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記事2001年7月13日 18号 (3面) 
高度専門職業人の養成目指す大学院
量的拡充、新たな形態の大学院整備 大学院改革の進捗情報
積極的に社会人の受け入れ
昼夜開講制、夜間、通信制など
 従来は研究者養成がその目的であった大学院のイメージが大きく変わりつつある。高度専門職業人の養成を目指した大学院の新設が相次いでおり、社会人にも積極的に門戸を開き、その受け入れを進めている。最近の大学院改革の進捗状況をまとめてみた。

 文部科学省は社会や経済の変化に対応した高度で多様な大学院の整備を進めてきており、平成三年には九万八千六百五十人だった大学院学生数が同十二年には二十万五千三百十一人へと倍増した。
 量的な拡充の一方、博士課程の目的の弾力化、学位制度の見直し、高度専門職業人養成に特化した専門大学院制度の導入などが相次いで行われた。平成元年、文部省令で大学の研究者以外の高度な専門的能力を持った人材の養成を博士課程の目的とすることが規定された。平成三年には学位規則上限定的に定められていた博士、修士の学位の種類を廃止し、各大学院で適切な専攻分野の名称を付記して授与することが省令で規定された。平成十一年には省令により専門大学院制度が創設された。これを受けて、十二年度には一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営・金融専攻、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻が、十三年度には九州大学大学院医学系教育部医療経営・管理学専攻、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科国際マネジメント専攻がそれぞれ専門大学院として開設された。
 独立大学院、連携大学院、連合大学院など新たな形態の大学院の整備も図られている。学部を置かず、大学院のみを置く大学である独立大学院大学は十三年度で、国公私合わせ八校。国や民間研究所の施設・整備や人的資源を活用した連携大学院は十二年度で六十七校あるが、このうち私立は二十校を占めている。連合大学院は複数大学の関連学部を実質的な基礎として、それら大学の大学院修士課程の連携による博士後期課程のみの独立研究科。十三年度で九校だが、いずれも国立だ。
 時代の変化に対応して、情報など先端分野の研究科・専攻の整備も進んでいる。情報関係専攻の修士課程の数は昭和六十三年には二百四十専攻だったものが平成十二年には四百五十七専攻に、同じく博士課程は昭和六十三年に百二十七専攻だったものが十二年には三百九専攻へと増えた。
 昼夜開講制、夜間大学院、通信制大学院など、社会人や他大学出身者の大学院への積極的な受け入れも着実に進んでいる。昼夜開講制を採る大学院は平成八年度には百二十八校だったものが十二年度には百九十六校となった。夜間大学院は十二年度で二十校。修士課程については平成元年に、博士課程は五年、それぞれ省令で夜間大学院を設置できることとされたが、今国会で学校教育法の一部改正案が成立したことにより、大学は夜間に授業を行う研究科を置くことができると明確化された。通信制大学院は十三年度で私立大学八校が設置している。こちらも学校教育法の一部改正案の成立で、大学は通信による教育を行う研究科を置くことができると明確化された。社会人特別選抜を実施している大学院も増えており、七年度は百七十八校、四千八百八十九人だったが十二年度は三百五校、九千四百六人になった。

入学資格弾力化、飛び入学も

 制度改正により、大学院入学資格の弾力化も図られている。平成元年の省令で成績優秀者については学部三年から大学院に進学することが認められたが、これを大幅に拡大するため、これも今国会での学校教育法の一部改正により、飛び入学が制度化された。三年度から十二年度までの飛び入学者の累計は千七百十人になっている。
 在学年数の特例、修業年限の弾力化については、平成十一年、主として社会人を対象とする修業年限一年以上のコースを設けること、二年を超える標準修業年限の長期在学コースを設けることがそれぞれ省令で認められた。修士課程一年制コースとしては、昨年、名古屋商科大学大学院経営情報学研究科経営情報学専攻情報技術コースと法政大学大学院工学研究科電気工学専攻ITプロフェッショナルコースが開設された。長期在学コースも昨年、淑徳大学大学院社会学研究科社会福祉専攻長期在学コース、同大学大学院社会学研究科社会学専攻長期在学コースが誕生した。

八王子の国公私大が産学公連携
地域の活性化にも期待

 東京・八王子地域にキャンパスを持つ二十二の国公私立大学・短大・高専が集まって、地元企業との連携事業を始めようと、準備を進めている。現在、これらの大学で組織する「八王子地域産学公連携体制構築準備会」が大学側のシーズと企業側のニーズについて調査を行っており、この調査結果を基に、八王子地域における産学公の連携体制の在り方について、今年十一月上旬には基本計画を作成する予定だ。この構想が実現すれば、八王子地域の産業の活性化にもつながると、地元では期待する声が高まっている。
 この準備会は、大学と教員が持っている研究成果や研究機能を地域に提供し、研究活動の循環システムを確立しようと、大学関係者らが今年四月に設立した。同準備会の会長を務める尾又暢重・東京純心女子大学事務局長によると、この連携の構想は、これまで八王子地域にある各大学は、地域の市民を対象に公開講座等を開催し、大学の研究成果を還元してきたが、さらに大学が地域に存立するために、地域の企業対象に、大学が抱えるシーズを還元したい、というねらいからスタートしたという。
 「準備会」が進める事業は(1)地域社会における産学公の連携体制の基盤にかかわる調査・研究(2)産学公の連携による共同研究、交流促進、教育研修などにかかわる試験的事業の企画・実施などだが、「準備会」にさらに「連携体制調査研究分科会」と「試験事業分科会」の二つの分科会を置き、四月以降それぞれ事業を進めている。
 「連携体制調査研究分科会」では、地域における大学側のシーズと企業側のニーズについて調査を六月に実施している。調査結果に基づいて地域における産学公の連携体制について十一月上旬までには基本計画をつくり、その結果を発表し、催しものを開催する予定である。
 一方「試験事業分科会」は、連携組織を円滑に立ち上げるため、産学公の連携する共同研究、交流促進、教育研修などを目的に、試験的事業に取り組んでいる。こちらも成果があった場合は十一月に発表する予定としている。



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