づくりをどうするかが課題となっていた。そこで、当時の三年生で「児童英語教育」が卒論のテーマとなっている学生がいたため、その学生たちが参加する形で十月から市立第十小学校で実験的試行がスタートした。同小学校の五年生の「総合的な学習の時間」を利用しての取り組みだ。インターンシップ参加学生は事前に大学で予習を行い、小学校でも授業を行うクラス担任の教諭から指導を受けた。学生たちが担当した英会話の授業の多くは、ゲームや音楽、英語劇を通して、児童に英語の楽しさを知ってもらうことをねらいとしたもので、教材はすべて学生たちの手づくりのものだった。学生たちは児童に教えることの楽しさ、難しさを知り、素晴らしい体験だったとの声を残している。一方、児童の方も担任の教諭よりも比較的自分たちに年齢の近い学生はいわばお姉さん的な存在で、毎週、学生たちが来校するのを心待ちにし、英語を好きになった児童がたくさん出てきた。
 このように試行段階で成功を収めた「学校インターンシップ」はあくまで学生のボランティアという形での活動だったが、今年度から本格実施に入り、「児童英語教育実践」として二単位が認定されることになった。現在、四年生六人、二年生二人、二年生八人の計十六人がインターンシップに参加している。いずれも卒業後は英語の教員になりたいという夢を持っていたり、意欲の高い学生ばかりだ。昨年同様、児童からの反応もよく、学生たちも児童に英語に対する興味を持ってもらうことにやりがいを感じている様子だという。第二・第四土曜日には特に英会話に興味を持った児童に大学まで来てもらい、小学校での授業よりもう少し進んだ内容の授業を受けてもらうという取り組みも今年度から始まった。この日は児童の保護者も受け入れている。学生の指導に当たっている吉澤良保教授は、この「学校インターンシップ」には五つのメリットがあると指摘する。(1)刺激的な授業を求めている児童の期待に応えられる(2)児童に英語を教えることで、学生自身が受講している講義の意味付けができる(3)教諭の授業内容・方法の改善につながる(4)大学における教育の活性化につながる(5)教委が資金を掛けずに市立小学校の教育の充実が図れるというものだ。

海外の小学校へ派遣も検討

 いまのところ大学、小学校、市教委の三者がそれぞれの立場でこの五つのメリットを受け、「学校インターンシップ」は確実な成果を挙げている。しかし、学生が実際に小学校の教壇に立つということで現場の教諭との軋轢はないのだろうか。この点に関して、吉澤教授は次のように話している。
 「総合的な学習の時間における英会話の授業という、小学校の先生にとってもこれまで指導経験のないプログラムだけに、先生も自分の娘のような年齢の学生と対等の立場で学習指導案づくりにかかわってくださっています。学生が授業を行った後に、小学校の先生、学生、そして両者のコーディネート役としての私ども教職員の三者で授業の振り返りを行うのですが、ここでも先生は学生と同じ土俵に立って話し合いをしてくださっています」
 「総合的な学習の時間」は教諭の発想と指導力が問われることになるが、インターンシップ学生を受け入れている現場の教諭は、学生の新鮮なアイデアを積極的に採り入れることによって、児童に魅力ある授業をつくっていこうとしているようだ。
 スタート二年目を迎え、軌道に乗ってきた「学校インターンシップ」だが、将来的には海外の小学校への学生の派遣も検討中だという。今後の展開が注目されるところだ



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